vol.72 「パーキンソン病」とは、どんな病気?

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早期受診で適切な治療を

パーキンソン病は、名前が知られているわりに、どんな病気か具体的には知らない人が多いようです。そのため、自分の症状がパーキンソン病によるものとは気づかず、診断までにいくつもの病院(診療科)を訪ね、その間に症状を悪化させてしまうケースが少なくありません。
早い段階で適切な治療を受けるためにも、パーキンソン病について知っておくことが大切です。

<パーキンソン病とは>
パーキンソン病は、脳内の神経伝達物質の1つであるドーパミンが不足し、手足のふるえ、ぎこちない動作、小刻みの歩行などの症状があらわれる進行性の病気です。ドーパミンの不足は、脳の黒質(こくしつ)という部分の神経細胞が減少するために起こりますが、その原因はまだ分かっていません(※1)。

<発症率や発症年齢は>

全体の発症率は1000人に1~1.5人程度ですが、高齢になるほど発症率が高くなり、65歳以上では約100人に1人にのぼります。
発症のピークは50~60歳代ですが、40歳代からは注意が必要です(少数ですが20歳代、30歳代での発症もみられます)。

<治療方法は>

パーキンソン病は治療が難しい病気ですが、進行を遅らせたり、症状を軽減する数種類のタイプの薬があります。一般的に薬による治療は、早い段階からおこなうほど改善効果がみられます。薬のほかに、手術による改善法もあります。また症状の軽減には、リハビリ運動やさまざまな補助療法も行われています。

(※1)パーキンソン病は原因が不明で、治療法が確立されていないため、難病(特定疾患)の1つに指定されています。発症してもすぐに生命にかかわる病気ではありませんが、進行するにつれ日常生活に支障をきたすことが多くなります。

vol.72 「パーキンソン病」とは、どんな病気?

パーキンソン病の4大症状とは

パーキンソン病には、4大症状といわれる特徴的な症状があります。

(1) 手足のふるえ

安静にしている状態で、手や足にふるえが起こる。

(2) 筋肉の緊張

関節を曲げ伸ばししたとき、筋肉が固く緊張し、抵抗を感じてぎこちない動きになる。

(3) 緩慢な動作

動作が遅くなったり、動作そのものが少なくなる。顔の表情もあまり変わらなくなる。

(4) 姿勢制御の障害

からだが傾いたとき、足を出して支えたり、姿勢をうまく立て直すことができず、転びやすくなる。

これらの症状のうち、最も自覚しやすいのが(1)の「手足のふるえ」です。パーキンソン病の場合には、何もせずにじっとしている状態でふるえが起こるのが特徴の1つです。また通常は、片方の手足からふるえがはじまり、両方の手足へと症状が進行します(※2)。
4大症状のほかに、便秘や排尿障害などの自律神経障害、食べ物がうまく飲み込めない嚥下(えんげ)障害、臭いが分かりにくくなる嗅覚障害、あるいはうつ症状がみられることもあります。また(4)の障害との関連で、転倒を恐れて足がすくむことも少なくありません。

(※2)手足のふるえは初期の大きな特徴ですが、ふるえがまったく起こらない患者さんもいます。

こんなケースは注意を

典型的な症状が起こる以前から、前兆ともいえる症状がみられることもあります。
たとえば、以前はスタスタ歩いていた人が、歩くのが遅くなったり、歩幅が狭くなったりするケースです。家族や友人と一緒に歩いているとき、ついていけず、遅れがちになることから気づきます。また、つまずきやすくなったり、下り坂をおりるときに途中で止まりにくいといった感じを受ける人もいます。
あるいは日常の動作がテキパキとできなくなり、以前よりもスローになったと感じることもあります。
こうした変化は加齢によっても生じますが、進行している場合には、受診して原因を調べるほうが安心です。内科などで原因が分からない場合は、神経内科(または脳神経内科)を受診するといいでしょう。
こうした前兆とは別に、糖尿病(2型)の人も注意が必要です。
フィンランドの国立公衆衛生研究所の調査では、糖尿病の人はパーキンソン病のリスクが83%も高くなることが分かっています(※3)。日本人も同様かどうかは確認されていませんが、パーキンソン病と糖尿病との関連がはじめて実証されたものとして注目されています。

