オムロン家庭用血圧計の歴史
オムロンの家庭用血圧計の開発…それは1960年代初旬に世界に先駆けて提唱した「健康工学(Health Engineering)」の考え方から始まりました。
健康工学とは、オムロンの創業者・立石一真が、当時の最新オートメーション工場のシステムから発想したものです。私たち人間の身体を、無数の自動制御系の組織工学的な集合体ととらえ、オートメーション技術を活用して健康管理と病気の診断治療をしようとする考え方です。
この独創的な理論をもとに1961年、中央研究所において健康医療機器の研究がスタートしました。以来、「企業は社会の公器である」という企業理念のもと、「測定技術をとおして健康に貢献する」ために、家庭用血圧計の開発に取り組んできました。

1973年、オムロン初の電子血圧計「マノメータ式手動血圧計(HEM-1)」が誕生。さらに日本高血圧学会が設立された1978年には、オムロン初のデジタル血圧計「家庭用デジタル血圧計(HEM-77)」を開発。
以後、1985年に測定原理の革新とされた「オシロメトリック式血圧計(HEM-400C、HEM-700C)」、1991年に世界初のファジィ技術を応用した「ファジィデジタル自動血圧計(HEM-706)」、2004年にユニバーサルデザインを導入した空気圧による自動巻きつけ技術搭載の血圧計「デジタル自動血圧計(HEM-1000)」など、その時代ごとの最先端の生体情報センシング技術とユーザビリティの考え方を導入した、数々の家庭用血圧計の開発にチャレンジしてきました。
現在でも、血圧測定をさらに身近にするために、「精度」と「使いやすさ」への追求を続け、カフの巻き方や測定姿勢をチェックしてお知らせする「正確測定サポート機能」や、最新通信技術を使い、スマートフォンのアプリに測定データを転送するサービスの開発など、さまざまなチャレンジを続けています。
グローバルシェアNo.1メーカーとして、常に「精度」と「使いやすさ」を追求し、日本のみならず世界各国において高い信頼を得ているオムロンの家庭用血圧計。その開発史の一端を、高血圧診療をめぐる時代背景とともに、歴史年表によってご紹介いたします。
オムロン家庭用血圧計関連年表
オムロンの動き |
高血圧診療をめぐる動き |
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1960年代まで |
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1896年 | イタリアのRiva Rocciが初めてカフ(腕帯)を用いて上腕を圧迫し、血圧を測定する方法を考案 | |||
1905年 | ロシアのNicolai Korotkaffが、カフ圧迫により動脈に生じる音を聴診器で聴取する血圧測定法を論文発表 | |||
1950年代末〜1960年代 | 日本でも高血圧と脳卒中などの関係を実証する調査が進展し、高血圧の治療効果が確認されたほか、また食塩過多が要因と判明 | |||
1961年 | 立石電機(オムロンの前身)・中央研究所にアイデア室を新設。 HE事業へ進出 |
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1964年 | 中央研究所・生体研究室において簡易血圧計の開発に取り組む | |||
1966年 | 国際高血圧学会(ISH)設立 | |||
1970年代:「健康工学」から初の血圧計誕生へ |
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1970年 | 日本では脳出血に変わり脳梗塞と心臓病の比率が増加 | |||
1973年 | 当社初の血圧計、マノメータ式手動血圧計(HEM-1) | ![]() |
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1974年 | (株)立石ライフサイエンス研究所設立(1990年に(株)オムロンライフサイエンス研究所に名称変更) | |||
1977年 | 米国合同委員会による世界初の高血圧治療ガイドライン | |||
1978年 | 当社初の家庭用デジタル血圧計(HEM-77) | ![]() |
1978年 | 日本高血圧学会設立 |
1980年代:測定法の革新 オシロメトリック式血圧計 |
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1980年代前半 | 高血圧の大規模介入試験が世界で実施 | |||
1981年 | 当社初の家庭用デジタル自動血圧計(HEM-88) | ![]() |
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1982年 | 初めて海外市場(ドイツ)へ参入 | |||
1983年 | WHOとISHが合同で軽症高血圧の管理ガイドラインを発表 | |||
1984年 | プリンタ付き血圧計(HEM-50P)測定した血圧値をプリントできる デジタル手動血圧計(HEM-439)業界で初めて1万円を切る低価格 |
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1985年 | 病院と家庭での血圧の差(今で言う「白衣高血圧など」)が海外で確認される | |||
1986年 | オシロメトリック式血圧計(HEM-400C/HEM-700C) | ![]() ▲HEM-700C |
1986年 | 東北大学大学院・今井潤教授による大迫研究が始まる |
1988年 | 指式血圧計(HEM-802F)指で血圧測定をおこなう。グッドデザイン福祉商品賞受賞 | 1988年 | 「夜間高血圧」が発見される | |
1990年代:世界初ファジィ技術を応用した血圧計の開発 |
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1990年 | アメリカでOEMを提供していたマーシャル社を買収 ドイツと香港(1991年)に拠点を設立 |
