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2015.11.10

vol.149 歯周病は糖尿病や心筋梗塞にも関係しているってホント?

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Vol.149 歯周病は糖尿病や心筋梗塞にも関係しているってホント?

歯周病は、歯垢が歯に付着したりしてそこに歯周病菌が棲みつき、歯肉に炎症を起こすことで始まってしまいます。そして炎症が歯肉だけにとどまらずに進行すると、歯が抜け落ちてしまったりするだけでなく、全身の病気に結びついてしまうと考えられています。では、歯周病にかからないためにはどうしたらいいのでしょうか。歯周病の対策で、重要なポイントをお伝えします。

今、歯科医が注目する歯の磨き方「つまようじ法」って?

よく「日本人の8割が歯周病」といわれます。しかし実は、8割というのは診査された歯のすべてが「健全」とされた以外をすべてとらえた場合の数字。つまり、少しでも歯石がついていると「健全」とみなされないため、8割という数字が躍ってしまっているのです。
実際には歯周疾患の有病率は「歯周ポケットを有する人の割合」で示されます。この割合は年齢が上がるにつれて高くなる傾向にあり、前期高齢者で53%、後期高齢者で62%となっています※。

歯周病の怖いところは、自覚症状がほとんどない点です。また、のちに詳しく述べますが、女性がかかりやすいという点にも注意が必要です。
歯肉だけに炎症が起こっている状態が「歯肉炎」、さらに炎症が歯周組織にまで及ぶと「歯周炎」になり、これらを合わせて歯周病と呼んでいます。歯周病が進行してしまうと、歯を支える歯槽骨が破壊され、ついには歯が抜け落ちてしまいます。歯を失う二大原因となっているのが歯周病とむし歯なのです。

歯周病を食い止めるのに一番必要なことは、口腔内を清潔に保つこと。では、毎日歯を磨いていればいいのでしょうか。実は、歯の表面を歯ブラシで上下にこするだけでは歯周病対策には不十分です。
健康な状態では、歯と歯肉の境目にある歯肉溝は1~2mm程度の深さです。しかし、歯周炎があると、この溝がポケットのように深くなってしまいます。これを防ぐために一番重要なのが、歯肉を十分にブラッシングすること。ブラッシングによるマッサージ効果で、歯肉の細胞を活性化する必要があるのです。

歯の磨き方には多くの方法がありますが、主に3つの磨き方がよく知られています。
歯に90度の角度で歯ブラシを当てるのが「スクラッビング法」です。歯に45度の角度で歯ブラシを当てる「バス法」は、歯と歯肉の間にある歯周ポケットに毛先を入れることができる磨き方です。上下の歯を軽くかみ合わせ、90度の角度で歯ブラシを当てて、円を描くように前後に歯ブラシを移動させながら上下の歯を同時に磨いていく「フォーンズ法」は、磨き方が簡単なため、子どもや高齢者でも効率よく磨ける方法です。
一昔前には、歯茎から歯先に向けて歯ブラシを回転させるように動かす「ローリング法」が注目されました。しかし、歯垢除去効果にあまり優れていないため、最近では歯肉のマッサージのために併用を勧める歯科医が多いようです。
ほかに歯ブラシの動かし方によって「縦磨き」「横磨き」などがあり、毎日何げなく歯磨きを行っていても、これらを多少アレンジしながら磨いていることと思います。

重要なのは、これらの磨き方で不足しがちとなる「歯と歯の間を磨く」ことです。
そもそも「歯周病は歯間から始まる」といわれています。歯間の歯肉の幅は2~7mm程度あり、さまざまな研究の結果、歯ブラシのマッサージ効果は歯ブラシが接触した部分に限定されるということも明らかにされています。つまり、バス法などによって歯周ポケットに対応するのと同様に、歯間に直接歯ブラシを当てて「歯間を磨くこと」が歯周病対策には必須なのです。それを確実にしてくれるのが「つまようじ法」という磨き方です。

つまようじ法は、上の歯に対しては90度よりわずかに下向きに、下の歯に対しては90度よりわずかに上向きにして、歯と歯茎の境目に歯ブラシを当てます。そして毛先を歯の先端に向けて滑らすように動かします。このときに毛先が数本、歯間に入るようにするのがポイントです。
歯ブラシ1本で歯の表面と歯間を磨くことができるのと同時に、歯茎をマッサージすることができるため歯肉炎の予防に効果的な磨き方です。ただし、むし歯予防にはほかの磨き方を併用するほうが、さらに効果を上げられると考えられます。

