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血圧を語るゼロイベント
高血圧ドクターインタビュー

第八回 山口編山口大学大学院 医学系研究科
器官病態内科学 教授 矢野雅文先生

自分の健康への「漠然とした自信」を「確固たる自信」に変える

誇り高く、郷土愛に溢れる県民性

山口県は明治維新胎動の地です。県民は、日本建国に貢献したという「自負」と、これまでに総理大臣を8人も輩出しているということから、郷土に対する「誇り」を持っています。特に高齢の方は、「生まれも育ちも山口県」という方が多く、郷土に強い愛着がある人も多いようです。

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食生活に「こだわり」と「自信」を持つ
山口県民

山口県は三方を海に囲まれているため、海の幸が豊富に採れます。山口県民は、小さい頃から海産物中心の食事をしている方が多いですね。私は生粋の山口県民ではなく、大学入学を機に山口へ越して来たのですが、その際、魚がとても新鮮で美味しく、驚いたのを今でも覚えています。

山口県は都会ほど街に飲食店がたくさんあるわけではありません。基本的に「地産地消」で、「小さな頃から地元のものを食べて育つ」という意識を持っています。そのためか、「私は魚中心の食事を摂っているので、食生活には何の問題もない」と思っていらっしゃる方が多いように感じます。食生活に対しての「こだわり」や「自信」があるのでしょう。
このような背景があるためか、高血圧の患者さんに対して食事指導を行うとき、少し苦労することが多いですね。「減塩」や「野菜多めの食事」など、普段の食事に気をつけるようお話しますが、患者さんは自分の食生活に自信があるゆえに、「今の食生活は変えられない」「変えるところはない」と思っている方も多いのです。繰り返し、根気強く説明していくようにしていますが、自信のある「慣れ親しんだ食習慣」を変えてもらうというのは、なかなか難しいものです。

家で過ごす時間を大切にする山口県民

都道府県ランキングを見ると、山口県は興味深い項目で上位です。例えば、「一日当たりの仕事時間(短い順)」で全国3位、「平均帰宅時間(早い順)」で全国7位、「1日当たりのテレビ・ラジオ・新聞・雑誌の時間」で全国2位です。山口県民は、まっすぐ帰宅し、家での時間や家族と過ごす時間を大切にする県民性なのでしょう。都会のように、街に店が溢れ、娯楽がたくさんあるというわけではないので、早く帰宅するしかないのかもしれませんが(笑)。「仕事帰りに1杯飲んでから帰る」というような習慣は、あまりないですね。
山口県は交通の便が悪く、通勤も普段の移動も、どうしても車移動になってしまいます。そういった県民の活動パターンに対応してか、山口県には車で気軽に寄りやすいコンビニエンスストアが至るところにあります。ついつい、コンビニエンスストアに寄ってしまうという人も多いのではないでしょうか。ランキングでも、「弁当消費量(支出額)」が全国7位(2016年)と多い上に、スナック菓子やビスケットの消費量も多いようです。弁当やお菓子を買って、家に持ち帰ってゆっくり食べるという人が多いのでしょうね。
とは言うものの、基本的に、外食は少なく、家で料理を作るなりお弁当を買ってくるなりして、「ご飯は家でゆっくり食べる」という習慣がありますので、山口県の食生活は比較的しっかりしているのではないでしょうか。実際に、「BMIの平均値」を見てもそこまで高くなく(【BMIの平均値ランキング】男性:23.9で全国27位、女性:22.1で全国41位)、肥満の方は少ないように思います。

※身長と体重のバランスから肥満度を判定する数値。BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)の数値で表す。
 BMI 25以上は「肥満」と定義されている。

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自己判断でなく、
しっかり健診を受けましょう

先ほどお話ししたように、多くの山口県民は、自分の生活習慣(特に食習慣)に「こだわり」や「自信」を持っています。そのため、なかなか健診に対して前向きにはなれないようです。特定健診の受診率では、全国ワースト3に入っています(山口県の特定健診受診率:42%)。