1990年 | 厚生省と日本医師会が初の診療指針「高血圧治療の手引き」を発表 | |
1991年 | 世界初となるファジィ技術を用いた自動 加圧設定機能搭載のファジィデジタル自動血圧計(HEM-706) |
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1992年 | 等速減圧制御機能搭載の血圧計(HEM-707) 開発目標にした「優・静・速」をすべて達成 手首式自動血圧計(HEM-601) 手首測定タイプの第1号機 |
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1996年 | 大迫研究が米国合同委員会のガイドラインに採用 (以後1999年にWHO、2007年に欧州高血圧学会、2015年に台湾高血圧学会のガイドラインにエビデンスして採用される) |
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1999年 | 世界最速測定技術搭載の血圧計(HEM-757)従来40秒程度かかった測定時間を、 加圧時から測定を開始する方法により21〜22秒に短縮 測定時間が短いほど圧迫による痛みなどが減る |
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2000年代:家庭測定の普及、そして販売台数1億台へ |
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2000年 | 世界最小の小型手首式血圧計(HEM-630) | ![]() |
2000年 | 日本高血圧学会による初の「高血圧治療ガイドライン」発表 |
2001年 | 新型腕帯のフィットカフ採用の血圧計(HEM-770A) | ![]() |
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2002年 | 日本初 手首高さガイド機能搭載の手首式血圧計(HEM-637IT) | ![]() |
2002年 | 東北大学を中心に国内の多くの医療機関が参加した「HOMED-BP研究(家庭血圧を指標として高血圧患者の長期予後を観察する研究)」の本試験が開始される |
2003年 | オムロンの家庭用血圧計の販売台数が5000万台を超える | 2003年 | 日本高血圧学会「家庭血圧測定条件設定の指針」を発表。 家庭での血圧測定方法や基準を具体的に示す | |
2004年 | 当社独自の空気圧による自動巻きつけ技術搭載の血圧計(HEM-1000) | ![]() |
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2006年 | 業界初・早期高血圧確認機能搭載の血圧計(HEM-7020) | ![]() |
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2008年 | 小型・軽量化モデルの血圧計(HEM-7301-IT) | ![]() |
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太陽光エネルギーで駆動するソーラー血圧計(HEM-SOLAR)を開発 | ![]() |
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2009年 | 家庭用血圧計の累計販売台数が1億台を超える | 2009年 | 日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2009」において、家庭での降圧目標を「125/80mmHg未満(高齢者は135/85mmHg未満)」と定める | |
2010年 | 「カフぴったり巻きチェック」機能搭載の自動血圧計(HEM-7430) カフが正しく巻けているかどうかをお知らせ |
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USB通信機能を搭載し、パソコンでのデータ管理が可能な自動血圧計(HEM-7250-IT) | ![]() |
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2012年 | 3G通信機能搭載の自動血圧計(HEM-7251G) | ![]() |
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NFC通信機能を搭載し、薄型・軽量・静音タイプの手首式血圧計(HEM-6310F) | ![]() |
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2013年 | 正しく測定できたかどうかを文字と光で知らせる上腕式血圧計(HEM-7500F) | ![]() |
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「フィットカフ」に巻き方による測定誤差を軽減する新技術を追加した上腕式血圧計(HEM-7320F) | ![]() |
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2014年 | 日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2014」において、診察室血圧と家庭血圧に軟差がある場合、家庭血圧による高血圧診断を優先すると規定 | |||
2015年 | バックライト機能付きブラック液晶画面の上腕式血圧計(HEM-7280C) | ![]() |
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2016年 | Bluetooth通信機能搭載、「OMRON connect」対応の上腕式血圧計(HEM-7511T) | ![]() |
※このコラムは、掲載日現在の内容となります。掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。