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中学時代から毎晩1時間ストレッチ。基礎の継続が一流への道
大学でのプレーを経て福岡ダイエーホークスに入団し、現役時代は最多セーブ投手のタイトルも獲得。クローザーやセットアッパーとして長く活躍した馬原さん。身体のセルフケアに目覚めた時期は実は早く、中学生のころから毎晩1時間程度のストレッチをしていたそうです。
「野球経験者である同級生のお父さんから『投げ込んだ日は肩や肘、前腕のケアをしたほうがいいよ』と聞いたのがきっかけでした。また中学の野球部は“軍隊野球”といえるような環境で、年間の休みは元旦の1日だけ。ナイター設備まであったので、朝練でも夜の遅い時間でも走り込みも投げ込みを続けていました。そんな環境でもストレッチやセルフケアをすると、翌日の身体が楽になる感覚があったので、同じことを高校、大学、そしてプロ入り後も続けていました」
馬原さんは引退後に発売した著書『理論的に強い身体をつくる 馬原式ピッチングトレーニングメソッド』でもストレッチのメニューを紹介していますが、その内容はオーソドックスなものが中心。「流行のケアや身体の動かし方などは一切取り入れず、自分に合っていると感じたケアと数種類のストレッチをずっと続けていました」と振り返ります。
「僕は『基本的なことをひたすら続ける能力』については、おそらく他の人より高かったと思います。そして周囲の選手を見ていても、基本的で地味なことを徹底してやり続けられる選手ほど、やはり超一流の選手になっていました。そのことは火の国サラマンダーズの選手にも伝えていますが、地道なことを毎日続けるのは退屈で辛いので、それを実践できる選手は少ないです。しかし、そこがプロに入れるか・入れないかの結果にも大きく反映していると感じます」
馬原さんがリカバリーケアに取り組む上でまず大切だと思うことは「己を知ること」だといいます。
「今の世の中は本当に情報が溢れかえっていて、多くの人が目新しいものに目を向けます。たとえば『大谷選手がこんなケアをしている』といった話が広まれば、それを真似する人は増えるでしょう。しかし、身体や筋力の状態が違い、ケアについての考え方が違う人が真似をしても、身になるものはありません。まず大事なのは己を知り、己の身体を知ること。そのうえで身体づくりやケアに取り組むのが大事だと思います」
なお現役時代の馬原さんには、最多セーブ投手のタイトルを獲得した翌年に右肩の痛みを覚えて以降、さまざまなケガに悩まされてきました。そのなかで身体のケアにもさまざまな方法を取り入れるようになったそうです。
「『もう人の手も借りないと100%のパフォーマンスには戻せない』と感じて、評判の整骨院や治療院に足を運ぶとか、あの手この手で対応をするようになりました。低周波治療器を使いはじめたのも肩を痛めてからですね。先輩に使っている選手がいて、勧められたものを自分で購入して就寝時によく使っていました。当時は20代後半とまだ若く、身体が効果を感じやすかったのもあると思いますが、使った翌日は肩の筋肉が柔らかくなり、肩全体が軽くなった印象がありました。『身体の感覚がぜんぜん違うな』と驚いたのを覚えています」
そのように治療機器を自分で購入している選手は多いことも含めて、「身体のケアに投資をしない一流選手は見たことがない」と馬原さんは話します。
「マッサージ、ストレッチ等のケアについても、惜しみなくお金を使う選手は多かったですね。そして歳を重ねてベテランの域に入ってくると、食生活への意識も高まる選手も増えてきて、栄養学を学んでいる選手や栄養士を付けている選手もいました」