健康経営

目的

従業員の健康から社会の健康へ

オムロングループでは、企業理念の実践を通じて社会的課題の解決を目指しており、そのためには、経営の基盤となる従業員一人ひとりの健康が重要だと考えています。
オムロンヘルスケアでは「Going for ZERO〜予防医療で世界を健康に」を長期ビジョンとして掲げています。従業員一人ひとりが健康経営の取り組みに積極的に参画して自らビジョンを体現し、それを社会に示していくことで、健康寿命の延伸、予防医療の実践という健康文化の創造を実現していきます。

オムロン ヘルスケア株式会社
代表取締役社長

岡田 歩

オムロン健康経営宣言

オムロン ヘルスケア
健康経営方針

私たちは、心身ともに健康で、好奇心に満ち溢れ、ワーク・ライフ・バランスのとれた毎日の中で、失敗を恐れず元気にチャレンジし続け、お客様が笑顔になる商品やサービスを創造します。

体制

オムロンヘルスケアでは、毎年の年度目標や計画を策定し、経営の意思決定をおこなう経営戦略会議において承認を得ています。この計画にもとづいて健康経営推進グループ、健康保険組合や労働組合、産業保健スタッフ、産業医等の関係部門が連携し、全社での活動を推進しています。

オムロン ヘルスケア健康経営実行体制図

健康経営課題と戦略マップ

健康経営の推進にあたり、下記を重点課題と定め、解決するための施策や目標達成に必要な指標を示した戦略マップを策定しています。これにもとづき、施策の取り組み状況や意識・行動変容の定量的な把握と、各指標の達成状況を確認・検証し健康経営を推進しています。

重点課題
戦略マップ

課題解決のための
主な取り組みと成果

自律的行動変容を通じて健康的な生活習慣を身につけることを目指し、下記のような健康増進・重症化予防施策を行っています。

1. ゼロイベントの実現

2017年度より、循環器事業のビジョンである「脳・心血管疾患イベントの発症ゼロ(ゼロイベント)」の実現に向け、従業員自身が血圧を測定・自己管理し、適正な血圧コントロールを目指す取り組みを進めています。毎年、「毎月1日は家庭血圧測定の日」の設定や、測定推進期間の企画を通じて、継続的な測定の重要性を呼びかけています。その結果、2024年度の社員の血圧測定率は45.2%に達しました。
日々の測定を継続することは、仮面高血圧の早期発見にもつながります。実際に、測定者の年齢が上がるにつれ仮面高血圧の割合も増加する傾向が確認されており、こうしたリスクを抱えた従業員には、医療職による通院・服薬状況の確認など、迅速なフォローを実施しています。
今後も測定の継続を促しながら、従業員一人ひとりが家庭血圧測定の重要性を実感し、適正な血圧コントロールに向けた行動変容につなげていきます。

健診血圧×家庭血圧 リスク分類の変移
  • 仮面高血圧:診察室血圧が正常でも家庭血圧が高い状態
  • 健診時正常値=140/90㎜Hg未満、家庭血圧正常値=135/85㎜Hg未満として算出

2. フィジカルヘルス

2-1. 禁煙推進

2008年より、従業員の喫煙率ゼロを目指し、受動喫煙防止と禁煙推進に取り組んできました。2019年度までに敷地内・就業時間内禁煙を実現しています。
喫煙者による「卒煙チャレンジ」を中心に、会社全体で卒煙を応援する風土づくりを進めるとともに、就業規則の整備や「地域の小学校への出前授業」など、継続的な取り組みを実施。その結果、禁煙意識は年々高まり、2024年度には喫煙率が5.2%まで低下しました。

卒煙チャレンジ

2019年度から実施している卒煙サポートプログラムです。喫煙者全員を対象とした医療職による個別面談や、チームで取り組む「チーム制卒煙企画」など、多様なサポートを提供しています。卒煙した従業員には表彰や特典を用意し、モチベーション維持を図っています。また、非喫煙者や卒煙経験者もサポーターとして参加し、会社全体で卒煙を応援する風土を醸成しています。

