vol.110 傷あとがきれいに治る! 注目の高機能シートと最新治療
健康・医療トピックス
薄着の季節は、皮膚にできた傷あとが気にかかるもの。露出の多い部位ほど人目が気になりますが、近年は傷を適切にケアする高機能の保護シートが登場し、やけどや切り傷などの傷あとを最小限にして、目立ちにくくする治療が進歩してきています。

やけどの治療に注目される「創傷被覆材」
皮膚にできる傷は、やけどなどが原因の急性の傷と褥瘡(じょくそう=床ずれなど)や糖尿病による壊疽(えそ)のような慢性の皮膚潰瘍(かいよう)の傷に大きく分けられます。形成外科は体の表面にできたこうしたさまざまな傷の治療を行いますが、いまその医療現場では、「創傷被覆材(そうしょうひふくざい)」を用いたやけどの治療が注目されています。創傷被覆材とは、傷を治すために患部に直接当てるシート状のものです。
やけどの治療といえば、ガーゼを当てるイメージがあります。しかし、やけどをした皮膚にしてみれば、木綿のガーゼはヘチマタオルと同じようなものといえます。ガーゼを交換する際、ヘチマタオルで擦られるような刺激が加わるからです。水泡ができるほどのやけどでは、木綿のガーゼに組織が食い込んでしまいます。
創傷被覆材は、体の組織に近いバイオマテリアル(生体材料)からつくられたもので、傷に付着せず、適度な湿度を保ち、傷を保護するのが大きな特長です。もともとは、慢性で治りにくい褥瘡や糖尿病による壊疽などの難治性皮膚潰瘍の治療のために開発されましたが、現場で用いられるうちに、やけどや切り傷といった急性の傷にも応用可能で、傷あとを目立たずきれいに治せることがわかり、関心注目が高まっています。現在のやけどの治療は、傷をきれいに治すことにも配慮されているからです。
創傷被覆材は、「ドレッシング材」「非固着性ガーゼ」「非固着性創傷用吸収パッド」とも呼ばれ、傷の深さや程度に応じて、多様な種類が登場しています。傷あとの治療では、傷を保護して、さらに皮膚の動きを抑えるシリコンシートも用いられています。皮膚は体内の内臓を守るために体表に装備された鎧のようなものです。よく動かすところほど傷は縮んで盛り上がろうとする性質があります。手術後の傷にこのシートを貼ると傷を保護すると同時に刺激となる動きが抑えられるため、傷あとが目立ちにくくなります。
やけどの治療といえば、ガーゼを当てるイメージがあります。しかし、やけどをした皮膚にしてみれば、木綿のガーゼはヘチマタオルと同じようなものといえます。ガーゼを交換する際、ヘチマタオルで擦られるような刺激が加わるからです。水泡ができるほどのやけどでは、木綿のガーゼに組織が食い込んでしまいます。
創傷被覆材は、体の組織に近いバイオマテリアル(生体材料)からつくられたもので、傷に付着せず、適度な湿度を保ち、傷を保護するのが大きな特長です。もともとは、慢性で治りにくい褥瘡や糖尿病による壊疽などの難治性皮膚潰瘍の治療のために開発されましたが、現場で用いられるうちに、やけどや切り傷といった急性の傷にも応用可能で、傷あとを目立たずきれいに治せることがわかり、関心注目が高まっています。現在のやけどの治療は、傷をきれいに治すことにも配慮されているからです。
創傷被覆材は、「ドレッシング材」「非固着性ガーゼ」「非固着性創傷用吸収パッド」とも呼ばれ、傷の深さや程度に応じて、多様な種類が登場しています。傷あとの治療では、傷を保護して、さらに皮膚の動きを抑えるシリコンシートも用いられています。皮膚は体内の内臓を守るために体表に装備された鎧のようなものです。よく動かすところほど傷は縮んで盛り上がろうとする性質があります。手術後の傷にこのシートを貼ると傷を保護すると同時に刺激となる動きが抑えられるため、傷あとが目立ちにくくなります。
気になる傷あとの最新治療
皮膚にできた傷あとは、しかたないとあきらめがちですが、形成外科の専門医に相談するときれいに治る可能性があります。女性の場合、帝王切開や子宮筋腫の手術後にできた傷あとは治療できるものです。
