vol.38 紫外線増加で増えているメラノーマ(悪性黒色腫)

健康・医療トピックス
皮膚にできる代表的ながんには、顔にできホクロに似た「基底細胞がん」、紫外線の影響の大きい「有棘(ゆうきょく)細胞がん」と「メラノーマ(悪性黒色腫)」、陰部にできる「パージェット病」があります。

最近はオゾン層の破壊が進み、地上に降り注ぐ紫外線の量が増えているとあって、紫外線の影響の大きい有棘細胞がんとメラノーマがとくに増加していると指摘されています。統計的な数字はないものの、実際、最前線で治療にあたっている医師は「日本で、メラノーマは10年前の10倍にも増えている」と感じとっています。

そのメラノーマは、かつては手足の切断、さらには生死に結びついた皮膚がんとあって皮膚がんの中では最も恐れられています。早期発見に結びつけるためにも、怖いメラノーマを正しく理解するのが大事です。

からだを外界から守っている皮膚は、表面から「表皮」「真皮」「皮下組織」の3つの層からできています。メラノーマは表皮にあって紫外線の害から身を守るメラニンという黒い色素をつくり出すメラノサイトががん化したものです。

メラノーマの早期発見のポイントは、特に生まれつきではなく、途中からできた黒いホクロの周囲にシミができて徐々に大きくなるようだったり、周辺の形が不規則な場合は十分に注意する必要があります。少しでもおかしいと思われるホクロがあった場合は自己判断せずに、まず皮膚科専門医を受診することが、早期発見、早期治療につながります。

黒いホクロに疑問を感じて受診すると、問診や視診が行われます。視診では10倍の拡大鏡「ダーモスコピー」が使われ、即時に診断が確定できるようになりました。このダーモスコピーが診断の精度を大幅にアップさせたからです。

このことにより発見の遅れから手足の切断と言う事も少なくなりました。手術ではがんの端から1~2センチ離して切除していますが、切除しすぎないためにセンチネルリンパ節生検が行われています。センチネルとは見張り番という意味です。がん細胞が転移する最初のリンパ節、つまり、センチネルリンパ節にがん転移がなければそれ以上リンパ節を切除することはありません。ただ、リンパ節に転移があるとリンパ節を切除する以外に化学療法や免疫療法(インターフェロン)などが行われていますが、有効性は低いのが現状です。だからこそ、予防に十分努力する必要があるのです。

予防方法は、「日焼け止めクリームを塗る」などを基本とした紫外線カット作戦をしっかりと行うことです。そして、メラノーマの症状を感じたら、すぐに皮膚がんを数多く治療している病院の皮膚科を受診すべきです。
vol.38 紫外線増加で増えているメラノーマ(悪性黒色腫)

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執筆者プロフィール

松井 宏夫

松井 宏夫

医学ジャーナリスト
略歴
1951年生まれ。
医療最前線の社会的問題に取り組み、高い評価を受けている。
名医本のパイオニアであるとともに、分かりやすい医療解説でも定評がある。
テレビは出演すると共に、『最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学』(テレビ朝日)に協力、『ブロードキャスター』(TBS)医療企画担当・出演、『これが世界のスーパードクター』(TBS)監修など。
ラジオは『笑顔でおは天!!』のコーナー『松井宏夫の健康百科』(文化放送)に出演のほか、新聞、週刊誌など幅広く活躍し、NPO日本医学ジャーナリスト協会副理事長を務めている。
主な著書は『全国名医・病院徹底ガイド』『この病気にこの名医PART1・2・3』『ガンにならない人の法則』(主婦と生活社)、『高くても受けたい最新の検査ガイド-最先端の検査ができる病院・クリニック47』(楽書ブックス)など著書は35冊を超える。

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