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2014.05.09

vol.131 知っておきたい、頭痛と高血圧の関係

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頭痛と高血圧の密接な関係

Vol.131 知っておきたい、頭痛と高血圧の関係

毎年5月17日は、「高血圧の日」です。世界高血圧デーに合わせて、2007年から日本でも高血圧の啓発キャンペーンなどがおこなわれています(※1)。
現在、高血圧の方は患者と予備軍を合わせると約4300万人にのぼりますが、治療を受けているのは約4分の1(24%)にすぎません。その理由の1つは、高血圧になっても痛いとかつらいといった自覚症状がほとんどないため、治療を先延ばしにしたり、放置したりしている方が多いためです。
たしかに高血圧には、自覚できるような目立った症状は少ないのですが、意外な症状の1つに頭痛があります。頭痛は、肩こり や寝不足、ストレスなどでも起こるため、高血圧との関連はあまり重視されていませんが、頭痛を起こす方は少なくありません。
一般に、頭痛はなんらかの原因で脳の血管が拡張し、神経を刺激することから起こるとされています。
しかし、高血圧の場合には、少し事情が違います。かりに血圧が上昇しても、私たちの体には脳の血流を正常に維持するシステムが備わっているので、通常は脳の血流圧(灌流圧)は影響を受けず、高くなりません。それにもかかわらず頭痛が起こるのは、脳内になんらかの異常(変化)や動脈硬化などの障害が生じている可能性を示しています。
実際に、頭痛と高血圧がセットになった場合、高血圧性脳症や脳出血などの重大な病気のリスクが高いことが分かってきています。
それだけに、頭痛は高血圧のサインの1つであるだけでなく、高血圧の方の頭痛には十分な注意が必要だといえます。頭痛くらいとあなどらず、高血圧との関係をよく知っておき、予防のきっかけにしましょう。

(※1)世界高血圧デーは2005年に国際高血圧学会によって創設されたもので、2007年から日本も参画し、日本高血圧学会と日本高血圧協会により「高血圧の日」が定められました。高血圧の予防や改善に向け、生活習慣のチェックや日々の血圧測定の重要性などをアピールする啓発キャンペーンが展開されます。

高血圧性脳症に気を付けよう

私たちの脳の血流は、さまざまな調節機能によってコントロールされています。その代表的なものは、血液中の二酸化炭素を介した化学的調節機能と、脳の血管周辺にある自律神経系の作用による調節機能です。
前者は、脳の活動によって代謝が進んで二酸化炭素が増えると血管が拡張し、代謝が低下すると二酸化炭素も減少して血管が収縮することで、脳の血液循環を一定に保つ機能です。
もう1つの自律神経系による調節機能は、近年になって研究が進んでいるもので、自律神経が障害を受けると脳の血流に変化が生じることから、自律神経系が脳の血液循環に重要な役目を果たしていることが分かってきています(※2)。
ところが、なんらかの理由で、これらの調節機能の限界を超える事態が生じることがあります。
その原因の1つとして、急激な高血圧(血圧上昇)や長期間継続する高血圧が指摘されています。個人差はありますが、目安として収縮期血圧が210㎜Hg以上、あるいは拡張期血圧が120㎜Hgを超えるケースでは注意が必要とされています(※3)。
こうした悪性の高血圧の場合、代謝異常などによって脳本体(脳実質)に水分が溜まって脳浮腫(脳のむくみ)を起こすと、頭蓋内圧が上昇しやすくなります(※4)。その結果、神経が刺激され、頭痛が起こると考えられています。とくに、早朝に頭痛が起こりやすいという傾向がみられます。
脳浮腫によって頭蓋内圧が上昇した病態を、高血圧性脳症といいます。
典型的な症状は頭痛ですが、吐き気や嘔吐をともなうこともありますし、頭蓋内圧の上昇状態が続くとけいれんや意識障害、視力障害を起こすリスクも高くなることが知られています。
また、放置していると脳だけでなく、心臓や腎臓などにも致命的な影響を及ぼす可能性があるので、早く治療を受けて血圧を下げることが必要です。

(※2)脳の血管のうち、自律神経系は太い血管の血流調節を、また二酸化炭素は細い血管の血流調節を主に担っていると考えられています。

(※3)ここで示した血圧の数値はあくまでも目安です。人や年齢によって、また高血圧の程度や他の病気を併発している場合などによって、高血圧性脳症に至るケースはさまざまです。急激な血圧上昇では、収縮期血圧が250㎜Hg、あるいは拡張期血圧が150㎜Hg以上になり、短期間で発症するケースもあります。

(※4)頭蓋内圧は脳圧ともいいます。私たちの脳は堅い頭蓋骨(頭骨)に守られていますが、脳浮腫などが起こって脳が膨らんでも逃げ場がないため、頭蓋内部の圧力が高くなり、頭痛や吐き気、めまいなど、さまざまな影響を受けます。