地域の小学校への出前授業

2022年度より、地域の小学校を対象に「たばこの怖さを知ろう」をテーマとした出前授業を実施しています。たばこの煙のない社会を実現するためには、新たな喫煙者を生まない「入煙防止」の取り組みが重要です。
未来を見据え、子どもたちに正しい知識を伝え、将来たばこを吸わない大人になってほしいという想いを込めています。この活動は事業ミッションである「地球上の一人ひとりの健康ですこやかな生活への貢献」に直結しており、子どもたちの健康を守る活動と同時に、社内の喫煙者にも禁煙の意識を高める相乗効果を期待しています。

喫煙率

2-2. 女性の健康推進

2023年度に女性従業員を対象とした「女性の健康」に関するアンケート(回答率46%)を実施したところ、回答者の70%が「女性特有の健康課題により職場で困った経験がある」と回答しました。
この結果を踏まえ、女性自身のセルフケア知識の向上と、不調を相談しやすい、理解ある職場風土づくりの両面から、女性が心身ともに健康で長く働ける環境の実現を目指しています。

女性自身のセルフケア知識の向上

2021年度から国内主要拠点で婦人科検診を実施しており、2023年度の乳がん検診受診率は65%(※)でした。
さらに2024年度には、経済産業省の「フェムテックを活用した働く女性の就業継続支援」実証事業の一環として、女性従業員を対象に更年期や生理・PMSに対応するオンライン診療サービスやセルフケア・カウンセリングアプリを提供。51名が参加し、実証前後のアンケートでは、自身の健康課題に対する適切な情報選択・ケアへの意識があると答えた割合が+12%改善されました。

人間ドック等での受診は除く

理解ある職場風土づくり

2024年度には、全従業員を対象に「性別特有の健康課題に関するヘルスリテラシー向上セミナー」を開催(参加者144名)。
セミナー後のアンケートでは、「男女双方の健康課題を踏まえたコミュニケーションをとりたい」といった声が寄せられ、「女性の健康課題への理解が深まった」と回答した割合は79%に達しました。
また、女性の健康週間やメノポーズ週間には、社内掲示や社員食堂での関連メニュー提供を実施し、会社として女性の健康課題に積極的に取り組む姿勢を発信しています。

2-3. ウォーキング推進の取り組み

2009年度から、全従業員に活動量計を配布し、歩数測定を推進しています。毎年、部門対抗の歩数競争や、全員の合計歩数でバーチャル世界一周を目指す企画など、楽しみながら取り組めるウォーキングイベントを実施してきました。
2021年度以降は、「楽しみながら運動を習慣化する」をテーマに、従業員同士の交流を促進する企画を展開し、運動へのモチベーション向上を図っています。
2024年度の歩数対抗戦では、従業員の66%が参加。期間中は啓発用のぼりの設置や、正しいウォーキング知識、歩くことが好きな従業員からのメッセージを発信し、参加者の平均歩数は5,892歩/日となりました。さらに、海外駐在メンバーも参加して情報交換を行うなど、国内だけでなく海外拠点でもウォーキング活動が広がり、参加エリアと人数が年々拡大しています。

2-4. 食生活へのサポート

社員食堂では、従業員の高血圧予防と適正な血圧コントロールを目的に、減塩・高カリウムメニュー「オムゼロランチ(※)」を提供しています。メニューの検討には管理栄養士の資格を持つ社員が携わり、毎月、健康促進メニューの企画や栄養情報の発信を行っています。
さらに2022年度からは社員食堂のない拠点においても、手軽に食べられるヘルシー食品を提供するなど、従業員の食生活をサポートしています。

1食あたり塩分3.5g以下、余分な塩分の排出を促すカリウムを豊富に含むメニュー

3. メンタルヘルス

3-1. メンタルヘルス

ストレスチェックの結果をもとに、組織診断や職場ヒアリングを実施し、産業保健スタッフなどの支援を通じて職場環境の改善に取り組んでいます。心身ともに健康で働ける職場づくりを目指し、継続的な活動を展開しています。
また、メンタルヘルス教育として、社員がストレスに適切に対処できるよう、Eラーニングを活用したセルフケア研修や、管理監督者向けのラインケア研修を実施しています。2024年度の受講率は、セルフケア研修が96.9%、ラインケア研修が99.1%と非常に高い水準を維持しています。