「私は、健康に悪い生活を送っていないから大丈夫」という、自分の健康に対して「漠然とした自信」があるのでしょう。しかし、その「自信」が命取りになることもあります。もし健診を受けていれば、病気の「予備軍」の段階で対処できたはずが、健診を受けなかったことで、病気が知らぬ間に進行してしまい、重症化して手遅れになってしまうのです。「高血圧」はその典型で、血圧が高いまま放置しておくと、脳卒中や心筋梗塞などの重大な疾患を引き起こす原因となります。ひどい状態になってからでは治療に難渋しますし、治療しても完全には元の状態に戻れず、入退院を繰り返すようになってしまいます。山口は公共交通の便が悪いということも重なって、病院へのアクセスが悪い地域では、状態がかなり悪化してしまい、ドクターヘリで病院に運ばれてくるという方もいます。「こうなる前に、もう少し早く手当てしていたら」と思わずにはいられません。病気が進行する前に気づいて、治療を開始することが非常に大事です。
山口県では高齢化が進んでおり、高齢化率(65歳以上人口比率)は全国で4番目に高い状況です(高齢化率:32.07%)。今も、山口県の死亡原因の約6割を生活習慣病が占めている状況ですが(図1)、今後、高齢化が進んでいくにつれて、ますます生活習慣病が原因で命を落とす人は増えていくでしょう。
みなさんには、「病気になる前に予防する」という、「予防」の意識を持っていただきたいと思います。その「予防」のために必要なのが、毎年の健診受診なのです。「ファストフードはあまり食べないから大丈夫」、「魚を良く食べるから大丈夫」という、自己判断は控えて、毎年の健診でしっかり専門家にチェックしてもらうことが大切です。

【図1】死亡順位(10大死因の死亡総数に占める割合)

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「日常のひと工夫」から始めてみましょう

健康のために、「塩分を控える」、「野菜を多めに摂る」、「運動をする」など、日々の生活の中で気をつけるべきことはたくさんあります。しかし、「やったほうがいい」と頭では分かっていても、なかなか実生活の中では行動に移せないものです。はじめは「日常のひと工夫」くらいのことで構わないのです。山口県は魚が美味しいので、普段の食卓に刺身が並ぶことが多くあります。刺身には甘くて濃厚な刺身醤油が欠かせませんが、みなさんその醤油を付け過ぎていませんか? 山口県の刺身醤油の美味しさは格別で、付ければ付けるだけご飯が進む、最高の味です。刺身の両面にべったり付けて食べるという方も多いと思います。それを、「刺身の醤油は片面だけ」というように、今日から変えてみましょう。
もし、食生活を改善するのが難しい場合には、その代わりに、「適度な運動」を心掛けてみましょう。山口県は自然が豊かで、自然を生かした公園や名所などが至る所にあります。都会にはない恵まれた環境だと思います。気持ちまでリフレッシュできるような場所で、ハイキングなど軽く汗を流してみるのもいいですね。休みの日に、家族や友人と一緒に出掛けてみてはいかがでしょうか。
このように、健康のためには、どんなに小さなことであっても少しずつ続けていくことが大切です。自分に合った形で「山口県の土地柄を活かした健康法」を見つけて、少しずつ実践していきましょう。そして、「漠然とした自信」を「確固たる自信」に変えていけたらいいですね。

普段の食卓に刺身が並ぶことが多くあります。刺身には甘くて濃厚な刺身醤油が欠かせませんが、みなさんその醤油を付け過ぎていませんか? 山口県の刺身醤油の美味しさは格別で、付ければ付けるだけご飯が進む、最高の味です。刺身の両面にべったり付けて食べるという方も多いと思います。それを、「刺身の醤油は片面だけ」というように、今日から変えてみましょう。
もし、食生活を改善するのが難しい場合には、その代わりに、「適度な運動」を心掛けてみましょう。山口県は自然が豊かで、自然を生かした公園や名所などが至る所にあります。都会にはない恵まれた環境だと思います。気持ちまでリフレッシュできるような場所で、ハイキングなど軽く汗を流してみるのもいいですね。休みの日に、家族や友人と一緒に出掛けてみてはいかがでしょうか。

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このように、健康のためには、どんなに小さなことであっても少しずつ続けていくことが大切です。自分に合った形で「山口県の土地柄を活かした健康法」を見つけて、少しずつ実践していきましょう。そして、「漠然とした自信」を「確固たる自信」に変えていけたらいいですね。

参考

厚生労働省「国民生活基礎調査」
厚生労働省「人口動態調査」
厚生労働省「患者調査」
厚生労働省「特定健康診査・特定保健指導・メタボリックシンドロームの状況」
総務省統計局「家計調査」
山口県「保健統計年報」
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