vol.43 "治る認知症"と呼ばれる「特発性正常圧水頭症」を知っておこう!!

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Vol.43

高齢化社会に伴って、認知症患者は増え続けています。認知症は治らない疾患と思われがちですが、治療可能なタイプもあります。そのひとつが「特発性正常圧水頭症(iNPH)」です。特発性正常圧水頭症でありながら、正しく診断されず、一般的なアルツハイマー型の認知症やパーキンソン病と思われている患者さんは、全体の7〜8%を占めると考えられています。特発性正常圧水頭症の場合、手術で改善が見込めますので、できるだけ早く見つけ出して、適切な治療を行うことが大切です。

水頭症とは、頭蓋(ずがい)内を循環して脳や脊髄を保護している脳脊髄液が異常に増える疾患です。何らかの原因で、脳脊髄液が過剰に産出されたり、髄液の循環が悪くなったり、髄液の吸収が悪くなったりすることで起こります。頭蓋内圧が上昇し、頭痛や吐き気などの症状がみられ、急性の場合は生命にかかわります。

ところが、この急性の水頭症に対し、慢性的状況となる特発性正常圧水頭症の場合は、頭蓋内圧は正常なのです。「特発性」と名称にあるように原因ははっきりしていません。三大症状としては「歩行障害」「尿失禁」「認知症様症状」が挙げられます。

1. 歩行障害

歩幅が狭く、すり足歩行で、足の幅は大きく広がり、いわゆる「ガニ股歩き」になります。

2. 尿失禁

程度の差はありますが、基本的に尿意に気づきにくくなります。

3. 認知症様症状

もの忘れがあったり、ボーッとしていたりと、軽度の認知症のような症状が起こります。

受診する診療科は神経内科、脳神経外科になります。ただ、この病気自体があまり知られていないこともあって、専門医でも診断を間違えるケースがあります。認知症と診断された場合は、誤診の防止のために「特発性正常圧水頭症ということはありませんか?」と家族が専門医に質問するのもひとつの手です。

特発性正常圧水頭症では、CT(コンピューター断層撮影)、MRI(磁気共鳴画像装置)などの画像診断のほか、疑いが濃厚になった時点で、「タップテスト」が行われます。タップテストとは、腰椎から脊髄液を30mlほど採取して、症状改善がみられるかどうかを判断するテストです。採取後、2~3日で歩行などの動きが良くなった人は「水頭症」と診断されるとともに、手術(シャント術)がすすめられます。

シャント術には主に3種類ありますが、高齢者に多い特発性正常圧水頭症の患者さんには、より負担が少ない「脳室−腹腔シャント術」が多く行われています。脳室−腹腔シャント術とは、余分な髄液がたまった脳室にカテーテルを通して、腹腔まで流す手術です。たまった量以上に脳脊髄液を流すと頭蓋内圧が低下し、低髄圧症候群を起こしてしまうので、そのときは取り付けたバルブで調節します。術後は、歩行障害は早期に改善し、認知症様症状も1年もたつと大分改善するそうです。

超高齢化社会の日本では、早くからこの病気の研究・治療が進んでおり、2004年に世界初の『特発性正常圧水頭症診療ガイドライン』が発刊されました。それでもまだ、治療を受けられる患者さんは全体の1割にも満たないといいます。そこで2020年3月には最新の治療・診断指針を集約した『特発性正常圧水頭症診療ガイドライン 第3版』がリリースされました。これを機に医療従事者の理解が深まれば、正しい診断と治療を受けられる患者さんも増えるのではないでしょうか。

(参考)
『突発性特発性正常圧水頭症診療ガイドライン 第3版』日本正常圧水頭症学会
https://www.m-review.co.jp/book/detail/978-4-7792-2376-1
『国内の知見を結集し、ガイドラインを発行!特発性正常圧水頭症の治療と診断におけるグローバルスタンダードを提供』順天堂
https://www.juntendo.ac.jp/co-core/research/nakajima.html

更新日:2021.06.18

  • このコラムは、掲載日現在の内容となります。
    掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

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