【セミナーレポート】『人材確保とウェルビーイング経営の実践』出版記念セミナー
深刻化する人手不足を乗り切る「健康」と「美」の戦略とは?研究者と実務家が提示する次世代ウェルビーイング経営論
2026年8月26日(水)、オムロン ヘルスケア株式会社 東京事業所にて、書籍『人材確保とウェルビーイング経営の実践―選ばれる企業の「健康」と「美」の戦略―』(同友館)の出版記念セミナー(主催:新井卓二研究室)が開催されました。
本セミナーでは、新井卓二教授(ビューティーアンドウェルネス専門職大学)をはじめとする共著者6名が登壇。深刻化する人手不足時代における働き方改革、理学療法士やセラピストの活用、PHR(パーソナルヘルスレコード)の可能性、韓国における最前線の事例など、多角的な視点からウェルビーイング経営の実践知が提示されました。
目次
- 1. 背景と課題:不可逆的な人手不足と「選ばれる企業」への転換
- 2. セミナーレポート:著者陣が語るウェルビーイング経営の実践知
- 2-1. 中小企業の生存戦略としての健康経営と働き方改革
新井 卓二 氏
ビューティ&ウェルネス専門職大学教授。大阪公立大学客員教授。博士(学術)、MBA(経営管理修士) - 2-2. 経営戦略における健康経営の位置づけとリクルート効果
玄場 公規 氏
法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科 研究科長・教授 - 2-3. 健康経営を支える理学療法士(PT)の役割と設計
飯田 開 氏
文京学院大学ヒューマン・データサイエンス学部 助教。 理学療法士、博士(工学) - 2-4. PHRの現状と健康経営への応用
中村 俊也 氏
オムロン ヘルスケア株式会社 経営統轄部 担当部長。 (一社)PHRサービス事業協会 戦略アドバイザー - 2-5. 美容・ウェルネス産業におけるセラピストの能力開発
齋藤 勝 氏
ビューティ&ウェルネス専門職大学 講師 - 2-6. 韓国におけるウェルネス経済と治癒観光の最前線
今野 牧 氏
ビューティ&ウェルネス専門職大学 助教
- 2-1. 中小企業の生存戦略としての健康経営と働き方改革
- 3. 今後の展望 / まとめ
- 4. 関連情報・リンク(書籍・セミナーアーカイブ動画)
1. 背景と課題:不可逆的な人手不足と「選ばれる企業」への転換
現在、日本企業は労働力人口の減少、ハラスメント対応、女性の健康課題という「3つの危機」に直面しており、人手不足の中での優秀な人材の確保と定着(リクルート効果)が深刻な経営課題となっています。
特に、就職活動を行う学生や若手社員において「有給休暇取得率の高さ」や「残業抑制」「働き方への配慮」といった「働きやすさ・ホワイトさ」を重視する志向が年々強まっています。企業には、単なるコストや福利厚生にとどまらない、経営戦略としての「健康経営」「ウェルビーイング経営」への本格的なアプローチが強く求められています。
こうした背景のもと、産学の専門家6名が集結し、理論と実務の両面から「健康」と「美」を人事戦略・経営戦略に組み込むための実践的アプローチを議論する出版記念セミナーが実施されました。
2. セミナーレポート:著者陣が語るウェルビーイング経営の実践知
2-1. 中小企業の生存戦略としての健康経営と働き方改革(第2章:新井 卓二 氏)
人手不足に直面する中小企業においては、大規模な健康投資を先行させるモデルだけでなく、会社の生き残りをかけた「働き方改革」の実践を通じて職場環境が改善し、結果として健康経営が成り立つ「生存戦略モデル」が存在します。野菜摂取などの食事介入や、女性が働きやすい職場環境の整備を先行させることが、健康増進や生産性向上、離職防止に直結し、就職活動における高いリクルート効果(サステナビリティ)を生むことが示されました。
