vol.195 熱中症など、糖尿病患者が夏場に気を付けるべき点について教えてください。
生活習慣病Q&A
- 熱中症など、糖尿病患者が夏場に気を付けるべき点について教えてください。
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高血糖の状態が続くと、汗がかきづらくなるため身体が冷えにくく、脱水にもなりやすいので、熱中症になりやすくなります。普段から、自分の症状や血糖に気を配ることが大切です。日本における熱中症の実態調査によると、高血圧、糖尿病、心血管疾患、認知症があると熱中症になりやすいと言われています。糖尿病でない人い比べ、糖尿病を持つ人が熱中症になりやすい理由はいくつか知られています。
血糖コントロールが悪いと、血管や神経が損傷を受けやすいので、汗腺の働きが悪くなり、汗がかきづらくなり、効果的に身体を冷やすことができにくくなります。また、血糖が高いと尿に糖と共に水分が出やすくなります。高血糖の糖尿病患者さんが、「のどがよく渇く」「トイレが近い」という症状は高血糖で尿糖が多くなっている証拠です。その結果、身体の中は水分が多く失われ、脱水の状態になっています。
良好な血糖コントロールのためには運動が欠かせませんが、夏場に猛暑が続くと、普段通りの運動はしづらくなると思います。そのため、インスリンの効きが悪くなり血糖値が高くなりやすい人がいます。また、脱水の防止のためと冷房のきいた部屋に閉じこもりぎみなのに、糖分の多く入った飲料を飲むために高血糖になっている人もいます。涼しい時間帯に運動する習慣をつけることと、むやみに糖分の多く入った飲料を飲まないようにすることが大切です。
インスリン製剤は熱によって中に入っているインスリンが変性し、働きが悪くなることがあります。インスリン注射を使っている人は、車の中に置きっぱなしにすることでインスリンの効き目が悪くなることがあります。冷蔵庫や移動際にはクールバッグで保管しておくとよいでしょう。特に、泳ぎやバーベキューなど外での活動の際に注意が必要です。 夏場を上手に過ごせるように、普段から自分の症状や血糖値に気を配ることができるといいですね。
参考:
糖尿病ネットワーク「糖尿病患者は熱中症リスクが高い? 熱中症予防に関する緊急提言も」
http://www.dm-net.co.jp/calendar/2018/028325.php
Diabetes UK
https://www.diabetes.org.uk/guide-to-diabetes/managing-your-diabetes/hot-weather
Miyake Y. [Characteristics of elderly heat illness patients in Japan--analysis from Heatstroke STUDY 2010]. Nihon Rinsho. 2013 Jun;71(6):1065-73.
https://www.cdc.gov/features/diabetesheattravel/index.html
先生のプロフィール

坂根 直樹 先生
独立行政法人国立病院機構京都医療センター
臨床研究センター 予防医学研究室室長
臨床研究センター 予防医学研究室室長
- 略歴
- 昭和64年 自治医科大学医学部卒業
昭和64年 京都府立医科大学附属病院(第1内科)研修医
平成3年 大江町国保大江病院内科
平成5年 弥栄町国保病院内科
平成6年 京都府保健福祉部医療・国保課
平成7年 綾部市立病院(内分泌科)
平成10年 大宮町国保直営大宮診療所
平成11年 京都府立医科大学附属病院修練医(第1内科)
平成13年 神戸大学大学院医学系研究科分子疫学分野(旧衛生学)助手
平成15年 独立行政法人国立病院機構京都医療センター(旧国立京都病院)
臨床研究センター 予防医学研究室室長 - ご専門
- 糖尿病、糖尿病教育、内分泌