わたしたちの挑戦

心疾患領域への参入

心疾患の発症および再発防止を目指して

心房細動は、心房と呼ばれる心臓内の部屋が小刻みに震えることで起こる不整脈。脳梗塞の重要な危険因子であることがわかっていますが、約4割が無症状であるだけでなく、発作的に起こることも多く、健康診断や定期診察で見逃されるケースが少なくありません。
高血圧による脳・心血管疾患の発症をゼロにする「ゼロイベント」の実現を目指してオムロン ヘルスケアでは、心房細動と高血圧が併存して発症しやすいことに着目。脳梗塞を未然に防ぐため、毎日の「血圧測定+心電図記録」による心房細動の早期発見にチャレンジします。

増える「隠れ心房細動」 無症状でも危険

心房細動は、ごくありふれた不整脈です。加齢とともに増える病気で、日本の推定患者数は2020年で100万人(*1)、高齢化に伴い、今後も増えていくことが予想されます。

  • *1  Ohsawa M, et al, : J Epidemiol 2005 : 15 : 194-196

心房細動は、それ自体が重い病気というわけではなく、すぐに命に関わるようなことはありません。問題は、ある日突然、脳梗塞(脳卒中)を引き起こすリスクがあること。心房細動から起きる脳梗塞は、「心原性脳塞栓症」といって命に関わる大きな脳梗塞になることが多く、一命をとりとめても麻痺や寝たきりなど重い後遺症が残る可能性が高くなります。

心房細動の診断がつけば、脳梗塞のリスクに応じて脳梗塞を予防するための治療が行われますが、心房細動は自覚症状に乏しく、見つけるのは簡単ではありません。発作的に起こることも多いため、健康診断や定期診察でも見逃されてしまいがちです。
心房細動の人はそうでない人に比べ、脳卒中のリスクが約5倍高くなるというデータもあります(*2)。

  • *2 P A Wolf, et. Al. Stroke. 1991;22:983-988

見えないリスクを“見える化”する 心電計付き血圧計

自覚症状がない心房細動や、たまに起きる心房細動を捉え、診断・治療に結びつける。この難題を解決するため、オムロン ヘルスケアでは新たに家庭用の心電計付き血圧計を開発しました。血圧計に心電図記録の機能を付加し、毎日家庭で血圧を測るときに心電図を記録することができるようにしたもので、高血圧患者の心房細動の早期発見に役立ちます。

心房細動は高血圧に併存することが多い病気です。心房細動がある人の50~60%は高血圧である、また高血圧の人の10~20%は心房細動を有するといったデータも出ています(*3)。毎日の血圧測定・管理を習慣づけている高血圧患者の健康を守るため、高血圧患者が抱える心房細動という見えないリスクを“見える化”する。これが、家庭用心電計付き血圧計の開発コンセプトです。

  • *3 Y. Yotov, Journal of Hypertension Vol 34, September 2016, e204.

心電計付き血圧計 Completeは、両手の指先で電極に触れるタイプの心電計と、カフを腕に巻く上腕式血圧計を一体化した機器です。その最大の特長は、血圧測定と同時に心電図を記録できること。これにより、血圧測定の“ついで”に心電図を記録できる手軽さを実現しました。さらに心房細動を有する可能性の高い高血圧患者の見えないリスクの早期発見を目指します。機器で記録した心電図波形をスマートフォンアプリが分析し、正常か異常かのメッセージが表示されるので、患者自らが受診するきっかけにもつながります。将来的には、心電図をメールで医師に送信し診断を仰ぐといった、遠隔診療サービスでの活用にもチャレンジしていきます。

毎日の「血圧測定+心電図記録」を新習慣に

オムロン ヘルスケアはゼロイベント実現に向け家庭での血圧測定・管理を進化させてきました。しかし、血圧測定・管理だけでは、イベントはゼロになりません。脳梗塞のリスクとなる心房細動を早期に発見し治療につなげるため、毎日の「血圧測定+心電図記録」を新習慣として根づかせる。これは、ゼロイベント実現のため必ず解決すべき課題であり、家庭での血圧測定・管理を普及させてきたオムロン ヘルスケアだからこそ解決できる課題です。
従来、日本では家庭用心電計は心疾患の既往がある人などが疾病管理や再発予防のために使用するケースがほとんどでした。今後は、日常生活の中で心電図を記録する機会を増やすことや、心房細動の早期発見の大切さを伝える啓発活動にも取り組んでいきます。