学術・研究活動

家庭血圧の普及

「血圧測定」を、家庭へ。

オムロン ヘルスケア の家庭用血圧計の開発……それは1960年代初頭に世界に先駆けて提唱した「健康工学(Health Engineering)」の考え方から始まりました。

健康工学とは、オムロンの創業者・立石一真が、私たち人間の身体を、無数の自動制御系の組織工学的な集合体ととらえ、オートメーション技術を活用して健康管理と病気の診断治療をしようとする考え方です。この理論をもとに1961年、オムロン ヘルスケアの中央研究所 において健康医療機器の研究がスタート。「企業は社会の公器である」という企業理念のもと、「測定技術をとおして健康に貢献する」 ため、家庭用血圧計の開発に取り組んできました。
しかし、当時は、「血圧は病院で測るもの」 がという考え方が当たり前だった時代。機器を開発するだけでは、家庭血圧は普及しません。そこで、オムロン ヘルスケアは、家庭で血圧を測ることの価値を社会に啓発する中心となる医師や研究者を育てるための取り組みをできないかと考え始めました。

「家庭血圧」を広めたい。今なお続く普及活動。

「健康は一人ひとりの積極的な自己管理とよい生活習慣によって守られる」

現在では一般的となった予防医学や行動科学の考え方を、半世紀にわたって提唱してきた先生がおられます。家庭血圧を広め続けてきたパイオニア、聖路加国際病院 理事長 日野原重明先生(当時)です。

日野原先生は、1975年の第16回日本心身医学会総会で、「家庭血圧の臨床医学的意義」という演題で血圧測定は場所、生活要因、測定者などの条件で大きく変動すること、そして家庭で測定した血圧値は病院での血圧値よりも低値を示すことを発表。入院中や外来受診時に1回、しかも医師の前で緊張した状態で測った血圧値を平常血圧値と解釈することの危険性について講演されました。また、長年にわたり多くの人に家庭血圧の重要性を伝えるための啓発活動や講演会を実施。医師でなくても簡単に自宅で測定できる血圧計の研究にも着手されました。

そして、家庭血圧の普及によって人々の健康に貢献したい、という日野原先生とオムロン ヘルスケアの想いが共鳴。「家庭血圧」普及に欠かせない啓発活動の中心となる医師や研究者の育成を目指し血圧管理に関する最新の知見と研究成果の啓発を目的とした「血圧管理研究会」の設立(1988年)へとつながっていきます。血圧管理研究会の活動は現在も続いており、血圧管理研究会では、これまで様々な研究成果が発表され、血圧管理および家庭血圧の重要性や新たな手法が発信されてきました。そして、このような活動の結果、2014年に発行された高血圧治療ガイドラインでは家庭血圧は診察室血圧より優先すると規定されるまでに至っています。
しかしながら、まだ家庭血圧の普及への取り組みは終わりではありません。世界中にはいまだ多くの高血圧患者が存在し、高血圧が原因で脳・心血管疾患を発症するケースも多いのも事実です。脳・心血管疾患の発症ゼロを実現するその時まで、血圧管理研究会をはじめとした、オムロンヘルスケアの家庭血圧の普及への取り組みは続いていきます。