vol.30 あなたも、ひょっとしたら「むずむず脚症候群」かも...?

健康・医療トピックス
『むずむず脚症候群』という病気をご存じでしょうか。高齢者には、脚の皮膚がかゆい『皮膚掻痒(そうよう)症』という皮膚科疾患がありますが、それは脚の表面の皮膚のかゆみですから、脚をかいたりすると症状は治まります。

ところが、むずむず脚症候群の場合は、その“むずむず”の病名にもよく表れているように、脚の深部にむずむず、ジリジリといった不快症状が現れます。かいても不快症状は治りません。これが夜眠ろうとするころになると現れるとあって、不眠障害に苦しんでいる人が意外に多いのです。

この症状が出ると、起きて歩き回ったり、足を動かすと症状は一時消えます。しかし眠ろうとすると、また、むずむず感が出てきてしまう。結局、眠れるのは午前3時とか4時。やっと症状が治まって眠りについても、もうひとつの症状『周期性四肢運動』に襲われます。その症状とは、睡眠中に20~30秒間隔で足首をカクッカクッと蹴るようなけいれんを伴うのです。このため再び目覚めてしまい、眠れなくなります。むずむず脚症候群で悩む人の50~80%がこの周期性四肢運動を合併しているのです

むずむず脚症候群の患者は白人では5~15%と多く、私たちアジア人では2~5%前後です。ただ、60歳以上になると5%以上と、高齢になるほど患者は多くなります。男女比では1:2で女性が男性の2倍です。

メカニズムはまだ不明ですが、脳内のドーパミン(神経細胞間で信号のやりとりをするのに重要な神経伝達物質のひとつ。人間が手足を動かしたり、さまざまな運動をするときに、ドーパミンは機械の潤滑油のような働きをする)作動性神経細胞の機能低下と関係していることがわかってきました。

また、むずむず脚症候群は鉄欠乏性貧血の人に多く、生理出血の多い人や妊婦に起こりやすいことや、人工透析を受けている人にも多いことがわかっています。これは中枢神経での鉄の減少がドーパミンの機能低下につながるからです。

治療法としては、「生活改善」と「薬物療法」が中心となります。

〈生活改善〉
●症状を悪化させるカフェインを避ける。夕方以降はコーヒー、紅茶、日本茶は飲まない。
●深酒はしない。
●筋肉の疲れが強いときは、十分なマッサージを行う、もしくは受ける。
軽症であれば、これだけでも改善しますが、重症の場合は薬物療法を加えます。

〈薬物療法〉
●パーキンソン病に使われるドーパミン作動薬が使われる。
●鉄欠乏性貧血のあるときは鉄の補給を行う。
●抗痙攣(けいれん)薬もよく使われる。

もし、あなたがむずむず脚症候群と考えられるなら、皮膚科や整形外科ではなく、早くむずむず脚症候群に詳しい睡眠障害の専門施設の精神科や神経内科を受診すべきだと思います。

vol.30 あなたも、ひょっとしたら「むずむず脚症候群」かも...?

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執筆者プロフィール

松井 宏夫

松井 宏夫

医学ジャーナリスト
略歴
1951年生まれ。
医療最前線の社会的問題に取り組み、高い評価を受けている。
名医本のパイオニアであるとともに、分かりやすい医療解説でも定評がある。
テレビは出演すると共に、『最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学』(テレビ朝日)に協力、『ブロードキャスター』(TBS)医療企画担当・出演、『これが世界のスーパードクター』(TBS)監修など。
ラジオは『笑顔でおは天!!』のコーナー『松井宏夫の健康百科』(文化放送)に出演のほか、新聞、週刊誌など幅広く活躍し、NPO日本医学ジャーナリスト協会副理事長を務めている。
主な著書は『全国名医・病院徹底ガイド』『この病気にこの名医PART1・2・3』『ガンにならない人の法則』(主婦と生活社)、『高くても受けたい最新の検査ガイド-最先端の検査ができる病院・クリニック47』(楽書ブックス)など著書は35冊を超える。

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