vol.189 ホルモンや免疫の機能を整える「温泉の効果」

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Vol.189 ホルモンや免疫の機能を整える「温泉の効果」

温泉地に滞在してゆっくり体を癒やす。日本の湯治は、江戸時代から盛んになりました。温泉につかると、なぜか体の調子がよくなって病気も快復する。このような温泉の効果は、経験として知られていましたが、それを裏付ける科学的な研究が出てくるなど、近年、海外で温泉が注目されています。古くから受け継がれてきた日本の温泉は、ストレスの多い現代人に効果があります。期待の温泉効果を知っておきましょう。

注目されている「総合的生体調整作用」

日本の温泉は、伝統医学として研究されてきた歴史があります。医学的な主な作用は、温泉の温熱による血管拡張や血液循環の改善などの「物理的な作用」、温泉に溶け出ているイオンや化合物などによる「化学的な作用」、そして「総合的生体調整作用」の3つです。その中で今、注目されているのは、「総合的生体調整作用」です。
温泉医学を研究してきた温泉療法専門医で、埼玉医科大学リハビリテーション医学講座の倉林均教授は、「これは転地療法とも呼ばれ、温泉の温度や刺激、温泉地の自然環境によって人間の体が整っていくという作用です。近年、内分泌や生命科学の分野から同じような結果が出てきて、海外の研究者も注目しているのです」。

なんとなく温泉が良い理由が分かってきた

温泉に入るとなんとなく気分がほぐれ、疲れがとれます。「総合的生体調整作用」とは、ちょっと曖昧なこんな効果のことです。温泉地や温泉による軽微な刺激が体内のホルモンや自律神経に働きかけ、乱れた生体機能を本来のリズムに整える作用といわれています。
どうして温泉で体のリズムが整うのか。それは十分に解明されていませんが、大脳の視床下部と脳下垂体、副腎を介した経路に調整の鍵があると考えられています。倉林教授によると、「群馬大学医学部の草津分院にいた当時、草津温泉では長期間湯治をしている人がいました。その人たちのホルモンの変動を調べると、高かったアドレナリンやコルチゾールはだんだん下がり、湯治で内分泌のバランスが整っていきました」と言います。
このような温泉の「総合的生体調整作用」は、どこの温泉でも得られることが分かっています。内分泌や免疫の機能は、ストレスの影響を受けやすいことから「忙しい人ほど温泉に行ってほしいですね。休息は最大の治療になります。現代人のストレスは、数日間の温泉地滞在でも効果があります」とアドバイスします。

温泉地では、脱水や血液の変化に気をつけよう

温泉旅行では、バスに乗って温泉地まで移動したり、到着前からお酒を飲んでいることが多いと思います。温泉は体に良いですが、入浴事故には注意が必要です。温浴で血管が拡張すると血圧が下がり、発汗や利尿作用で脱水が進みます。飲酒していると脱水はさらに進みます。血圧低下や脱水では、血栓症が発症しやすくなります。また、長時間のバス移動のストレスで脱水は進み、血栓ができやすくなります。
倉林教授によると、温泉地での心筋梗塞や脳梗塞などの急性疾患は、「夕方5時から8時ごろ」と「深夜2時から明け方5時ごろ」に多いということです。バスの中でお酒を飲んで、到着後すぐに温泉に入ったり、血液の粘度が急上昇する明け方に入浴したりすることは、危険です。動脈硬化や高血圧など生活習慣病のリスクのある人や高齢者は、安全な入浴を心がけましょう。

安全に温泉に入る5つのポイント

①入浴前後に水分を補給する

  • 水分補給は脱水を防ぎ、心筋梗塞や脳梗塞を予防します。

②42℃以上の湯に入らない

  • 42℃以上の熱い湯は、血栓症を誘発しやすいので避けましょう。これから活動するという時はやや熱めの40~42℃、就寝前は40℃くらいの湯にしましょう。

③飲酒後の入浴はしない

  • 飲酒している人は、酔いがさめてから水分を補給して入浴しましょう。

④風呂から出るときは、ゆっくりと立ち上がる

  • 急激な立ち上がりと水圧の解除は起立性低血圧を起こし、脳血流が低下・うっ滞して血栓症を誘発します。

⑤起床後、すぐの朝風呂は避ける

  • 朝風呂は起床から1時間後にして、水分補給の後、40℃くらいの湯にしましょう。

美人の湯の泉質と効用 

また、温泉の泉質は湯に溶け出た成分によります。いわゆる美人の湯は、弱アルカリ性の温泉。肌の脂肪酸と温泉の弱アルカリ性の成分が結びつき、肌の表面にせっけんが作られることですべすべになります。同じような効果が期待できる温泉としては、重曹泉や塩化物泉もおすすめです。
ストレスによるホルモンの乱れや免疫の機能低下は、気付きにくいものです。日本は各地に泉質の良い温泉があります。リフレッシュやセルフケアの場として温泉を活用し、体本来のバランスを整えて健康維持に役立てましょう。

監修 埼玉医科大学 リハビリテーション医学講座 教授 倉林 均先生
取材・文 阿部 あつか

  • このコラムは、掲載日現在の内容となります。
    掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

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