わたしたちの挑戦

遠隔診療サービスのグローバル展開

世界で取り組む、遠隔診療サービス

オムロン ヘルスケアは2015年、脳・⼼⾎管疾患の発症ゼロを⽬指す「ゼロイベント」を循環器疾患事業の事業ビジョンに掲げました。“ゼロイベント”とは、人間の生命やQOL(Quality of Life)の維持に重大な影響を及ぼす脳卒中・心不全などの脳・心血管疾患の発症(イベント)をゼロにすることです。そのために脳・⼼⾎管疾患の原因である⾼⾎圧、⼼機能低下や異常の早期発⾒・早期治療を実現するためのデバイスやサービスをグローバルに提供し続けています。

これまでの高血圧・心疾患治療では、診察時のバイタルデータを用いて医師が治療方針を決めてきました。しかし、血圧は常に変動するため、診察時の情報だけでは詳しく血圧の傾向を把握し、投薬の効果を確認するのは難しいといわれています。

そこでオムロン ヘルスケアは、家庭で測定したバイタルデータを医師と患者が共有し、異常の早期発見・治療に活用できる、遠隔診療サービス(Remote Patient Monitoring、以下RPM)事業に取り組んでいます。家庭で測定した血圧データを用いた投薬プランを提案するサービスや、自宅で医師・医療スタッフと相談・診察をうけられる環境構築を進めています。

世界規模での新型コロナウイルス感染症拡大により顕在化した社会インフラの課題、人々の価値観・生活様式の変化により、遠隔診療サービス普及への期待は高まる一方です。オムロン ヘルスケアでは、この環境変化を確実に捉え、ゼロイベント実現に向けて新たなサービス領域にも積極的にチャレンジしていきます。

"VitalSight™" 家庭での測定データを活用した遠隔患者モニタリングサービス

米国での取り組みにおけるRPMサービスの展開

2020年現在、 世界の死因の第⼀位は虚⾎性⼼疾患、第⼆位は脳卒中とされていますが、世界⼈⼝が82億⼈に達すると⾒込まれている2030年までには、脳・⼼⾎管疾患による死亡者数が2,220万⼈(世界の全死亡者数の32.5%)にまで増えると予測されています。CDC(アメリカ疾病予防管理センター)によると米国の成⼈3,700万⼈以上が⼼臓発作または脳梗塞の恐れがあるといわれるステージ2の⾼⾎圧症であり、かつ治療が⾏われていません。そんな中、米国では2025年までに血圧コントロール率 80%を目指す指針が出されています。

このような米国における健康課題を解決するため、オムロン ヘルスケアは高血圧などの慢性疾患患者向けRPMシステム"VitalSight™"の運用を、2020年6月よりニューヨークのマウントサイナイ病院にて開始。同年9月より提供を開始しました。患者が家庭で測定したバイタルデータを病院の電子カルテに送信し、医師や医療従事者と共有でき、医師は患者の状態に合わせて的確な医療介入ができます。日々の身体の状態変化をタイムリーに把握することで、バイタルデータに異常があればすぐに対処できるようになるなど、より効果的・効率的な治療が可能になります。

VitalSight利用イメージ

"HeartVoice" 「企業健診からオンライン診療まで」ワンストップで提供するサービス

アジアでの取り組みにおける
RPM・オンライン診療サービスの展開

シンガポールでは、アジアにおけるコーポレートウェルネス事業(従業員向け健康維持サービス)とオンライン診療事業の立上げを推進しています。企業向けの健康診断などで、高血圧症をはじめとした慢性疾患をもつ社員を早期に発見し、状態に応じてオンライン診療サービスへ誘導する新しい事業モデルを展開しています。また、企業健診で症状が見つかった患者だけでなく、新型コロナウイルス感染症拡大後は感染を恐れて通院を控える一般の慢性疾患の治療サポートも行っています。

医師不足や、医療サービスの都市部への偏りなど、アジア圏において顕在化している医療領域の社会的課題を解決するため、シンガポールで培ったノウハウをアジア全域へ展開し、アジア圏におけるゼロイベント実現を加速させていきます。

HeartVoice全体イメージ

"Hypertension Plus" 家庭での血圧データを活用した投薬提案支援サービス

欧州での取り組みにおける
RPM・オンライン診療サービスの展開

英国では、成人の約3割が高血圧症といわれています。英国政府が運営する国民保険サービスNHS(National Health Service)は、2030年までに国内の血圧コントロール率80%を目標に掲げています。一方で、最新の コントロール率は60%といわれており、更に血圧コントロール率を高めていく必要があります。英国の場合、緊急時を除き、受診する医療機関は事前に登録した「かかりつけ医」と決められています。かかりつけ医によっては多くの患者を抱えているため、待ち時間が長く、十分な診察時間を確保できない場合があります。それを理由に治療を中断してしまう患者もいるといわれています。治療効率の向上と治療継続が高血圧治療の重要な課題といえます。

Hypertension Plusは、年齢や人種 、合併症などにより降圧薬(血圧を下げる薬)選択基準を定めている英国国立医療技術評価機構(NICE)が定める高血圧ガイドラインに準拠しており、オックスフォード大学で行われた臨床研究で降圧効果を確認した在宅服薬変更プログラム(TASMINプログラム*)を採用しています。3か月分の投薬プランが提案されるので、患者は毎月の通院負荷を軽減でき、医師は診察時間の効率化を実現できます。患者が家庭で測定した血圧データや自覚症状を医師と共有することができるので、医師および医療スタッフによる投薬をオンラインで完結でき、アラート機能で継続的な服薬支援も行えます。

*TASMINプログラムは、従来の治療法適用時と比較した場合、12か月後の降圧効果は収縮期血圧において4.7mmHgの有意差が確認されています。
Lancet.2018Mar10;391(10124):949-959.
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(18)30309-X/fulltext

医師向け管理画面①
画面左:血圧レベルに応じて色分けされた患者リスト
画面中央:医師へのタスクリスト
画面右:患者ごとの血圧グラフとデータ

医師向け管理画面②
画面左:患者の登録情報
画面中央:3か月分の投薬プラン提案

患者用スマートフォンアプリ画面
左:服薬時間や血圧測定時間など、1日の血圧治療スケジュールを表示
中央:血圧管理画面。血圧の値やグラフを表示
右:投薬プラン画面。過去の投薬プランや服薬状況を表示

患者用スマートフォンアプリ画面

服薬時間や血圧測定時間など、
1日の血圧治療スケジュールを表示

血圧管理画面。
血圧の値やグラフを表示

投薬プラン画面。
過去の投薬プランや服薬状況を表示

Hypertension Plus 紹介サイト
https://www.omron-healthcare.co.uk/hypertensionplus/

Luscii社との取り組み(オランダ)

2019年、オランダを中心とした大規模病院の専門医向けにRPM・オンライン診療サービスを展開しているLuscii社と業務提携しました。Luscii社は、心不全やCOPD 、高血圧症などの慢性疾患患者が自宅にいながらRPM・オンライン診療サービスを受けることができるサービスを展開しており、すでにオランダ全土の約半数の病院で使用されています。患者の健康状態が悪化するとネットワークを通じて医師に通知が届き、診療を受けることができるなど、通院の手間を省き、対面診断、入院を減らすことが可能になります。今後は、収集されたデータに基づき、医師・看護師・患者に対して治療アドバイスを行うアルゴリズムやプログラムの開発に取り組んでいきます。