3-2. エンゲージメントの向上

リモートワークや副業、裁量性労働、ホームオフィス制度など、従業員が多様な働き方を選択できる制度を整備しています。これにより、生産性の向上と時間の創出を図り、ワーク・ライフ・バランスの充実を支援しています。
2022年度からは、長期ビジョンの実現に向けた社員の行動指針として、人財ポリシー「CONNECT ~繋がることで、より早く、より強く~」を導入しました。部門内での対話の場を設け、従業員自ら「より良い職場とは何か」を考え、メンバーとの信頼関係を築きながら連携していくことを目指しています。
24年度には、職場の信頼状態を可視化するサーベイを実施し、回答率は97%に達しました。これは、従業員が自ら職場環境の改善に関心を持ち、積極的に関与していることを示しています。サーベイ結果は全員に開示され、全社的な調査に加え、各部門が自らの課題を発見し、信頼度向上に向けた取り組みに活用しています。

4. 「Boost 5」の推進

オムロングループでは健康増進を応援するための具体的な指標として運動、睡眠、メンタルヘルス、食事、禁煙の5項目を「Boost 5」として定めています。Boost 5の達成項目が多いほど、従業員のパフォーマンスが高まる傾向が見られることから、各指標に目標を設定し、達成者数の増加および3項目以上の達成者率の向上を目指しています。
これらの取り組みにより、達成者率は毎年着実に改善しています。
目標:3項目以上の達成者率 前年度比改善

【Boost 5の推移】
Boost 5 3項目以上の達成者率
健康づくりを応援する5つの指標
項目 2022年度 2023年度 2024年度
食事(BMI) 66.9% 68.4% 66.9%
睡眠(睡眠時間) 53.1% 49.6% 54.0%
運動習慣 44.9% 45.1% 41.5%
タバコ 93.6% 94.9% 94.8%
メンタルヘルス 76.8% 81.0% 79.8%

5. 取り組みの成果

これらの施策の活用度とパフォーマンス、ワークエンゲージメントの相関関係について分析したところ、施策を活用している従業員ほど高パフォーマンスや高ワークエンゲージメントの割合が多い傾向が示されました。

健康増進策の活用度とパフォーマンス及びワークエンゲージメントとの関連

労働安全衛生・
リスクマネジメント

従業員の安全と健康を確保し、働きやすい職場を提供するために、労働安全衛生活動を推進しています。
主要拠点では、安全衛生委員会を毎月開催し、会社と従業員が一体となって労働災害の防止に取り組んでいます。職場巡回では、現場目線で危険源の指摘・改善を行い、委員同士が主体的に意見を交わすことで、実効性のある対策を講じています。
2023年には、近年増加傾向にある転倒災害への対策として、館内の通行ルールを新たに定めるとともに、手すり使用を促す掲示を設置するなど、具体的な改善策を実施しました。
また、委員会では毎月、保健師によるヘルスケア情報の講話を行い、従業員のヘルスリテラシー向上にも貢献しています。
国内の生産拠点では、ISO 45001(労働安全衛生マネジメントシステム)を取得しており、機械安全や化学物質の新規導入時にはリスクアセスメントを実施。ヒヤリハットの報告や労災発生時にも迅速に対応し、年1回のリスクアセスメント見直しと管理策の有効性評価を通じて、継続的な安全性向上を図っています。

廊下の通行ルールを示す床の表示

手すりを持つことを促す掲示

【労働安全衛生に関する指標】
項目 2022年 2023年 2024年
労働災害件数 0件 0件 0件
死亡災害件数 0件 0件 0件

社員の業務災害(休業災害)の件数

健康経営各種指標の実績値

戦略マップに沿って各種指標を見える化し、前年度比改善(項目により維持)を目指して取り組んでいます。

健康施策の取り組みに関する指標

(健康施策の取り組み状況に関する指標・従業員などの意識変容・行動変容に関する指標)

