vol.32 円形脱毛症にはストレスの自覚がない重症ケースもある

健康・医療トピックス
ストレス過多の時代、それに関連した心身症が起こりやすくなっています。円形脱毛症もそのひとつです。動物実験では過重なストレスをかけると、半日程度で動物の毛が抜けた例があります。ただし、なぜストレスによって脱毛するのか、はっきりとしたメカニズムはまだわかっていません。毛根の周りにはリンパ球が集まっているため、自己免疫疾患のひとつではないかといわれています。

円形脱毛症は、軽度であれば、ストレスを解消するだけで髪は生えてきます。それもストレスと円形脱毛症が関係しているといわれるゆえんです。治療では、塩化カルプロニウムによって血流を改善し、頭皮に刺激を与えながら、ストレスを軽減することで、通常は2~3カ月程度で髪はよみがえってきます。
しかし、重症化した場合は、そうは簡単にいきません。円形脱毛が3つ、4つと多発したり、それらが融合したり、さらには脱毛がまつ毛や体毛など全身に及ぶほど症状が進行してしまうと、治療が長期にわたることは珍しくありません。
軽度の円形脱毛症では、職場や家庭環境などに悩むことがあり、ご本人もある程度のストレスを感じ取っているのが一般的です。ところが、重症化した人の中にはストレスを自覚しないケースもあるのです。
ストレスがないのに円形脱毛症になる・・・。これは、無意識のうちにストレスがたまっているケースが多く、医療機関におけるストレス評価テストにおいて、毎日飛び込み営業で過重なストレスを感じている会社員と同程度の評価結果が得られることからもわかります。
無意識のストレスは自分自身で解消するのは難しく、放っておくと症状は重くなっていきます。円形脱毛の症状が出たときには、早めに医療機関で適切な治療を受けることが望ましいといえます。
多発型や融合型の円形脱毛症の治療には、ステロイド外用薬、セファランチン(免疫賦活薬)、グリチロン内服(肝機能の庇護薬)などが用いられ、ステロイドの局所注射や人工的にかぶれを起こす感作療法などもあります。
さらに、重症化している場合には、ビタミンやミネラルの投与、ミノキシジル(育毛薬)の使用、ステロイド内服、血行をよくするための低出力レーザー使用など、症状によってさまざまな治療を追加し組み合わせます。もちろん、カウンセリングも適宜取り入れられます。睡眠時間を十分取ったり、食生活の改善も不可欠です。
まずは医療機関で診察を受け、治療方針は医師とよく相談するとよいでしょう。
vol.32 円形脱毛症にはストレスの自覚がない重症ケースもある

このコラムは、掲載日現在の内容となります。掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

執筆者プロフィール

松井 宏夫

松井 宏夫

医学ジャーナリスト
略歴
1951年生まれ。
医療最前線の社会的問題に取り組み、高い評価を受けている。
名医本のパイオニアであるとともに、分かりやすい医療解説でも定評がある。
テレビは出演すると共に、『最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学』(テレビ朝日)に協力、『ブロードキャスター』(TBS)医療企画担当・出演、『これが世界のスーパードクター』(TBS)監修など。
ラジオは『笑顔でおは天!!』のコーナー『松井宏夫の健康百科』(文化放送)に出演のほか、新聞、週刊誌など幅広く活躍し、NPO日本医学ジャーナリスト協会副理事長を務めている。
主な著書は『全国名医・病院徹底ガイド』『この病気にこの名医PART1・2・3』『ガンにならない人の法則』(主婦と生活社)、『高くても受けたい最新の検査ガイド-最先端の検査ができる病院・クリニック47』(楽書ブックス)など著書は35冊を超える。

商品を見る