(※3)フィンランド国立公衆衛生研究所によって実施された、25~74歳の男女5万1000名を対象にした18年間に及ぶ追跡調査。

薬による治療が主流

パーキンソン病の治療には通常、L-ドパ(レボドパ)、あるいはドーパミンアゴニストという薬が使われます。どちらも脳の中で不足しているドーパミンの働きを補い、症状をコントロールする薬です(※4)。そのほか抗コリン薬、ノルアドレナリン補充薬など数種類の薬が、患者さんの症状に応じて医師の判断で使用されています。
L-ドパは早い段階から使用するほうが、症状の進行を遅らせる効果が高いことが分かっています。ドーパミンアゴニストは、L-ドパほど強い効果はありませんが、効き目が持続し、初期段階の人にも使用されています。
早期に治療を始めるほうが薬の選択がしやすく、効果も高いので、症状が見られたら放置せずに受診を心がけましょう。またパーキンソン病の治療は長期間に及ぶので、薬の効果や副作用などを医師からよく聞き、信頼関係を築きながら治療を進めることが大切です。
薬でうまくコントロールできないケースでは、手術を選択する方法もあります。脳の目標部に電極を埋め込み、胸に埋め込んだ刺激装置で電気的刺激を与えて、機能を改善する方法(脳深部刺激療法=DBS)などがあります。
症状のタイプによっては手術が適していない場合があったり、胸の刺激装置を数年ごとに取り替える必要があるといったリスクもあるので、医師から十分に説明を受けるようにしましょう。

(※4)L-ドパはパーキンソン病の治療に画期的な効果をもたらした薬で、死亡や寝たきりになる患者さんが大幅に少なくなりました。患者さんによっては、運動機能が正常に近い状態まで回復するケースもみられます。ただし、長期間服用すると薬の効く時間が短くなり、症状が変動しやすいなどの現象も生じます。薬の特徴をよく知り、医師と相談しながら使用することが欠かせません。

リハビリなどで日常のケアを

パーキンソン病を放置していると、からだの動きが次第に悪化してしまいます。症状を少しでも改善するためには、日常生活では意識的にからだを動かすこと、また運動機能を回復させるリハビリを定期的に行うことが必要です。
リハビリの基本はストレッチ(柔軟運動)で、手足の筋肉や関節などを伸ばしたり、固さをほぐしたりする運動です。簡単なストレッチでは、椅子に腰掛けた状態から、ゆっくり立ち上がりながら両手を高く上げて伸ばす運動や、立った姿勢でからだをゆっくり前に倒す運動、上向きに寝て自転車をこぐように両足を回す運動などがあります。
運動の種類は、患者さんの症状の程度や動きにくい部位(場所)によって異なります。また、すでに治療のための薬を使用している場合、強い運動をすると薬の効果が早く切れてしまうので、やりすぎないことも大切です。運動を始める場合は、まず医師に相談してください。
さまざまな症状の改善には、補助療法といってハリ(鍼)やヨガ、ハーブなどによる療法もあります。患者さんによって効果に違いはありますが、パーキンソン病の症状には日常生活に支障をきたすつらいものも多いので、いくつかの補助療法を試してみるのもいい方法です。ヨガや体操は、気分転換にもなります。ただし、しっかりした指導者のいる施設で、自分の病状をきちんと説明し、対応してもらうことが必要です。
また、睡眠不足やストレスがたまると、症状が悪化しやすい傾向がみられます。よく眠れないなどの症状がある場合は、医師に相談し、睡眠改善薬を処方してもらうなどの方法をとりましょう。
治療や日常のケアについてくわしく知りたい場合は、パーキンソン病の患者さんたちの会があるので、そこで相談することもできます(※5)。患者会に参加し、体験談などを聞くのも参考になります。

(※5)
全国パーキンソン病友の会
http://www.jpda-net.org/

明るく生きるパーキンソン病患者のホームページAPPLE
http://www9.ocn.ne.jp/~pdiyasi/

このコラムは、掲載日現在の内容となります。掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

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