項目 2022年度 2023年度 2024年度
定期健康診断受診率 100.0% 100.0% 100.0%
ストレスチェック受検率 95.9% 96.0% 96.9%
健康プロジェクト従業員参加率*1 94.6% 97.1% 96.6%
健康施策の満足度 - - 86.0%
精密検査受診率 82.4% 92.2% 85.8%
特定保健指導参加率(初回面談実施者) 96.4% 93.3% 準備中
特定保健指導完走率 92.9% 92.2% 準備中
セルフケア教育受講率 98.7% 96.2% 96.9%
ラインケア教育受講率 100% 95.8% 99.1%
年間総実労働時間数 1,884時間 1,920時間 1,920時間
高ストレス者率 5.5% 5.4% 6.5%
健康経営の浸透度*2 95.0% 96.5% 95.8%
自律的健康増進行動の定着度*3 67.1% 62.6% 59.8%
生活習慣病ハイリスク者率*4 2.3% 1.7% 準備中
上司・同僚からのサポート度(偏差値) 50.6 52.2 52.4
ワークエンゲージメント(偏差値)*5 54.8 54.9 54.5
  • *1オムロン ゼロイベントチャレンジPJ参加同意率
  • *2自社の健康経営の取り組みを認知していると回答した従業員の割合
  • *3各種健康施策から得た知識を仕事や健康増進に活用している従業員の割合
  • *4空腹時血糖126mg/dl以上またはHbA1c6.5%以上or血圧160または100mmHg以上or中性脂肪500mg/dl以上またはLDL180mg/dl以上またはHDL30mg/dl未満で治療を受けてない群
  • *5ユトレヒト・ワーク・エンゲージメント尺度と相関の高い8項目を用いた独自の調査票で測定。実績値は偏差値で算出(一般平均50、高いほど良好な状態を示す)(回答数629名 回答率97.8%)

健康関連の最終的な目標指標

項目 2022年度 2023年度 2024年度
プレゼンティーイズム*6 69.45点 65.7点*7 63.9点
アブセンティーイズム*8 98.8% 99.2% 98.8%
高ワークエンゲージメント者率*9 22.0% 22.6% 22.7%
  • *6WHO-HPQにて測定。実績値は絶対的プレゼンティーズム(0~100点)の全従業員平均(回答数629名 回答率97.8%)
  • *72023年度は選択肢変更により、数値は参考値とする
  • *8「出勤できることによるパフォーマンス発揮の伸びしろ」ととらえ、健康問題による1ヶ月以上の欠勤・休業がなかった社員の割合(%)と定義
  • *9「ワークエンゲージメント」の偏差値が60以上の回答者の割合。12%以上の場合は割合が大きい

外部評価

「健康経営優良法人2025(ホワイト500)」に認定

オムロン ヘルスケア株式会社は、経済産業省が日本健康会議と共同で、保険者と連携して優良な健康経営を実践している大規模法人を顕彰する「健康経営優良法人ホワイト500」に、昨年に引き続き9年連続で認定されました。

健康経営優良法人2025(ホワイト500) ロゴ

スポーツエールカンパニーに認定

スポーツ庁が、運動不足である働き盛り世代の健康増進のためにスポーツの実施に向けた積極的な取り組みを行っている企業を「スポーツエールカンパニー」(英語名称:Sports Yell Company)として認定する制度において、2018年から7回連続で認定されました。また、7回以上連続で認定を受けた企業に付与される「Silver(シルバー)」認定となりました。

スポーツエールカンパニー ロゴ

きょうと健康づくり実践企業に認証

京都市が京都府に所在地がある事業所を対象に定める「きょうと健康づくり実践企業認証制度」において、2016年からきょうと健康づくり実践企業として認証されています。
2017年は、表彰企業として特別賞を授与しています。

コンソーシアム等への
参画

健康経営推進団体への参画

健康経営を推進する「Kenko企業会」「禁煙推進企業コンソーシアム」に参画しています。

「Kenko企業会」「禁煙推進企業コンソーシアム」 ロゴ

Kenko企業会

Kenko企業会は人を資本とする「健康経営」に、経営トップが主体的に取り組む企業が集い、2015年6月に発足しました。目的は相互にベンチマーキングすることで、ベストプラクティスを見つけ、施策のレベルアップを図ることです。共通の健康増進テーマに取り組み、意見交換を行い、互いに学び合うことを主軸として活動しています。

禁煙推進企業コンソーシアム

2022年8月現在、37の企業・団体が参加するコンソーシアムです。公益社団法人 東京都医師会および公益財団法人 日本対がん協会と連携のもと、「社内禁煙の推進」に特化し、2018年3月に閣議決定された「がん対策推進基本計画(第3期)」で目標としている2022年度の喫煙率12%を各企業・団体で達成することを共通の目的としています。各企業の禁煙推進の「情報」と「ノウハウ」を集結し、さらなる卒煙推進に活用することはもちろん、広く社会全体の健康づくりと健康寿命の延伸に貢献しています。