2-2. 経営戦略における健康経営の位置づけとリクルート効果(第1章:玄場 公規 氏)
学生の企業認知や満足度において、「有給休暇取得率」や「残業削減」「働き方への配慮」が極めて重要視されている実態が共有されました。健康経営の推進は、企業ブランドイメージの向上や優秀な人材獲得に明確な効果をもたらしており、健康経営度評価の上位企業では約75〜86%が人材採用における効果を実感しています。
2-3. 健康経営を支える理学療法士(PT)の役割と設計(第3章:飯田 開 氏)
肩こりや腰痛といった運動器症状の改善やプレゼンティーズム対策として、理学療法士の専門性は非常に親和性が高いものの、単に人手を「配置」するだけでは十分な効果が得られません。自社の課題に応じて社内施策・継続運用・外部支援・事業化といった「役割と成果の設計」をしっかり行い、業務委託や一般業務を兼ねた常勤雇用など適切な関与形態を選択することが重要であると解説されました。
2-4. PHRの現状と健康経営への応用(第4章:中村 俊也 氏 / オムロン ヘルスケア株式会社)
本章執筆にあたり、その理解に必要となる最新のPHR(Personal Health Record)を取り巻く社会的・政策的背景について解説が行われました。個人の健康データを本人の同意のもとで活用するための制度整備や、マイナポータルを活用した情報連携基盤の拡充、PHR関連ガイドラインや業界団体による標準化の取り組みなどを概観し、健康経営におけるデータ利活用の重要性と今後の発展可能性が示されました。また、オムロン ヘルスケア社が推進する家庭血圧測定や健康データ活用の取り組みを例に、PHRを基盤とした予防・健康づくりサービスの将来像についても紹介されました。
2-5. 美容・ウェルネス産業におけるセラピストの能力開発(第5章:齋藤 勝 氏)
成長を続ける美容・健康産業において求められるセラピスト像は、単なる技術力にとどまりません。高いホスピタリティや異文化対応力、刻々と変化する状況に柔軟に対応できる「適応的熟達者」の育成が必要であり、教育機関と産業界が連携した人材育成の重要性が議論されました。
2-6. 韓国におけるウェルネス経済と治癒観光の最前線(第6章:今野 牧 氏)
国家規模で「治癒(セラピー)観光」や森林・海洋セラピーなどの法整備・制度化を進める韓国の先進事例が紹介されました。国家資格をベースとした教育と産業の接続、医療とエステの融合といった独自モデルから、日本の予防医療やヘルスケア産業が学べる多くの示唆が発表されました。
3. 今後の展望 / まとめ
健康経営は、2026年末に国際規格(ISO規格)の発行が予定されるなど、日本独自の取り組みから世界標準の「ウェルビーイング規格」へと進化を遂げようとしています。
企業の持続的成長を実現するためには、健康経営やウェルビーイングを単なるコストとして捉えるのではなく、働き方改革・専門職(PT・セラピスト)の活用・PHRデータ連携・人材育成を組み合わせた「最強の経営戦略」として組み込んでいくことが不可欠です。
オムロン ヘルスケアは、今後もヘルスケア技術やデータの利活用を通じて、個人の健康増進と企業のウェルビーイング経営の実現に貢献してまいります。
4. 関連情報・リンク(書籍・セミナーアーカイブ動画)
本セミナーで発表された各テーマのより詳細な解説や事例につきましては、以下の書籍およびセミナー動画にてご覧いただけます。
書籍情報
『人材確保とウェルビーイング経営の実践―選ばれる企業の「健康」と「美」の戦略―』(同友館)
参考:紀伊國屋書店 書籍紹介・購入ページ
セミナーアーカイブ動画
当日の講演の模様は、以下YouTubeチャンネルにて一般公開されております。ぜひご視聴ください。
参考:新井研究室YouTubeチャンネル(セミナーアーカイブ動画)