vol.21 スギ花粉症の根治療法「舌下減感作療法」

健康・医療トピックス
スギ花粉症に悩む人が続々・・・と。それもそのはず、今年は昨年の20~30倍の量のスギ花粉が飛び、最高の飛散量とされた1995年をしのぐといわれています。薬物療法、レーザー療法など治療法はいろいろありますが、いずれも症状をやわらげる対処療法にすぎません。
そこで、「毎年スギ花粉に悩まされるのではたまらない」という人のために、スギ花粉症を根本から治す、『舌下減感作療法』を紹介しましょう。
この治療は免疫療法としてこれまでにも行われてきた減感作療法(げんかんさりょうほう:抵抗力を強くするため花粉エキスを投与し免疫を作る療法)の一種です。減感作療法は体質改善のために通院を週1~2回して2年以上も時間がかかります。治療には根気がいるとあって、患者さんへの人気は薄いようです。
そこで、減感作療法の「通院が週に何回も必要」「注射をしなくてはならない」ーこれらの2点を改善したのが、日本医科大学付属病院(文京区千駄木)耳鼻咽喉科で行われている『舌下減感作療法』です。
この療法は、名称に『舌下』とあることでわかるように、スギ花粉(抗体)のエキスを舌下から患者のからだに吸収させます。パン片を舌下に置いて、そのパン片にスギ花粉のエキスを目薬を点眼する要領で垂らし、2分間じっと待った後、飲み込んでしまえば1日1回の投与は終了します。
治療は自宅で行なえます。開始の3週間は連続して投与し、それ以降は週に1~2回の投与でOKです。さらに、2~3週間に1回の投与と間隔を広げ、2年間続けます。通院は1カ月に1回で済みます。
2年を必要とする治療ですが、早い人では投与開始3週間の治療で効果のでてくる人もいます。
「なぜ、舌下から抗原エキスを投与するの?」と、疑問をもつ人もいるでしょう。
舌下から吸収すると、あごの下の左右にあるリンパ節にエキスが届きやすくなります。リンパ節はアレルギー反応に深い関係のある免疫機能をもっています。それも顔に近いリンパ節という点も重要なポイントです。スギ花粉症の症状は鼻と目に集中しているからです。
治療効果は100%ではありませんが、約80%と高い有効率を得ています。
治療の開始はスギ花粉シーズンをさけて、6~10月の間にスタートします。ただし、スギ花粉症の人にはハウスダスト等、他のアレルギーをもつ人も多くいますが、このように併発している人はこの治療は受けることはできません。あくまでもスギ花粉単独アレルギーの人に限定されています。
vol.21 スギ花粉症の根治療法「舌下減感作療法」

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執筆者プロフィール

松井 宏夫

松井 宏夫

医学ジャーナリスト
略歴
1951年生まれ。
医療最前線の社会的問題に取り組み、高い評価を受けている。
名医本のパイオニアであるとともに、分かりやすい医療解説でも定評がある。
テレビは出演すると共に、『最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学』(テレビ朝日)に協力、『ブロードキャスター』(TBS)医療企画担当・出演、『これが世界のスーパードクター』(TBS)監修など。
ラジオは『笑顔でおは天!!』のコーナー『松井宏夫の健康百科』(文化放送)に出演のほか、新聞、週刊誌など幅広く活躍し、NPO日本医学ジャーナリスト協会副理事長を務めている。
主な著書は『全国名医・病院徹底ガイド』『この病気にこの名医PART1・2・3』『ガンにならない人の法則』(主婦と生活社)、『高くても受けたい最新の検査ガイド-最先端の検査ができる病院・クリニック47』(楽書ブックス)など著書は35冊を超える。

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