vol.106 過活動膀胱の新しい治療薬と薬物治療

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Vol.106 過活動膀胱の新しい治療薬と薬物治療 ふだんの生活で感じる尿のトラブル。困っていても相談できなかったり、歳のせいとあきらめたりしていませんか。日本人の40歳以上の男女を対象にした下部尿路症状の調査によると全体の12.4%に「過活動膀胱」の症状があり、810万人の患者がいると推定されています。「急に抑えきれない尿意が起こり、我慢できない」「日中や夜間も頻尿がある」「我慢しきれず、尿が漏れてしまう」といった症状が過活動膀胱の特徴的な症状ですが、これらは治療によって改善できるものです。2011年9月には副作用の少ない新しい薬が登場し、治療の選択肢も広がってきています。

過活動膀胱とは

尿を溜めて定期的に排尿する働きは、膀胱とその下にある尿道がつかさどり、自律神経が調節しています。尿を溜めるとき、交感神経の末端からノルアドレナリンという神経伝達物質が放出され、膀胱内は緩み、尿道は収縮して尿が溜まります。一方、排尿するときは副交感神経の末端からアセチルコリンが放出され、膀胱内はしぼむように収縮し、尿道は緩んで尿が排出されます。過活動膀胱とは、このような膀胱の働きに誤作動が生じた状態です。尿を溜める時期に膀胱内に異常な収縮が起こるため、尿が少量しか溜まっていないのに勝手に強い尿意を感じ、頻尿になったり、尿が漏れたりしてしまうのです。
過活動膀胱の原因は、脳梗塞や脳出血、パーキンソン病などの脳や脊髄の病気によって起きるものが20%、そのほかは、加齢、骨盤底の筋力低下、尿道の通りが悪くなる下部尿路閉塞、原因がはっきりしない特発性とされています。

副作用の少ない治療薬が登場

過活動膀胱の治療法には、尿意を数分ずつ我慢する「膀胱訓練」や骨盤底の筋力低下を防ぐ「骨盤底訓練」などの行動療法もありますが、過活動膀胱と診断された場合、女性では「抗コリン薬」による薬物療法が一般的です。これは過活動膀胱に用いる代表的な薬で、膀胱にあるムスカリン受容体と結合してアセチルコリンの神経伝達を阻止することで膀胱の異常な収縮が起きないように作用します。しかし、膀胱に集まって効きやすい抗コリン薬が開発されて高い効果が期待できる一方で、膀胱以外の組織にもムスカリン受容体が存在するため、服用すると口の渇きや便秘、目の調節障害などの副作用が起きることが問題となっていました。
昨年新たに登場した「β3アドレナリン受容体作動薬」(一般名ミラベグロン)は、こうした背景から開発された新しい薬です。口の渇きや便秘などの副作用はなく、強い尿意や頻尿、尿もれの症状に対しては、抗コリン薬と同等の効果があります。ただし、使用する際には気をつけなければならないことがあります。ラットを使った動物実験で精巣や子宮の重量低下や萎縮がみられたことから、生殖可能な年齢の患者への投与は避けた方がよいとされています。したがって現在、治療対象は中高年以降の女性が中心になっています。

男性に多い前立腺肥大症による過活動膀胱

また、男性の場合、過活動膀胱の原因の一つは前立腺肥大症です。主な症状は「おしっこの勢いが悪い」「尿が途中でとぎれる」「出しにくい」というもので、尿道の通りが悪くなることで起こります。それに加えて約半数の人に「急に尿意をもよおして、我慢ができない」などの過活動膀胱の症状がみられます。
このような場合、治療では抗コリン薬は使用せず、まず「α1アドレナリン受容体阻害薬」が用いられます。前立腺や尿道の平滑筋を緩ませて、尿道の通りをよくするのです。これによって過活動膀胱の症状も治まってきます。しかし、尿は出やすくなっても、過活動膀胱の症状が改善しない人もいます。そのときは、抗コリン薬に切り替えて膀胱の異常な収縮を抑えます。

尿のトラブルは泌尿器科で治療を

尿の悩みや症状は、人によってさまざま。過活動膀胱で治療を受けるかどうかは、日常生活で自分が困っているかが目安になります。抑えられない尿意や頻尿、尿もれなどは、はっきりとした症状です。生活に支障をきたしているなら、我慢を続けないで治療を始めた方がよいでしょう。
また、前立腺肥大症で過活動膀胱の患者さんに抗コリン薬を用いる場合、泌尿器科では超音波検査で膀胱内の残尿を確認してから処方しますが、内科では残尿の測定は行わないことが多いようです。尿にかかわることは、泌尿器科が専門領域です。内科で薬を処方されているがなかなか症状が改善されないというときは、泌尿器科を受診しましょう。

監修 東京女子医科大学東医療センター 
骨盤底機能再建診療部・泌尿器科教授 巴ひかる先生
  • このコラムは、掲載日現在の内容となります。
    掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

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