やけどや切り傷などによる傷あとには、皮膚が赤く盛り上がる「ケロイド」と「肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)」があります。一見似ていて判別がつきにくいですが、ケロイドは小さな傷から赤い隆起が広がっていくもの。肥厚性瘢痕は、手術後の傷あとというように理由があってできるものです。傷あとが盛り上がりやすいのは、Ⅱ度の深いやけどからですが、原因はやけどばかりではありません。胸にできた小さなニキビの傷がきっかけで、ケロイドが大きく広がることがあります。また、ピアスの孔が化膿したり、枕で擦れたりすることが原因で耳たぶに結節ができる「ピアスケロイド」も珍しくありません。
原因がはっきりした傷あとは、手術で取り除くことで改善します。しかし、ケロイドは切ると新たな刺激が加わり、さらに範囲が大きくなることがあります。このような重症のケースでは、手術後に電子線を照射して(放射線治療)、患部の勢いを弱める併用療法を行う医療機関が増えています。
やけどや切り傷などによる傷あとには、皮膚が赤く盛り上がる「ケロイド」と「肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)」があります。一見似ていて判別がつきにくいですが、ケロイドは小さな傷から赤い隆起が広がっていくもの。肥厚性瘢痕は、手術後の傷あとというように理由があってできるものです。傷あとが盛り上がりやすいのは、Ⅱ度の深いやけどからですが、原因はやけどばかりではありません。胸にできた小さなニキビの傷がきっかけで、ケロイドが大きく広がることがあります。また、ピアスの孔が化膿したり、枕で擦れたりすることが原因で耳たぶに結節ができる「ピアスケロイド」も珍しくありません。
原因がはっきりした傷あとは、手術で取り除くことで改善します。しかし、ケロイドは切ると新たな刺激が加わり、さらに範囲が大きくなることがあります。このような重症のケースでは、手術後に電子線を照射して(放射線治療)、患部の勢いを弱める併用療法を行う医療機関が増えています。
やけどの応急処置のポイント
さて、いよいよ夏真っ盛り。海や山に出かけるなどアウトドアの機会が増えます。この時期、気をつけたいのはバーベキューや花火をしているときのやけどです。屋外での火の取り扱いには十分に注意し、いざというときに慌てないために、やけどの応急処置をしっかり覚えておきましょう。
やけどをしたら、まず水道水で患部をよく冷やします。小さい子どもは低体温にならないように気をつけて冷やすことが大切です。やけどは痛みがあるから重症、痛みがないから軽症ともいいきれません。痛みだけではやけどの程度は見極めが難しいので、冷やした後の処置は素人判断でしないことです。水ぶくれができたときは、膜を破らないようにして冷やします。膜を破ったり、擦れたりするとやけどの傷が一層深くなり、傷が治りにくくなります。痛みが落ち着いたらすぐに病院に行ってください。
また、花火などをしていて洋服やゆかたのそでに引火したときは、無理に脱がせると皮膚が擦れます。着衣のまま水で冷やすか、部位によっては衣服を切った方がいいでしょう。やけどの応急処置の基本は、すぐに冷やすことと余計な刺激を加えないこと。この2つが重要なポイントです。
監修
川崎市立多摩病院 形成外科部長
聖マリアンナ医科大学 形成外科 准教授
松崎 恭一先生
やけどをしたら、まず水道水で患部をよく冷やします。小さい子どもは低体温にならないように気をつけて冷やすことが大切です。やけどは痛みがあるから重症、痛みがないから軽症ともいいきれません。痛みだけではやけどの程度は見極めが難しいので、冷やした後の処置は素人判断でしないことです。水ぶくれができたときは、膜を破らないようにして冷やします。膜を破ったり、擦れたりするとやけどの傷が一層深くなり、傷が治りにくくなります。痛みが落ち着いたらすぐに病院に行ってください。
また、花火などをしていて洋服やゆかたのそでに引火したときは、無理に脱がせると皮膚が擦れます。着衣のまま水で冷やすか、部位によっては衣服を切った方がいいでしょう。やけどの応急処置の基本は、すぐに冷やすことと余計な刺激を加えないこと。この2つが重要なポイントです。
監修
川崎市立多摩病院 形成外科部長
聖マリアンナ医科大学 形成外科 准教授
松崎 恭一先生
※このコラムは、掲載日現在の内容となります。掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。