脳・心血管疾患の発症ゼロへ

血圧ラボ 血圧基礎知識編血圧の基本

心房細動とは

心臓のつくりと働き

心臓が収縮と弛緩を繰り返すことを拍動といいます。規則正しく拍動を続けることで、肺から送られてきた血液を全身に循環させ、酸素と栄養を全身に行き渡らせると同時に、各臓器から排出された二酸化炭素や老廃物を回収するポンプのような働きをしています。

リズミカルな拍動は心臓内で作り出される微弱な電気信号によってコントロールされています。健康な成人の場合、安静時の拍動は1分間に50~100回程度。1日あたり約10万回拍動します。

心臓の内部は4つの部屋に分かれており、上の2つの部屋を心房、下の2つを心室といいます。右心房と左心房、右心室と左心室の間は、それぞれ中隔と呼ばれる筋肉性の壁で仕切られ、心房と心室の間にはドアの役割を果たす弁があります。

全身に酸素を送り届けたあとの血液は静脈を介して右心房から右心室へ戻り、肺動脈を通って肺へ送られます。肺で酸素を受け取った血液は、左心房から左心室に戻り、大動脈を通って全身へ送り出されます。

心房細動とは?

心臓を一定のリズムで動かすための電気信号が何らかの理由で異常をきたし、脈が乱れて不規則になる状態を不整脈といいます。心房細動は不整脈の一種で、心房が小刻みに震えるようにけいれんし、心臓がうまく働かなくなる疾患です。

主な原因は、左側の心房につながる肺静脈から発生する異常な電気興奮と考えられています。心房が異常な興奮をして、心房の拍動数が1分間に300〜500回以上にもおよびます。その際、心室への刺激の伝わり方もバラバラで、1分間に100~150回と脈が速くなることもあります。
心房細動の患者は、高齢化に伴って増加傾向にあります。検診で診断される患者数だけでも約80万人いると推計され、潜在的な患者も含めると100万人を超えるとされています。

【心房細動の心電図と電気の流れ】

心房細動の症状

心房細動が起こると、心臓の動きが不規則になって脈が乱れるため「胸がどきどきする」「息切れがする」「ふらつく」「体がだるい」「めまいがする」といった症状が出ることがあります。心房細動の症状は個人差が大きく、自覚症状が出ない人もいます。まったく無症状であっても、いつの間にか進行して重症化する場合もあるので軽視するのは禁物です。

心房細動では、心房が細かく震える程度しか動かず、心房内で血液がよどんでゼリー状に固まることがあります。この血の塊(血栓)が、左心室から血流に乗って脳に詰まると、脳梗塞を引き起こすのです。

心房細動でできる血栓は大きく、脳の血管を閉塞させるので、他の脳梗塞よりも重症化しやすいといわれています。一命を取り止めても、四肢麻痺や言語障害など重い後遺症を残すことも少なくありません。塞栓を防ぐには、血栓をできにくくする抗凝固薬を飲む必要があります。

心房細動の原因

心房細動は加齢とともに発生率が高くなり、女性よりも男性のほうが発症しやすい疾患です。特に、心筋症や心筋梗塞、心臓弁膜症などの基礎心疾患があると、心臓に負担がかかって、心房細動を引き起こすリスクが高まります。また、高血圧や糖尿病、メタボリックシンドロームといった生活習慣病を持っている人も心房細動を引き起こす可能性があります。

病気のない健康な人でも、精神的ストレスや睡眠不足、アルコールやカフェインの過剰摂取、喫煙の習慣などが心房細動の引き金となることがあります。心房細動を防ぐには、こうした要因を取り除くことが大切です。

心房細動の種類

心房細動には3つのタイプがあります。

発作性心房細動

心房細動が出現しても一時的で、数時間~数日、長くても1週間以内に正常に戻るもの。

持続性心房細動

心房細動が7日以上継続しているもの。

慢性(永続性)心房細動

発発作が長期にわたって続いているもの。薬剤を投与しても治りにくい。
発作性の場合、治療を行わずに放っておくと、持続性へと進行し、やがて慢性化します。心房細動が長期化すればするほど治りにくくなるので、おかしいなと思ったら早めに検査を受けましょう。

心房細動のリスクとなる高血圧

高血圧は心房細動を発生させる危険因子の一つです。高い血圧は心臓に余計な負担をかけるため、この状態が続くと心臓の機能が低下しやすくなります。

一般住民を対象としたコホート研究である「吹田研究」においても、高血圧が心房細動発症リスクにつながることがわかっています。また、肥満や過度の飲酒、喫煙といった生活習慣を改めることで、降圧効果と相まって、新たな心房細動発症の抑制につながる可能性が指摘されています。

心房細動と高血圧は併存することが多く、どちらも年齢を重ねるごとに発症する頻度も増加します。高血圧に加えて心房細動を併せ持つと、脳卒中などの重篤な疾患を引き起こす可能性がさらに高まるので、血圧管理をして心房細動の予防に努めることが重要です。脳卒中などのイベント発症を抑制するには、収縮期血圧130mmHg未満を目指す厳格な降圧が望ましいとされています。

心房細動は、早めに適切な治療を受けることで根治できる可能性があります。高血圧と診断されたら、血圧だけでなく、脈拍の変動にも注意を払いましょう。

参考

国立循環器病研究センター 循環器病情報サービス『[111] 心房細動といわれたら - その原因と最新の治療法 -』http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/heart/pamph111.html
Mindsガイドラインライブラリ『不整脈 Minds版やさしい解説』https://minds.jcqhc.or.jp/n/pub/3/pdf/G0000543_1
Mindsガイドラインライブラリ『慢性心不全 Minds版やさしい解説』https://minds.jcqhc.or.jp/n/pub/3/pub0049/G0000524/0004
日本脳卒中協会『心房細動週間・脈の日』http://www.jsa-web.org/citizen/94.html
高血圧治療ガイドライン2019 P104

PAGE TOP