わたしたちの挑戦

家庭での夜間血圧測定、血圧管理の普及

夜間の血圧測定を、家庭で

家庭で毎日血圧を測り、適正にコントロールされていても、見逃されやすいのが「夜間高血圧」です。血圧変動の傾向は人によってさまざまであり、日中の血圧測定だけでは、夜間血圧の実態を知ることはできません。

1日を通して適正な血圧値を維持するため、そして高血圧が引き起こす脳・心血管疾患の発症(イベント)を予防するため、夜間睡眠中の血圧を「家庭で測って知る」ことができる血圧計が今、求められています。

血圧管理の陰に潜む「夜間高血圧」のリスク

血圧は通常、日中よりも夜間の方が10~20%下がるといわれています。しかし、夜になっても下がらない場合や、昼間より夜間の方が高くなる場合があります。日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン」によると、夜間(睡眠時)の血圧の平均値が収縮期血圧120mmHg以上、拡張期血圧70mmHgを超える場合を「夜間高血圧」といいます。
自治医科大学 苅尾教授らの研究によると、夜間血圧値の収縮期血圧が10mmHg上昇することは、診察室血圧や朝の家庭血圧とは独立して、心血管疾患発症のリスクが20%上昇することが分かりました。また、夜間血圧値の平均値が高いグループ(132.3㎜Hg以上)は、正常なグループ(108.7-116.3mmHg)と比較して、調査開始から約7年後で、脳卒中の発生率に約5.4倍の差が生じることがわかりました*1。

  • *1 Kario K et al.,Hypertension. 2019 Jun;73(6):1240-1248.より引用

血圧は常に変動しているため、夜間高血圧は、朝晩の血圧測定を習慣にしている人でも見逃されてしまう可能性があります。朝の血圧値が良好にコントロールされている人の約4人に1人が夜間高血圧だったという研究結果も報告されています(*2)。

良好な血圧コントロールの陰に潜む、夜間高血圧のリスク。そのリスクを「家庭で測って知る」ために、「ゼロイベント=脳心血管疾患の発症ゼロ」を目指すオムロン ヘルスケアでは、家庭用の夜間血圧計の開発に取り組んでいます。

  • *2 Kario K et al., The Journal Of Clinical Hypertension 2015 May;17(5):340-348より引用改変

睡眠の質と正確な測定を両立する、手首式の夜間血圧計

従来から夜間血圧の測定によく用いられている自由行動下血圧計(ABPM)や、広く普及している上腕式血圧計は、睡眠中に使いやすいものではなく、上腕の締め付け感や動作音、チューブなどが睡眠の妨げになるという問題がありました。睡眠を妨げると血圧値に影響して“本当の夜間血圧”が測定できないだけでなく、血圧計の使用がストレスとなって、測定を継続できなくなる可能性もあります。

求められるのは、睡眠の質を保ちつつ正確な測定ができる血圧計。そこで、オムロン ヘルスケアでは、手首式血圧計をさらに進化させることで、静音測定と薄型を実現した夜間用の手首式血圧計を新たに開発しました。
開発においては、睡眠中の体動という難題がありました。その難題をオムロン独自の技術を搭載した新たなカフにより解決。睡眠の質と正確な測定を両立した、手首式の夜間用血圧計を開発しました。

使いやすく、毎日使ってもストレスがない血圧計であること。そして、測定精度が高いこと。この2つはオムロン血圧計の共通項です。夜間用血圧計も、装着・測定を気にせず眠れるもの、そして睡眠中の体動に関わらず正確な測定ができるものとなっています。

ゼロイベントに近づく、家庭血圧測定の進化

夜間高血圧の早期発見・治療を実現するには、さまざまな課題があります。夜間高血圧のリスクや夜間血圧測定の重要性を多くの人に知ってもらうこと、家庭での夜間血圧測定の意義を医療現場で認めてもらうこと、夜間高血圧の治療法が確立されること――こうした課題の解決に向け、オムロン ヘルスケアでは夜間高血圧の研究や啓発活動に積極的に取り組んでいきます。
オムロン ヘルスケアは血圧測定の習慣を「病院で測るもの」から「家庭で測るもの」へ、そして「1日1回」から「朝晩の1日2回」へと変えてきました。今後はゼロイベントの実現に近づくために、家庭での「朝晩の1日2回 + 夜間測定」普及を推進していきます。