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高血圧ドクターインタビュー

第十四回 福岡編福岡国際医療福祉大学 学長 今泉勉先生

健康管理の大敵は、「あきやすのすきやす」

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開放的で「あきやすのすきやす」な県民性

福岡県は、「福岡」・「北九州」・「筑後」・「筑豊」という4つの地域に大別され、地域によって特色が異なります。九州の中枢機能をつかさどり、商業都市でもある「福岡地域」、鉄鋼・化学・自動車・半導体・ロボットなどの「ものづくり」が盛んな「北九州地域」、豊かな自然を活かし農林水産業で栄える「筑後地域」、かつて石炭産業で栄えた場所で、現在は自動車産業をはじめとする新たな産業創出が盛んな「筑豊地方」と、どの地域も個性的な魅力を持っています。

九州一の発展を遂げている福岡県は、昔から貿易が盛んだったこともあり、解放的で多様性のある県民性といわれています。実際、地方によくみられる保守的な「村気質」はなく、大らかで陽気な人が多いように感じます。一方、4つの地域において、産業構造も違えば多少県民性も違いますが、共通しているのは、「熱しやすく冷めやすい」気質ではないでしょうか。「新しいもの好きで流行にも敏感」、「すぐ興味を持つものの、長続きしない」というのが福岡県民です。福岡県の方言(博多弁)に、「あきやすのすきやす」という言葉がありますが、ご存知でしょうか。これは、「移り気・きまぐれ」という意味の言葉です。「飽きやすく好きやすい」、「熱しやすく冷めやすい」という意味を持つ「あきやすのすきやす」という言葉は、福岡県民の性分をよく表現しているように思います。

若く活気のある県であるが、健康に対して関心が薄く、一抹の不安も

近年、日本では人口が減少傾向にありますが、そのような中でも福岡県(特に福岡市)は人口が増加している「勢いのある県」といえるでしょう。人口増加数・増加率で、福岡市は政令市中第1位です。しかも、少子高齢化が叫ばれる中で、若者(10代・20代)の割合が高い(政令市中第1位)というのは全国の中でも珍しいのではないでしょうか(表1参照)。

【表1】福岡市の人口増加数・人口増加率・若者(10代・20代)の割合1)

福岡市の人口増加数・人口増加率・若者(10代・20代)の割合

福岡市「Fukuoka Facts データでわかるイイトコ福岡」より引用

若者が多いということは、街に活気が生まれ、非常に良いことです。しかし、健康面からいうと、若年層の健康意識は低く、関心も薄いように思います。体に不調も問題もない若者に「健康に気をつけよう」と言っても、自分のこととして捉えてもらえず、関心を持ってもらうのは非常に難しいと感じています。
また、若者に限らず、働き盛りの世代においても、健康への関心が低いように思います。福岡県は、30~40歳代の男性において肥満の人の割合が高く、若い世代で肥満の割合が増加しているとのデータがあります(表2参照 【肥満者の割合2)3)】20歳代:33.3%、30歳代:40.9%、40歳代:37.1%)。肥満の人は、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病になりやすいことが分かっていますので4)、若い世代の皆さんは、今はまだ体に異常がなくても、将来的に注意が必要です。今後、福岡県として、若者や働き盛り世代への健康教育に力を入れていく必要があると感じています。

【表2】

肥満者(BMI≧25の割合)

BMI(肥満指数):体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)のこと。
BMIが18.5未満で低体重、18.5以上25未満で普通体重、25以上で肥満。

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恵まれた医療環境に「あぐら」をかかないようにしたい

福岡県内には多くの医療施設、医療教育施設があり、医学部のある大学が県下に4つもあります(九州大学、福岡大学、産業医科大学、久留米大学の4大学)。また、病床数や医師数をみても、かなり多いのです。病床数5)は全国4位(表3参照)、医師の多さ(医師偏在指数※)6)は全国3位です(表4参照)。
地方では、医療過疎が大きな問題になっていますが、福岡県では医療過疎はあまり問題にはなりません。それだけ医療水準も高く、医療へのアクセスも良く、医療環境は恵まれているのだと思います。しかし、医療環境が恵まれていることによって、逆に日々の健康意識が希薄になるという面も否定できません。病気にならないように日頃から気を付けようという意識が生まれづらく、「病気になってから考えればよい」、「病気になったら病院に行けばいい」と考える人が多いのではないでしょうか。他県の医療過疎問題を抱える地域に住む方の方が、「ずっと健康意識が高いのでは」と思うことがあります。