脳出血・脳梗塞にも注意を

頭痛をともなう高血圧で、もう1つ気を付けたいのは脳出血脳梗塞です。
脳出血は、なんらかの原因で脳血管の一部が破裂して出血を起こし、脳機能がダメージを受ける病気です。高血圧の初期治療が進んだ結果、脳出血で亡くなる方は減少しつつありますが、半面、さまざまな後遺症(手足などの筋力の低下や麻痺、視覚障害や言語障害など)によって、寝たきりとなったり、日常生活に支障をきたすことも多く、介護を必要とするケースが増加しています。
脳出血というと、なんの前触れもなく突然に発作を起こし、意識を失って倒れるといった印象があるのではないでしょうか。しかし、それ以前の段階として、脳血管から浸み出した血液などが、脳内に血腫という血液のかたまりをつくります(高血圧性脳内出血)。血腫が次第に大きくなると、頭蓋内圧が上昇するため、神経が刺激されて頭痛を起こすことも少なくありません。さらに、血腫に圧力がかかり、破裂すると脳出血が起こります。
したがって、高血圧の方の頭痛は、血腫ができ、脳出血のリスクが高くなりつつあることを示す1つのサインともいえます。もちろん頭痛には、肩こりなどほかの要因も数多くありますが、原因不明の頭痛をくり返す場合には早めに検査を受けたほうがいいでしょう。
高血圧は、脳出血の原因の60%~70%を占めるほど大きな要因ですが、とくに動脈硬化があると血腫ができやすく、また脳出血を起こしやすくなるので、40歳以降の中高年の方は注意が必要です。
もう1つの脳梗塞は、動脈硬化などが原因で脳の血管の一部が詰まり、脳機能にダメージを及ぼす病気です。梗塞が起こった場所によって、運動障害や言語障害などの後遺症も生じます。
一般に、脳梗塞の場合には、頭痛の症状が出る方はそれほど多くないとされています。ただし、梗塞が大きくなると、脳浮腫などからやはり頭蓋内圧が高くなって頭痛につながることもあるので、一応の注意は必要です。
脳梗塞では、一過性脳虚血発作といって、片方の手や足に急に力が入らなくなる、言葉がもつれてうまく喋れなくなる、片方の目が見えにくくなるなどの、一時的な前触れ症状がみられることが少なくありません。
そうした場合には、早めに受診すると同時に、自分でも血圧管理をしっかりすることが大切です。

予防のためにできること

高血圧性脳症や脳出血を予防するためには、(1)高血圧を放置しないこと、(2)急激な血圧上昇を防ぐこと、が大切です。

  1. (1) 高血圧を放置しない

    定期健診などで高血圧やその予備軍と診断されたら、放置せずに定期的に病院で検査を受けることが、予防の基本です。とくに頭痛や吐き気、めまいなどがある場合は、軽い症状であっても、高血圧性のものかどうかなど、原因を把握することが大切です。
    仕事が忙しかったり、悩み事などがあったりすると、気づかないうちにストレスによって高血圧状態が続いていることがあります。ストレスは自律神経系にも影響を及ぼすため、脳血流の調節機能が低下し、高血圧の影響を受けやすくなります。自宅でも毎日、血圧測定をする習慣をつけ、日々の血圧や体調に気を付けるようにしましょう。ストレスを解消するために、週に3~4回は運動をしたり、楽しめる趣味をもつことも大切です。
    また、睡眠時に大いびきをかく人は、気道が閉塞して呼吸がうまくできず、脳の血液中の二酸化炭素濃度が高まって血管が拡張し、頭蓋内圧の上昇をまねきやすくなります。その典型が、睡眠時無呼吸症候群ですが、重症化すると脳出血や脳梗塞を起こすリスクが、健康な人の3倍以上になることが報告されています。大いびきを家族や友人などから指摘された場合は、早めに受診して治療を受けるようにしましょう。

  2. (2) 急な血圧上昇を防ぐ

    スポーツの応援や言い争いなどで興奮すると、血圧が急上昇します。また、入浴時にいきなり熱い湯につかったり、トイレで強くいきんだりしたときにも、血圧が一時的に急上昇します。
    こうした血圧の急上昇は、脳出血の大きなリスクとなります。実際に、スポーツ観戦時や入浴中、あるいはトイレで脳出血を起こして倒れるケースは少なくありません。とくに高血圧で頭痛もある方は、前章で説明したように脳内に血腫ができ、高血圧性脳症になっている可能性もあるので、十分に注意しましょう。
    日常生活では、気持ちにゆとりをもち、あわてて行動したり、怒って興奮したりしないように心掛けることも大切です。

一般に、脳出血や脳梗塞は、毎日1合以上のアルコール(ビールで大瓶1本程以上)を飲む人や、タバコをよく喫う人でリスクが高くなります。たとえば、1日に40本のタバコを喫う人の発症リスクは、タバコを喫わない人の約4倍にもなります。
アルコールを控えめにし、禁煙をするだけでもリスクを下げることができることを知っておきましょう。


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