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2009.04.10

vol.70 首の痛み...その原因と解消法

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首にかかる大きな負担

Vol.70 首の痛み...その原因と解消法 首の痛みは、およそ7割の人が一生に一度は経験するといわれるほど、よくみられる症状です。
首の骨(頚椎=けいつい)は、重さが6~8キロもある頭を支え、上下左右に動かしたり、回転させたりと、複雑な動きをコントロールしています。それだけに首には日ごろから大きな負担がかかりますが、加齢によって首の筋肉が弱ったり、運動不足で首をあまり動かさないでいると、首の筋を違えたり、こりから筋肉痛を起こしたりします。
首の痛みの多くはこうしたタイプで、日常の習慣を見直したり、首の筋肉を鍛えることで改善されます。
しかし、加齢によって頚椎そのものも老化します。頚椎がすり減ったり、クッションとなっている椎間板(ついかんばん)の変形が生じると、慢性的な痛みやしびれを起こすようになります。
頚椎の中央には、神経幹である脊髄(せきずい)がとおり、脊髄から枝分かれした神経が肩や腕へとつながっています(※1)。そのため頚椎が変形すると、首の痛みだけでなく、肩の痛みや手のしびれ、あるいは脚のしびれによる歩行障害、さらには排尿障害まで起こすこともあります。
こうした症状が起こるようになると、本人もつらく、また、治療にも長い時間がかかり、ケースによっては手術が必要となります。できれば初期段階(首のこりや筋肉痛などの段階)で、早めに対処することが望まれます。

(※1)頚椎は、背骨の最上部にある7つの椎骨をいいます。椎骨と椎骨の間には、クッションとなる椎間板があります。また、頚椎を縦に貫く形で脊柱管(せきちゅうかん)という空洞があり、その中を脊髄がとおっています。頚椎や椎間板が変形して脊髄を圧迫すると、さまざまな症状が起こります。

運動で首などをリラックスさせる

パソコンの普及もあって、首の痛みを訴える人が増えています。その最大の原因は、よくない姿勢を長時間続けることです。
パソコン作業をしている人の多くが、背中を丸め、顔を少し前につき出すような姿勢をしています(今のあなたの姿勢はどうですか?)。
この姿勢は、頚椎には不自然な状態です。特に、アゴをつき出すと、首が後ろに反り、頚椎や首の筋肉を緊張させます。長時間続けていると、首や肩の血液の流れが悪くなり、疲労物質の乳酸などが蓄積し、こりや痛みを引き起こします(※2)。
パソコン作業にかぎらず、一般的なデスクワークや、テレビをみているときなども、同様のことがいえるので注意が必要です。
首の痛みの予防と改善の第一歩として、背筋を伸ばし(背中をいすの背につける)、アゴを少し引く姿勢を心がけましょう(時々自分の姿勢を見直し、意識的に姿勢を整える習慣を身につける)。
また、長時間同じ姿勢を続けると、首の筋肉や頚椎に大きな負担となります。30分に一度は席を立ち、次のような運動をします。

(1) 首を左右にゆっくり倒す(5秒くらいずつ交互に5回)
(2) 顔を左右にゆっくり向ける(首の筋が少し張る位置まで向ける。5秒ずつ交互に5回)
(3) 肩を大きくゆっくり回す(前回しと後ろ回しを5回ずつ)
(4) 腕を上げてブルブルとふるわす(腕を下げてブルブルふるわす)

全部やっても3分程度なので、忙しいときにも合間をみつけてやりましょう。
からだを少し動かすだけで、血行がよくなり、疲労物質などがたまりにくくなります。これらの運動は首、肩、腕などをリラックスさせるためなので、力をいれず、ゆっくりやるのがコツです(急に強く動かすと、筋肉をいためることがあるので注意)。
ただし、首の痛みが強い場合には、いきなり運動をしないこと。受診して鎮痛薬などを処方してもらい、その上で医師の指導のもとで運動を始めてください。
また、眼鏡の度が合っていないと、デスクワークのときに前かがみの姿勢になりがちです。背筋を伸ばし、アゴを引いた姿勢で見やすいように、眼鏡の調整をしましょう。