※医師偏在指数:医師偏在解消を目指すための指標で、医療ニーズ及び将来の人口・人口構成の変化、患者の流出入、へき地等の地理的条件、医師の性別・年齢分布、医師偏在の単位(区域、診療科、入院/外来)を「偏在に関わる5要素」として加味したもの。医師偏在指標が大きいほど医師数が多く、小さいほど医師数が少ないことを表す。

【表3】病床数(施設の種類×都道府県別)ランキング(平成29年)

※病床数合計でのランキング

病床数(施設の種類×都道府県別)ランキング(平成29年)

三次医療圏別(都道府県別)の医師偏在指標ランキング

厚生労働省「2019年2月18日 医師需給分科会資料」より

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健康管理に「あきやすのすきやす」は大敵

福岡県民の健康面の状況として、平均寿命7)(男性:80.66年で全国25位 女性:87.14年で全国21位)や食塩摂取量2)(男性:10.9g/日 女性:9.3g/日)、野菜摂取量2)(男性:297.3g 女性:272.2g)は全国平均といえる数値です。東北地方などでは、昔から食塩摂取量が多かったため、脳卒中や心疾患による死亡率が高く、県を挙げて様々な対策が採られてきましたが、福岡県にはそのような突出した健康課題がなかったため、行政や県民の危機感が薄いという特徴があります。しかし、先ほど高血圧などの引き金となる肥満の人が増えているという話題に触れた通り、不安要素がない訳ではありません。今の状況に満足せず、生活習慣病を予防し、将来、大きな病気になるリスクを着実に減らしていくべきです。
また、福岡市をはじめ、福岡県内には若者の人口増加で活気のある地域もありますが、福岡県全体で見た場合、やはり他県同様に「高齢化」は確実に進行しつつあります(福岡県の高齢化率8):27.1% 2045年には35.2%になると予測)。人生を豊かに、何歳になっても病気をせず元気に過ごせるよう、生活習慣や食習慣を見直してみるといいかもしれません。
福岡県には、もつ鍋、水炊き、ラーメン、明太子、屋台グルメなどのおいしい地元グルメがたくさんありますが、おいしさのあまり、つい食べ過ぎてしまっていませんか。外食には、高血圧の原因となる塩分の多い料理が多いので注意が必要です。例えば、日本人の食事摂取基準(2015年)では、成人の達成したい食塩摂取の目標量は1日当たり「男性8g未満」、「女性7g未満」と設定しており、世界保健機関(WHO)は一般成人の食塩摂取量を「1日5g未満にすべき」としています。ところが、1杯のラーメンだけで約8gもの塩分が含まれています。つまり、生活習慣病予防の観点でいうと、ラーメンのスープは「飲み過ぎ注意」です。私は、いつも高血圧患者さんに対して「ラーメンのスープは飲まずに残すようにしましょう」と指導しています。ラーメンに限らず、福岡県内には安くておいしい食べ物の誘惑も多いですから、食事に含まれる塩分や食べる量を自分でうまくコントロールしながら、日々の食事を健康的に楽しんでいけたらいいですね。
生活習慣の改善や健康管理で大切なのは、“継続すること”です。「あきやすのすきやす」にならず、できることからコツコツ続けてみませんか。

参考

1)福岡市「Fukuoka Facts データでわかるイイトコ福岡」
2) 福岡県健康増進計画「いきいき健康ふくおか21(中間見直し 平成30年3月)」
3) 福岡県「県民健康づくり調査」
4) 日本肥満学会. 肥満症診療ガイドライン2016, p.23~27
5) 厚生労働省「厚生統計要覧(平成30年度)」
6) 厚生労働省「2019年2月18日 医師需給分科会資料」
7) 厚生労働省「平成27年都道府県別生命表の概況」
8) 内閣府「平成30年版高齢社会白書」

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