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トレーナーの資格・理論を携えたプロ野球監督による身体ケアのメソッド(3 ⁄ 4)

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ケガを防ぎ練習効率も最大化。「練習が日本一短いチーム」の狙い

現役引退後の馬原さんは、プロ野球選手のトレーナーを務めながら、プロのトレーナーを養成する「馬原トレーナーアカデミー」も主宰。そして2021年には火の国サラマンダーズのピッチングGMに就任し、2022年からは監督兼GM補佐に。現在はトレーニングの全メニューを作成しながら、ウォーミングアップから選手を引っ張り、練習後は選手のケアを行いつつトレーナーの育成まで行っています。

「今は一人で5役6役とこなしていますが、このやり方は分業制のNPBでは無理だと思います。NPBではピッチングコーチの周囲でもトレーナーやコンディショニングコーチが常に動いてくれていますし、監督になればドーンと座って監督業に専念ができる。ただ、今の僕はそうした仕事には全くやりがいを感じません。監督の立場にありながらチームのあらゆることを決めるのは本当に大変ですが、このチームでのやりがいは本当に大きいですね」

監督であると同時に、国家資格を持つトレーナーでもある馬原さんカラーは、チームの練習に色濃く現れています。

「『それは誇れる話なのか?』と感じる方もいるかもしれませんが、火の国サラマンダーズは練習時間が日本一短く、休みも日本一多いチームだと思っています。それは僕が、監督やコーチがやらせる練習では選手は伸びないと思っているから。疲れているときに無理に練習をしても、選手はケガをしない程度に頑張るだけなので、そこで得られる技術はほとんどないんです。ただNPBの選手もそういう練習しかしていないので、そうした練習のあり方も僕は変えたいと思っている。そのため火の国サラマンダーズでは自主練の時間を多く取り、用意したメニューのなかから選手自身に何をすべきか決めてもらっています」

そしてキャンプではウォーミングアップの時間からストレッチや機能トレーニングの時間をしっかり用意。機能トレーニングだけでも30を超えるメニューは、写真等の資料を残して、選手たちが覚えられる状態にしているとのこと。またケガ防止のためのアドバイスも日頃から行っています。

「ケガというのは、それが起きる前に予兆があることがほとんどなので、まず大事なのはその予兆に気づけること。またそれをトレーナーやコーチに伝えられることも大事です。この点については、日本に根付いた根性論で『痛かったり違和感があったりしても言わない』と考えてしまう選手もいます。そうした選手には、『そうやって我慢するとケガが重くなる可能性も高くなり、回復までの時間がかかる。ケガを防止するために練習をやめることは練習をサボることではない。だから小さな違和感でも伝えてほしい』と伝えていますね。結果として、遠慮なく身体の状態を伝えて、ケアにも来てくれる選手が増えました」

そうした練習メニューやケアの取り組みの成果は、確かな結果としても現れているそうです。

「怪我人だらけだった一昨年と比較して、昨年は怪我人もほとんど出ませんでした。そしてチームとして余力も残した状態で、九州アジアリーグでの優勝と、独立リーグ日本一を達成できたことで、自分たちのやり方の正しさを実証できたと思います。また選手たちも、2~3時間という限られた時間のなかで、集中して練習することの大切さを徐々に学んでくれていると感じます」

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