(※2)最近の研究では乳酸そのものが痛みの原因ではなく、同時に生成されるヒスタミン、キニン、プロスタグランジンなどの物質が、痛みを引き起こすとも推測されています。痛みの発生メカニズムには、まだ不明の部分が多くあります。

ちょっと気になる首の障害

首の痛みのほかに、手足にしびれなどがある場合には、ちょっと注意が必要です。頚椎に、次のような障害が起こっている可能性があります。

(1) 頚椎症(けいついしょう)

加齢などによって椎間板の柔軟性が低下すると、骨と骨の間のクッションが弱くなり、頚椎そのものに強い力がかかって変形を起こしやすくなります。その結果、頚椎から腕へのびる神経が圧迫され、手や指のしびれ、感覚異常(感覚がない)、手が動きにくい、といった症状がみられます(神経根症状)。
また、脊髄が圧迫されると、脊髄は全身につながる神経の中心なので、あちこちにさまざまな症状が起こります(脊髄症状)。
典型的な症状として、手のしびれや麻痺(ボタンがかけにくい、字がきちんと書けない、はしが持ちにくいなど)、脚のしびれや麻痺(つまずきやすい、脚が動かしにくいなど)、排せつ障害(尿が出にくい、トイレが近い、便秘など)があります。

(2) 頚椎椎間板ヘルニア(けいついついかんばんヘルニア)

椎間板にはゼリー状の物質が詰まっていて、クッションの役割をしています。加齢などよって頚椎の椎間板自体が変形した場合にも、神経や脊髄を圧迫すると、頚椎症と同様の症状を起こします。
(1)の頚椎症は50歳以上の中高年に多くみられますが、(2)の椎間板ヘルニアは30~40歳代の比較的若い世代にも少なくありません。
(1)と(2)は、首のこりや筋肉痛をのぞくと、首の障害で最も多くみられる症状です。どちらも放置していると悪化しやすく、痛みなども激しくなるので、早めに受診しましょう。

(3) 脊柱靱帯骨化症(せきちゅうじんたいこっかしょう)

脊柱(背骨)の骨どうしをつなぐ靱帯が厚くなり、骨化していく病気です。原因はまだ不明ですが、骨化によって脊髄が圧迫されると、首の痛み、手足のしびれや麻痺など、頚椎症と同様の症状がみられます(※3)。受診して、どの部分の靱帯に障害が起きているかを検査し、適切な治療を受ける必要があります。

(4) その他

肺炎などを起こしたあと、細菌が頚椎に感染すると、首の痛みや発熱などの症状を起こすことがあります。この場合は、抗菌薬などで治療する必要があります。
また、頚椎にできた腫瘍によって、神経や脊髄が圧迫された場合も、首の痛みなどの症状が起こります。首を動かさなくて痛みが続く場合には、早めに検査を受け、良性や悪性かを調べて適切な治療を受けることが大切です。

(※3)脊柱靱帯骨化症は、血糖値が高い人に多くみられることから、糖尿病ともなんらかの関係があると推測されています。

ミニコラム

首の痛みの治療法には、大別すると次の3つがあります。

(1) 生活指導(初期段階)

医師の指導によって日常の生活習慣(姿勢や運動など)を改善し、予防する方法です。

(2) 保存療法(症状が少し進んだ段階)

鎮痛薬などで首の痛みを軽減しながら、悪化しないようにする治療法です。牽引(首をひっぱる)、温熱(首周辺を温める)などの療法も含まれます。

(3) 手術療法(かなり進んだ段階)

(1)と(2)の方法では改善されず、強い脊髄症状がみられる場合などには、手術を選択する方法もあります。発症した場所や程度によって、手術の方法は異なります。ただし頚椎の手術の場合、すべての症状を解消することは難しく、一部の症状が残るケースも少なくありません。また、合併症を起こすこともあるので、リスクについても医師からよく話を聞いておくことが大切です。


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