vol.40 胃がん治療で急増中の「内視鏡的粘膜下層剥離(はくり)術(ESD)」

LINEで送る 一覧に戻る
Vol.40 胃がん治療で急増中の「内視鏡的粘膜下層剥離(はくり)術(ESD)」 2006年8月6日付の読売新聞に、同紙調査による「胃がん治療数の多い病院」が公表されていました。そのリストで目を引いたのは、早期の胃がん治療法である内視鏡治療のうちESDが非常に多く行われていたことで、最も数多く行っていた国立がんセンター中央病院では、05年に内視鏡治療502例のうち 490例もがESDで行われていたのです。ほかの医療施設でも今では、内視鏡治療といえばESDという状況になってきています。

このESDとは「内視鏡的粘膜下層剥離術」、あるいは「内視鏡的粘膜切開剥離法」といわれるものです。

口から内視鏡を挿入して行う早期の胃がん治療はこれまで、がん病巣の下に生理食塩水を注入して病巣を浮き上がらせ、ループ状のワイヤ(スネア)を病巣に投げ縄のように引っかけて根っこでワイヤを締め、高周波電流を流して焼き切る「内視鏡的粘膜切除術(EMR)」が中心でした。

ただ、これには大きな弱点が……。それは2cmを超えて3cm程度のがんは、1回で切除できないため2~3回に分けて粘膜切除を行っていましたが、その場合、がんの取り残しがでるケースがあったのです。そのため、標準治療では直径2cmまでしか対象とならず、それ以上の場合は腹腔鏡下手術、もしくは開腹手術となっていました。

ところが、患者側にしてみると、最も早期のがんなのに、なぜ内視鏡で切除できないのか、なぜ2cmを超えると開腹手術になるのか――という悔しい思いは消せなかったのです。

そのEMRの弱点を解消すべく考案されたのが、ITナイフという電気メスです。胃の壁は0.7mmの厚さで、内側から粘膜、粘膜下層、筋層、漿膜(しょうまく)下層、漿膜の5層になっています。ESDは、その粘膜にできたがんを粘膜下層にITナイフを入れてはぎ取る方法で、国立がんセンター中央病院では直径13cmのがんまで切除に成功しています。

もう少し詳しく紹介すると、まず、がん病巣下にヒルアロン酸を注入してがん病巣を浮き上がらせます。次に針状ナイフで1カ所に孔(あな)を開け、その孔からITナイフを入れてがん病巣の周辺を切っていく。切除する外周を切り終えると粘膜は縮むので、溝ができます。その溝からITナイフを粘膜下層に入れて粘膜を剥離するのです。

時間的には、2cmまでであれば20分程度で終了しますが、9cm程度になると平均3時間程度はかかるようです。

ただし、ITナイフにも弱点がないわけではありません。出血と穿孔(せんこう)という合併症があります。剥離がちょっと深くなると胃壁に孔を開けてしまうことがあるのです。

2003年にITナイフが製品化されたのを機に、ESDは大いに広がりをみせましたが、やはり、この治療を希望する場合は、十分な経験と技量のある施設・医師を選択すべきです。もちろん、十分なインフォームド・コンセント(※) は言うに及びません。

※具体的な治療方法について医師から説明を受け、相談しながら治療を受けること

  • このコラムは、掲載日現在の内容となります。
    掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

この記事をシェアする

LINEで送る
blank 商品のご購入はこちら
このページの先頭へ戻る