つまようじ法には、毛の密度があまり高くない歯ブラシが向いています。また、毛先が長い歯ブラシの方が、効果があると考えられます。この磨き方をやり始めると、歯茎から出血する場合があります。しかしそれは、歯茎に十分な刺激が与えられている証拠。気にせずに続けることで、出血もしなくなります。気になる場合には、最初は毛先の丸い歯ブラシを選ぶのも一つの方法です。

※ e-ヘルスネット(厚生労働省。一般社団法人 日本口腔衛生学会 編 平成23年歯科疾患実態調査報告などより)

電動歯ブラシや歯磨き剤を有効に活用して歯をケア

歯磨きで重要なことはブラッシングです。その点では、人間の手で磨くより電動歯ブラシの方が優れています。
歯科医の多くは「しっかり歯を磨こうとすると、5~10分かかる」といいます。しかし電動歯ブラシでは、歯磨きが2~3分ですみます。特にプラーク=歯垢の除去に関しては、手動よりも電動歯ブラシのほうが優れています。歯肉に対するマッサージ効果も、手動より電動歯ブラシのほうが高いことはいうまでもありません。
電動歯ブラシに標準で装着されている通常のブラシでは、歯並びの悪い箇所や隙間を磨きにくい場合があります。機種によっては、そういった箇所を磨くことのできる専用のブラシが用意されているタイプがあります。機種選びのときに念頭に置いておきましょう。

ただ、電動歯ブラシでは短時間で歯磨きが可能になるぶん、歯周病が始まるとされる歯と歯の間の歯肉に対して磨き方が不十分になるおそれがあります。そんな場合には、手動でつまようじ法を追加して行うといいでしょう。歯間の清掃が不足しているなら、デンタルフロスを併用すると歯のケアも万全です。

歯磨きで一番ありがちな失敗が、歯磨き剤を使って清涼感が得られると、そこで十分磨いたと思い込んで終了してしまうこと。大事なのは十分にブラッシングすることです。歯磨き剤をつけずに磨くことも試してみましょう。
嘔吐反射のある人のなかで、口の中に歯磨き剤の泡がたまってしまうと気分が悪くなり、反応してしまうケースがあります。そんな人は、最初に歯磨き剤を使用しないで歯ブラシだけで入念にブラッシングを行い、最後に歯磨き剤を使って短時間磨くという方法もあります。また、ほとんどの歯磨き剤は歯ブラシに水をつけずに使用すると、過剰な泡立ちを抑えることができますので、試してみてはいかがでしょうか。

ちなみに、最近の歯磨き剤の多くはフッ素が加えられています。歯周病対策の話ではありませんが、フッ素にはむし歯の原因となる菌の働きを抑制する効果があります。また、歯の再石灰化にも貢献します。そのためにはフッ素を歯にとどめておくことが重要ですが、歯を磨いたあとにすすぎすぎるとフッ素の効果は低下します。
夜の場合は、食事を終え、夜の水分補給を終えたあとに歯磨き剤を使って磨き、そのあとは何も食べたり飲んだりしないで寝てしまうことをお勧めします。朝食、昼食後に磨いたときも、歯磨き剤を使ったあとは30分以上、間食をしたり飲み物を飲んだりしないようにしましょう。
夜、歯を磨いた後のタバコは厳禁です。タバコに含まれているヤニが歯に付くと、歯垢が付着しやすくなります。また、ニコチンは血管を収縮させてしまうため歯肉の血液循環も悪化し、歯肉に栄養が届けられなくなってしまいます。そのほかタバコを吸うことで、免疫力を高める作用のあるビタミンCも破壊してしまいます。歯を磨いた後に限らず、歯周病対策のためには、禁煙が望ましいことはいうまでもありません。

なぜ女性が歯周病にかかりやすい?

人間の口の中には、500~700種類もの細菌が棲みついています。これは腸内細菌の種類とほとんど変わらない数です。
歯を磨かないで寝てしまうと、細菌は口の中で増殖します。翌朝、歯の表面や歯茎が粘ついたりすることがあると思いますが、それがプラークです。実は歯周病のもととなる菌は空気を嫌う菌、嫌気性グラム陰性菌です。空気が嫌いなため歯と歯肉の間、歯周ポケットに潜んでいて、プラークが口の中で発生すると歯周病菌は活動を活発化させます。そして歯周病菌が増殖して歯肉に触れると炎症を起こしてしまうのです。

