これまでの歩み

デザインの追求

暮らしに溶け込む医療機器へ

こころが前を向くデザイン
〜 Omron Healthcare Design 5つの哲学 〜

オムロン ヘルスケアがデザインを考えるとき、5つの哲学「正直」「正確」「直感」「優しさ」「ちょうどいい」を大切にしています。これらの哲学は、お客様と対話し、 暮らしを知ることで生まれた考え方です。世界中の人々の健康ですこやかな生活に貢献するために、デザインで出来ること。今なお続く挑戦の一端を紹介します。デザインの始まりは「生活を知る」こと。
血圧計は、国、年齢、家族構成、ライフスタイル、血圧を測る目的などに応じて、様々な人が使用しています。そして、人の数だけ使い方も様々です。そのため、オムロン ヘルスケアでは、デザインを考えるときは必ず「お客様の生活を知る」ことから始めます。
血圧計ユーザーの自宅を訪問するなどして、利用者のみならず家族からもヒアリングを行います。そして、いつ、どこで、どのように使っているか、その周りには何が置かれているか等、 暮らしの理解に努めます。
血圧計という機器を主語として考えるのではなく、お客様を主語に据えて、その行動をデザインすることを大切にしています。例えば「測ること」「測った値を確認すること」「これまでの経過を振り返ること」の行動を、時系列で捉え、商品を装飾するのではなくユーザー体験に正直で、ストレートなデザインを考えることから始まります。

押しつけではなく「自然な気づき」を大切に

正しい血圧測定には、カフ(腕帯)の装着や、測定姿勢の正しさが基本となります。
一見、 腕帯を巻きつけるだけの簡単な操作に見えますが、その巻き方は測定結果に大きく影響します。腕帯の素材や形状などの巻きやすさだけでなく、腕帯を巻く手順 、腕の太さや長さや柔らかさ、体格 という身体的側面と、前向きに測るのかイヤイヤ測るのかという意識的側面も巻き方に影響を及ぼします。

このように多様な要素が入り混じるなかで、正しく血圧を測ってもらうために、国内外でユーザーテストを行い、腕帯そのもののデザインだけでなく、取扱説明書での説明の仕方、腕帯上に記載されている巻き方説明など、 多岐で細部にわたる改良や改善を繰り返しています。

10年以上変わらない「基本」

オムロン ヘルスケアの血圧計の基本デザインは10年以上変わっていません。複雑な操作はなく、ボタンひとつの操作で測定できるようになっています。測定結果の見やすさを重視して考え出された「25度」の角度を設けたディスプレイ。左腕に自然に装着できるよう本体左側に配置されたカフコネクタ(カフと本体を接続する部分)。測定開始ボタンは右手で押しやすいレイアウト。血圧計の中心に大きく表示される測定結果。機器そのものの形状が、自然と使い方を示唆してくれます。これらは既に世界の血圧計のスタンダードな形状となっています。

さらに液晶画面に表示される文字やアイコンの視認性にもこだわっています。文字だと読みづらい説明内容は、アイコンデザインを改良することで理解の促進を図っています。

デザインで「健康管理」を応援したい

人は歳を重ねると、自然と体が衰えて視認性が落ちていきます。血圧計と向き合う人生の中では、ときには体調がすぐれないこともあります。そのような状態においても、いかにストレスなく血圧測定できるかが、測定を継続する上で重要になってきます。そのためにデザインでサポートできる代表的な例が、測定結果を7本の線を組み合わせた数字で表示する「7セグ」のデザイン に対する取り組みです。

7セグの文字間と行間

オムロン ヘルスケアの製品は、7セグに対して独自のサイズ規定を設けています。これは様々な年齢の方への調査から導き出されたサイズの規定で、文字間 の隙間の設け方にも独自のルールを制定しています。これは、誰もがノンストレスで結果を読み取るための工夫です。

また、測定を継続してもらうための工夫の1つに週平均グラフや比較表示機能があります。自分の血圧値トレンドや過去の値と比べることで、健康管理のモチベーションが上がるからです。特にスマートフォンアプリでは、時間帯・日・週・月・年での変化を切り替えて見ることができるので、時間帯ごとの変化や、曜日ごとの違い、季節による変動などが視覚で簡単に理解しやすくなっています。そうすることで、少しでも測定の継続に繋がるようにサポートするのがデザインの重要な役割です。

毎日使ってほしいから。暮らしに溶け込むデザインを。

オムロン ヘルスケアの血圧計をデザインする上で大切にしているのは「家庭で使う医療機器」という点。医療機器としての信頼感や精緻さが必要な一方で、毎日使うものだから普段の暮らしに溶け込む自然な形も必要です。一見、相反するように思われる両者をどのように成立させるか、主張しすぎず、埋没しすぎないような、ちょうどいいデザイン。機器だけでなく、スマートフォンアプリにもその考え方は引き継がれています。お客様が、どのタイミングで、どの情報を必要としているのか、何度も調査することで1つずつ答えを見つけてきました。

なにげなくいつもそばにあるのに、自然と健康意識や日常の行動が変わってしまう、そんな日常に溶け込んだ存在。ホワイトをまとった凛とした医療機器らしい佇まいの中に、どこか優しさや柔らかさを感じる、そんな存在になれるよう、デザインの追求は続きます。