vol.37 痛い!怖い!は昔の話、蓄膿症の治療

健康・医療トピックス

「慢性副鼻腔(びくう)炎」は、一般的に「蓄膿(ちくのう)症」として知られている認知度の高い病気です。鼻腔の周りにある副鼻腔という空洞が、かぜなどをきっかけに炎症を起こして、慢性的に膿がたまった状態をいいます。炎症が長引くと「鼻茸(はなたけ)」と呼ばれるポリープができることがあり、鼻詰まりや臭覚の低下といった症状を伴います。

近年、抗生物質の進歩によって、蓄膿症の患者はどんどん減っていると思われていました。ところが、最近ではアレルギー体質が関与した難治性の慢性副鼻腔炎「好酸球性副鼻腔炎」が増加傾向にあり、激減したとはいえない状態です。

年間約30万人が発症する慢性副鼻腔炎のうち、90%の人は「保存療法」(鼻腔内の洗浄)と「薬物療法」で治ります。副鼻腔炎に有効とされるのが、マクロライド系抗菌薬です。少量を3〜6カ月服用し続けることで、炎症が抑えられ、副鼻腔内がもとの状態に戻っていきます。ただし、薬の服用が長期(数カ月)に及ぶことから、肝機能異常といった副作用の有無をチェックするために血液検査を行うことが重要です。

また、2020年3月には、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎の新しい治療薬として「デュピルマブ(商品名デュピクセント)」を皮下注射する方法が承認されました。「鼻茸サイズが縮小した」「においの感覚が戻った」などの評価を得られています。前述した好酸球性副鼻腔炎では、通常の副鼻腔炎に処方される抗生物質が効かないため、ステロイドを内服して炎症をコントロールする必要がありますが、それでも改善しない場合は手術しか選択肢がありませんでした。デュピルマブが登場したことで、症状の改善効果が期待されています。

残り10%の人は「手術療法」になります。当てはまるのは、薬で治らなかった人や大きな鼻茸ができている人です。昔の蓄膿症の手術は、歯茎をはいで副鼻腔の粘膜をすべて取り除く「痛い!怖い!」ものでした。それを知っている人の多くは「絶対手術はイヤ!」と強い抵抗を感じるようですが、現在では痛みや出血が少ない「内視鏡下鼻内副鼻腔手術」が主流となり、患者さんに負担のかからない手術へと大きく変わっています。

だからといって簡単な手術と軽視するのは危険です。副鼻腔は、視神経や脳神経の近くにあるため、慎重を期する必要があります。患者さんの立場から考えると、豊富な手術実績のある医療機関を選ぶのがおすすめです。手術は日帰りで行っているところもありますが、基本的には2泊から3泊の短期滞在手術と考えておくとよいでしょう。過度に恐れすぎず、適切な治療を受けることが、完治に至る近道です。

vol.37 痛い!怖い!は昔の話、蓄膿症の治療

(参考)
『デュピクセント®(デュピルマブ)が鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎に対する. 治療薬として米国 食品医薬品局(FDA)より承認取得』サノフィ株式会社 プレスリリース
https://www.sanofi.co.jp/-/media/Project/One-Sanofi-Web/Websites/Asia-Pacific/Sanofi-JP/Home/press-releases/PDF/2019/20190704.pdf?la=ja
『副鼻腔炎を防ぐためには?』サワイ健康推進課
https://kenko.sawai.co.jp/prevention/201810.html

更新日:2021.01.15

このコラムは、掲載日現在の内容となります。掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

商品を見る