「測定精度」と「わかりやすさ」に挑み続ける
血圧は健康のバロメーターといわれるほど、身体の状態を表す重要なバイタルデータです。家庭用血圧計が普及する前は、医療従事者によって測定されていた血圧。腕帯の巻き方や加圧方法は、それぞれが持つ専門性に委ねられてきました。
そんな血圧を、家庭で、そして一人でも正しく測れるようにするためには、確かな「測定精度」と、誰もが正しく使える「わかりやすさ」が重要です。
1973年 オムロンが血圧計を発売してから、変わらず今も挑み続けている「測定精度」と「わかりやすさ」への挑戦について紹介します。
世界初「ファジィ技術」搭載 家庭用血圧計の誕生
加圧設定の自動化に挑戦
腕帯を巻き、ボタンを押すだけで血圧が測定できる。今や当たり前となったこの操作も、多くの技術が開発され改良され続けて誕生しました。その中でも、測定精度の進化に大きく貢献したのが、1991年に開発した「デジタル血圧計 HEM-706 ファジィ」。
それまでの血圧計で事前に設定が必要だった加圧設定を自動化。加圧設定とは、自身の最高血圧値にあった加圧設定を、測定前に自分で行うというもの。そのため、自分の最高血圧値を知らない人、設定方法がわからない人など、人によって測定結果にバラツキが生じました。ファジィ技術搭載により、自動で加圧設定ができるようになり、誰でも測り直すことなく、測定結果のバラツキを抑えながら、正しく測定できるようになりました。
一人ひとりに最適な血圧測定を目指して。
ファジィ技術搭載後も、さらに測定精度の改良は続きます。
家庭用血圧計は、上腕もしくは手首に腕帯を巻いて測ります。しかし、腕や手首の太さ、柔らかさは人によってさまざま。でもそれは当たり前のこと。一人でも多くの人が家庭で血圧を正しく測れるよう、腕の太さ、手首の太さ、そして柔らかさに左右されない、独自の加圧/減圧技術(アルゴリズム)を新たに開発、すべての家庭用血圧計にその技術を搭載しました。
誰でも簡単に、正しく巻ける「腕帯」への道のり。大切なのは「人を知る」こと。
正しく血圧を測るためには、確かな測定精度はもちろん、血圧計を正しく使っていただくことも重要です。正しく血圧計を使うとは、腕帯を腕に沿うようにぴったりと巻き、前かがみにならないように背筋を伸ばした姿勢で測ることです。これらの動作を、お客様の負担にならず、無意識にしていただけるよう、腕帯の開発・改良にも取り組んできました。
従来使われていた扇形腕帯は、腕帯の端を引っ張って腕にぴったり巻こうとするとずれてしまうという課題がありました。医療従事者の専門スキルによって、腕に沿うように巻かれていた腕帯を、家庭で、一人で出来るようにするためには何が必要か。開発者達は、「人を知る」ことから始めました。
米国、欧州、ロシア、日本など、世界中の病院や研究施設を訪問し、腕帯を巻き、血圧を測定。収集したデータを分析し改良を重ねました。一度の改良で測定する人の数は、数百人規模。一人ひとりの巻き方や、測定シーンを開発者自らの目で確かめます。
そして、開発されたのが「フィットカフ」です。二の腕部分にずれないよう固定するための「カーラ」を装着することで、誰でも片手でぴったりと巻くことができるようになりました。
しかし、開発の道のりはこれで終わりませんでした。
「加圧するときの痛みが苦手で、測るのが嫌になってしまう。」というお客様の声が届きます。家庭血圧は、測り続けることが大切です。そのために何ができるのか、さらに試行錯誤を繰り返しました。そして次に誕生したのが「e-フィットカフ」です。加圧時の痛みを一人ひとりの腕の状態に合わせて軽減するための技術を開発。さらに、腕帯に使われている布や、「カーラ」の素材も軟らかいものに見直しました。少しでも多くの人に測り続けてほしい、そんな思いから生まれました。
「誰でも簡単に正しく巻ける腕帯」の挑戦はさらに続きます。
改良を重ねてきたフィットカフ、e-フィットカフですが、腕周が大きい人にとっては巻きづらいことがわかりました。また、医療機関からは、小児が測れる血圧計は作れないかという相談が舞い込みます。そこで、腕帯幅と周長を改良し、太い腕、細い腕、それぞれに対応した腕帯の開発にも取り組みました。
さらに、より正しい測定をサポートするために、様々な工夫を重ねてきました。
・高さガイド
手首式血圧計で大切なことは、心臓の高さで測定することです。しかし、心臓の高さと突然いわれても多くの人はイメージするのが難しいのではないか。そこで、誰もが心臓の高さで測定できるように「高さガイド」は開発されました。血圧計が正しい高さになると、液晶画面上のランプや表示でお知らせします。誤った姿勢で測定しようとすると、「測定姿勢チェックマーク」が点滅してお知らせするので、正しい姿勢を簡単にとることができます。
・カフぴったり巻きチェック
測定のたびに、カフが適切な強さで正しく巻けているかをチェックし、液晶画面でお知らせします。この機能が開発される以前は、腕帯がぴったり巻けているかわからなかったため、測定値にバラツキが生じることがありました。
脳・心血管疾患の発症(イベント)をゼロにする。これは、単なる事業ビジョンではなく、オムロン ヘルスケア全ての社員の熱い想いです。家庭での血圧測定を通じて、少しでも多くの人の健康に貢献したい。そのためにも「測定精度」「わかりやすさ」には少しの妥協も許されません。血圧計のリーディングカンパニーとして、オムロン ヘルスケアの熱い想いは続きます。