vol.24 白内障手術を受けるタイミング

健康・医療トピックス
眼科疾患の中で最も手術が進歩したといわれているのが白内障です。
白内障は、主に加齢により眼の水晶体が白く濁り、視力障害を起こす疾患ですが、治療薬がないだけに手術が進歩せざるを得なかった、という面もあります。
手術は『眼内レンズ挿入術』。白濁した水晶体を取り除いて、人工の眼内レンズを水晶体を包む膜の中に入れる手術です。
眼球の上部の角膜と結膜(白眼)の境界に沿って2.5~3mm切開し、超音波で白濁部分を乳化させて吸引します。次に、折り畳んだ眼内レンズを切開口から挿入。眼内レンズは中で元の大きさである直径6mmに広がるのです。
手術室に患者が入って出るまでの所要時間は約50分と短く、日帰りも可能になり、これまで問題にされていた「乱視が起きる」「炎症が起きる」「社会復帰に時間がかかる」については解消されました。

それにもかかわらず、まだまだ眼科手術は怖い、と手術を医師からすすめられても悩み続ける人がいます。どんな手術でも、手術である限りはリスクを伴いますが、今日では、手術を先送りしすぎてしまうことの方が問題なのです。
手術を先送りしているうちに視力が0.1以下になってしまうと、水晶体が硬くなりすぎて、数分で終了する手術が長時間になるばかりか、術後に行うケアが多くなってQOL(生活の質)を悪くしてしまいます。
では、どのようなタイミングで白内障の手術を受けるのが良いのでしょうか。
多くの場合、手術のタイミングを決めるまで充分な時間的余裕があります。
基本となる目安は、あなた自身が見え方に満足できなくなり、日常生活に支障が生じてくる『視力が0.6以下になったとき』です。ただ、0.6以上であっても、まぶしさが強すぎるなど、QOLに問題が生じるようであれば、手術を考えるべきです。
また、職業的な問題もあります。例えば、タクシードライバーなど運転を職業とする方が白内障の場合、夜間運転で対向車のライトがまぶしくて前がよく見えないといったことがあると、安全走行的に問題が生じます。この場合も早めに対応するのがいちばんです。
「手術は怖い」と悩んでばかりいないで眼科医に相談し、視力とQOLを十分に考慮した的確なタイミングで、手術を受けましょう。
vol.24 白内障手術を受けるタイミング

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執筆者プロフィール

松井 宏夫

松井 宏夫

医学ジャーナリスト
略歴
1951年生まれ。
医療最前線の社会的問題に取り組み、高い評価を受けている。
名医本のパイオニアであるとともに、分かりやすい医療解説でも定評がある。
テレビは出演すると共に、『最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学』(テレビ朝日)に協力、『ブロードキャスター』(TBS)医療企画担当・出演、『これが世界のスーパードクター』(TBS)監修など。
ラジオは『笑顔でおは天!!』のコーナー『松井宏夫の健康百科』(文化放送)に出演のほか、新聞、週刊誌など幅広く活躍し、NPO日本医学ジャーナリスト協会副理事長を務めている。
主な著書は『全国名医・病院徹底ガイド』『この病気にこの名医PART1・2・3』『ガンにならない人の法則』(主婦と生活社)、『高くても受けたい最新の検査ガイド-最先端の検査ができる病院・クリニック47』(楽書ブックス)など著書は35冊を超える。

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