vol.74 尿路結石も生活習慣病

健康・医療トピックス
がん、脳卒中、心筋梗塞、そして、メタボリックシンドロームの診断基準に入っている肥満糖尿病脂質異常症高血圧といえば、誰もが生活習慣病と思っています。では、「尿路結石」はどうでしょう。生活習慣病と思っていない人が多いのではないでしょうか。しかし、専門家たちは尿路結石を「メタボの診断基準のひとつに入れるべき」と、声を大きくしています。



その尿路結石は、腎臓から尿管、膀胱、尿道に至る尿の通り道、いわゆる尿路に石ができる病気です。石ができてもスーッと流れ落ちていけばさほど問題にはなりませんが、重症になると背部の違和感や血尿以外に、尿管で結石が動くと激痛が走り、背部痛、脇腹痛、下腹部痛と石が下がるに従って痛むところが違ってきます。

最も重症のケースは、尿管に石が詰まり、腎臓に尿がたまってしまうときで、腎臓の腎盂(じんう)の内圧が上昇し、脂汗をにじませるほどの激痛になります。



激痛を引き起こす尿路結石は、大きく分けると5種類ありますが、「カルシウム結石」が全体の80%を占め、これに尿酸を主成分とする「尿酸結石」を加えると全体の90%になります。

カルシウム結石と尿酸結石は、食生活の欧米化に伴い年々増加してきています。

肉類のとりすぎで血液中の尿酸値が高いと高尿酸血症となり、それが進むと激痛発作を起こす痛風が待っています。この場合、尿酸結石ができますが、それとともにシュウ酸カルシウム結石もできます。そのような人は尿酸値や中性脂肪値も高く、動脈硬化を引き起こしやすいので、尿路結石は生活習慣病といえるのです。



生活習慣病なので、生活を改善することで予防はできます。(1)「食事以外で1日2Lの水分摂取」、(2)「1日30品目のバランスの良い食事で腹8分」、(3)「適度な運動」、(4)「適度な酒量」、(5)「コーヒー好きはミルクコーヒーに!」。

以上5つのうち(5)は、コーヒーは結石のもとになるシュウ酸が多く含まれますが、ミルクを入れるとシュウ酸が体内に吸収されずに排出されるためです。


生活習慣をしっかり改善する前に尿路結石ができてしまった場合、治療法は「薬物療法」「体外衝撃波結石破砕術(ESWL)」「経尿道的結石破石術(TUL)」「経皮的結石破石術(PNL)」「開放手術」と数多くあります。

石の直径が4mm以下であれば自然排出されるといわれています。5mm以上は多少難しくなりますが、「石が8mm以下ならば自然排出を待っても良い」という基準もあります。その場合、痛みをいかにコントロールするかという問題もあり、痛みが強いとき、また腎機能に障害があるときには早目の治療が必要です。

患者自身の状態、患者の石の状態などを十分に考え、主治医と患者が話し合って最善の治療法を選択するべきです。
vol.74 尿路結石も生活習慣病

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執筆者プロフィール

松井 宏夫

松井 宏夫

医学ジャーナリスト
略歴
1951年生まれ。
医療最前線の社会的問題に取り組み、高い評価を受けている。
名医本のパイオニアであるとともに、分かりやすい医療解説でも定評がある。
テレビは出演すると共に、『最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学』(テレビ朝日)に協力、『ブロードキャスター』(TBS)医療企画担当・出演、『これが世界のスーパードクター』(TBS)監修など。
ラジオは『笑顔でおは天!!』のコーナー『松井宏夫の健康百科』(文化放送)に出演のほか、新聞、週刊誌など幅広く活躍し、NPO日本医学ジャーナリスト協会副理事長を務めている。
主な著書は『全国名医・病院徹底ガイド』『この病気にこの名医PART1・2・3』『ガンにならない人の法則』(主婦と生活社)、『高くても受けたい最新の検査ガイド-最先端の検査ができる病院・クリニック47』(楽書ブックス)など著書は35冊を超える。

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