vol.136 緑内障の最新治療「チューブシャント手術」

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Vol.136 緑内障の最新治療「チューブシャント手術」

仕事中はパソコン、通勤の電車内や休憩しているときはスマートフォンの画面をじっと見つめて、目を酷使している人が増加しています。10月10日は目の愛護デー。目をいたわって大事に過ごしてほしいものです。

身近で難しい目の病気。そういわれる病気の一つが緑内障で、日本人の失明原因の第1位です。まぶたに指を当て、軽く押すと適度な弾力を感じます。これは「眼圧」によるもの。眼圧は、眼球の内部にある房水(ぼうすい)という液体の量などによって調節されています。緑内障は、この眼圧が高くなることによって視神経が圧迫されて死んでいく病気です。その場所に対応する視野が徐々に欠けて見えなくなり、最終的には失明に至ります。
緑内障で有効性が確認されている唯一の治療は、眼圧を下げることでそれによって進行を遅らせたり、止めたりすることができます。一度失われた視野は回復しませんが、眼圧を下げる治療をすることでいまの視野を維持できます。治療法には「薬物治療」、「レーザー治療」、「手術治療」がありますが、原則は薬物治療です。レーザー治療や手術治療は、薬物治療で効果がない場合に選択されます。ただし、レーザー治療は薬物治療の補助的な役割で、手術治療の方が大きく眼圧を下げることができます。この緑内障の手術治療に関して2012年度から「チューブシャント手術」という新たな手術法が保険適用になっています。この手術は、専用のインプラント(人工物)を眼内に挿入し、房水の排出路を作って眼圧を下げる治療です。従来の手術ができない人にも行うことができ、術後の回復も早いことなどから注目を集めています。

「チューブシャント手術」は、大きく2種類ある

「チューブシャント手術」は、用いるインプラントによって2種類に分けられます。1つは、プレート付きのチューブを用いる方法、もう1つは、プレートのないチューブのみを用いる方法です。日本緑内障学会のチューブシャント手術ガイドライン作成委員を務めた四谷しらと眼科の白土城照院長は、眼圧を下げる仕組みをこう話します。「プレート付きチューブでは、プレートを結膜(白目)の下に入れてその周りに被膜を作らせ、眼球から被膜の中にチューブを通し、房水を流して眼圧を下げます。一方、チューブのみを用いる手術は、小さいステンレス製の管で眼内と結膜の下とをつなげ、いわばトンネルを作って流します」。

手術選択時の注意点

海外では、プレート付きのチューブを用いる手術は30年以上、チューブのみを用いる手術は10年前から行われ、長い歴史をもっています。また、最近では従来の手術ができない方だけでなく、従来の手術の代わりにも使われ始めていますが、日本では医療器具として承認されたばかりで、慎重に選択してほしいと白土院長は忠告します。「歯のインプラントと同じように考えて劇的に緑内障が良くなると思っている方もいますが、この手術は眼圧を下げるために行うもの。緑内障で失われた視野や視力は戻ることはありません。プレート付きチューブ手術は本来、従来の手術法では対処できない症例に行われる方法で、日本緑内障学会でも難治緑内障に使用を限定しています。チューブのみの手術は、従来の手術と同じように行うことができますが金属を目に入れるので、将来、なにが起こるのかという問題が残されています」。チューブシャント手術の適応は現時点では限られ、手術にはリスクも伴います。手術を希望するときは、緑内障の専門医のセカンドオピニオンを受けてみるのもいい方法と白土院長はアドバイスします。

検査方法も進歩。新たな課題が出現

緑内障は、発症から長い経過をたどる慢性疾患です。進行を防いで視力をできるだけ維持するには早く発見し、確実な治療を開始することが大切です。それには、検査が重要です。眼科では、次のような検査が行われます。

(1)眼圧検査…
眼圧を測定。治療効果の判定や手術の決定に大変重要な検査です。
(2)眼底検査…
視神経乳頭(眼底の後ろにあり、神経線維の束が突き抜けて脳につながる部位)、網膜神経線維層(眼底の網膜にある神経線維の厚さ)などを調べます。
(3)視野検査…
見える範囲に欠けがあるかどうかを調べます。
(4)隅角検査…
房水の排出口である隅角がふさがっているのか、開いているのかなどを観察して、緑内障のタイプを調べます。

最近は、眼底検査にコンピュータ眼底三次元画像解析のOCT(光干渉断層計)が導入され、診断力が上がってきています。OCTでは、波長820nmの近赤外線のビームで眼底の視神経乳頭の形状や網膜神経線維層の厚さなどを調べます。しかし、新たな問題点も指摘されています。「視神経の厚さと視神経の数は同じではありません。数は同じでも視神経が細くて薄いだけかもしれません。このため、厚さだけ見て緑内障と誤解される例が増えてきています」(白土院長)。OCT検査の診断力の評価は、見直しの時期に入っていると話します。

近視や家族歴は、緑内障の危険因子

緑内障は、自覚症状がほとんどありません。視野が欠けるなどの症状が現れる頃にはかなり進行しているため、40歳を過ぎたら一度は目の検査を受けることが大切です。また、視神経の抵抗力が弱ければ、眼圧は正常でも視神経は断裂します。日本人の場合、緑内障全体の7割は眼圧が正常といわれています。眼圧が正常なのに、なぜ、緑内障が多いのか。原因はわかっていませんが、近視や家族歴が危険因子に挙げられています。強度の近視や家族歴のある人は、30歳を過ぎたら定期検査を受けた方がいいでしょう。

監修 四谷しらと眼科 院長 白土城照先生

  • このコラムは、掲載日現在の内容となります。
    掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

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