vol.39 "あがり症"といわれているあなた...実は社会不安障害かも。

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Vol.39 人前に出ると心臓がドキドキし、顔が赤くなって何も話せなくなってしまう。このような人は"あがり症"だな――と、性格的なものとして片付けられるケースが多いものですが、実は「社会不安障害(SAD:Social Anxiety Disorder)」という精神疾患かもしれません。

いわゆる「対人恐怖症」「赤面恐怖症」「吃音(きつおん)恐怖症」などといわれてきたものです。それは性格ではなく、病気なのです。

社会不安障害は「社会的状況や行為状況に対する顕著な恐怖」と定義されています。米国での社会不安障害の生涯有病率(一生のうちに病気にかかる人の割合)は約14%といわれ、精神・神経疾患の中では「うつ病」「アルコール依存症」に次いで多い疾患となっています。

日本でのSAD人口は約300万人と推定されています。思春期・青年期に発症する人が多く、「ニート」や「引きこもり」といわれる人の中に、SADのために外(社会)に出ていけない人もいるのでは、と考えられています。
思いあたる人は精神科や心療内科を受診しましょう。

診察は、まず問診とともに「社会不安障害評価尺度(LSAS)」を用いた検査が行われます。24項目の質問に対して各0~3点の4段階で点数化していき、総合点が評価となります。うつ病やパニック障害といった他の疾患との鑑別診断もきちんと行われます。

加えて、遺伝的要因も考えられるので家族歴が大いに診断の参考となります。患者さんのみならず、家族にも人前でのスピーチを避けたりする人が多いのです。

治療には「薬物療法」と「認知行動療法」とがあります。特に「薬物療法」は2005年10月から大きく変わりました。それは治療薬として、うつ病の治療薬である「選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)」に社会不安障害の適応が追加されたからです。

それまでの薬物療法の中核は抗不安薬の服用でした。抗不安薬には依存症を引き起こすケースが多かったのです。

脳内の神経伝達にはセロトニンなどの伝達物質が重要な役割を果たしています。しかし、SAD患者さんでは、脳内のセロトニンが不足状態になっているので不安が大きくなってしまうのです。そこで、セロトニンの再取り込みをSSRIで阻害すると、セロトニン量が増加し、不安を抑えてくれるのです。
SSRIは少なくとも1年間は服用します。長く服用することが再発を抑えることにも結びつきます。

一方、「認知行動療法」は、患者さんに今の精神状態が病気であることを認知してもらい、実際に行動を繰り返すことで患者さんの適応力を高めていく治療法です。
実際の治療ではこの2つの治療法を併用することが多くなっています。例えば、SSRIを服用して不安を和らげ、人前でスピーチを行う。すると、人前でドキドキする度合いがぐんと低くなります。この体験を繰り返していくと、最終的には薬を服用することなくスピーチができるようになるのです。

その治療経過をチェックするときも、社会不安障害評価尺度(LSAS)が用いられています。
  • このコラムは、掲載日現在の内容となります。
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