女性の場合は、気をつけなければいけないことがあります。歯周病菌のなかには女性ホルモン、エストロゲンを栄養源にして増殖してしまう種類の菌があるからです。そのため女性ホルモンが大量に分泌される二つの時期には、歯周病に対する注意が必要となるのです。
一つ目の時期は思春期です。思春期には恋愛や人間関係、さらに受験勉強などのストレスが加わったりして、歯茎が赤く腫れたりする思春期性歯肉炎にかかりやすくなります。
二つ目の時期は妊娠・出産期です。女性ホルモンが大量に分泌されるため、妊婦は特に歯周病が進行しやすくなっています。さらに問題なのは、歯周病にかかっている妊婦は、歯周病でない妊婦に比べて、早産や低体重児出産のリスクが5~7倍高いという点です。歯周病の炎症のために酵素などが産生され、その酵素などが子宮を収縮させる作用があるため、早産や低体重児出産のリスクが生じてしまうのです。
産婦人科などと相談のうえ、歯科検診も同時に受診することをお勧めします。

歯周病とほかの病気との関係

歯周病が口の中だけにとどまらず、全身の健康に影響を及ぼしている明らかな例があります。歯周病と糖尿病との関連です。糖尿病にかかっている人は健康な人より約2倍も歯周病になりやすく、歯周病にかかっている人は糖尿病が悪化しやすいというのです。
糖尿病は血糖値が高くなる病気ですが、高血糖により血管が傷つけられもろくなってしまいます。歯肉には毛細血管が集まっており、この毛細血管ももろくなって炎症を起こします。また、糖尿病になると免疫力が低下してしまうため、歯周病菌の増殖も進行します。さらに、歯周病菌が免疫細胞を刺激すると、炎症性サイトカインという物質を作り出します。炎症性サイトカインは歯肉の毛細血管に入り込むと、インスリンの働きを阻害してしまうことも明らかにされています。
つまり、糖尿病を治療するには、歯周病の治療を同時に行わなければなりません。そのために日本糖尿病学会と日本歯周病学会は連携して、歯周病と糖尿病の両方に対する診療ガイドラインを策定して、治療効果を上げるようにしています。

認知症にかかっていない65歳以上の4425人を対象に、4年間の追跡調査を行った研究があります。その結果、歯がほとんどないのに入れ歯など義歯を使っていない人は、20本以上歯がある人の1.9倍も、認知症の発症リスクが高いということがわかりました※1。また、歯が19本以下の人は、20本以上の人に比べて要介護認定を受けるリスクが1.2倍高くなることも明らかにされています※2。
歯周病などによって歯が抜けてしまったのに、義歯を使用しないまま放置していると、認知症や要介護となるリスクが高まるということなのです。

また、歯周病にかかっている人が心筋梗塞や狭心症といった冠動脈性心疾患を発症するリスクは、歯周病でない人に比べて約25%も高いという研究結果があります。しかも歯周病にかかっている50歳未満の男性は、そうでない人に比べて約72%も冠動脈性心疾患にかかりやすいというのです。
また、動脈硬化や大動脈瘤を起こしている人を診査したところ、血管内部から歯周病菌が高い確率で見つかったという報告もあります。歯周病菌が増殖してしまうと、血管を通じて全身に広がりさまざまな病気を引き起こす原因の一つとなってしまうのです。

歯周病とメタボリックシンドロームの関連も指摘されています。BMI値が20未満の人が歯周病になる確率に比べて、BMI値が30以上の人が歯周病になる確率は8.6倍になるという調査があります。さらに、BMI値が25以上30未満の人でも3.4倍となっているなど、肥満になると歯周病になるリスクが高くなってしまうのです。

女性ホルモンのバランスが崩れる更年期も、歯周病にかかりやすいといわれています。さらに、更年期を過ぎると骨粗鬆症のリスクも高くなってきます。骨密度が低下することで起こる骨粗鬆症ですが、背骨や大腿骨がスカスカになって骨折しやすくなるだけでなく、歯を支える歯槽骨の骨密度が低下することで歯が抜けやすくなる心配があります。ただし、歯周病と骨粗鬆症の関連に関しては否定的な見解の専門家もいるため、まだ研究が進められている段階です。それでも念のため、更年期以降は専門医の診断を受けてみることをお勧めします。
これら以外にも、歯周病が肝疾患や呼吸器系疾患(誤嚥性肺炎など)、脂質異常症、関節リウマチといった病気に関わっていると指摘する専門家もいます。

このように、歯周病はさまざまな全身の疾患と結びついてしまう危険性があります。毎日の歯磨きだけでもその疾患を予防できる可能性があるとしたら、決して手を抜いてはいけません。自分独自の磨き方が本当に正しいのか。もう一度見つめ直し、これまで行ってきた磨き方と、違ったやり方を試してみるのもいいのではないでしょうか。

※1 Yamamoto et al. Psychosomatic Medicine, 2012

※2 Aida et al. Journal of American Geriatrics Society, 2012


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