vol.44 自然治癒にまかせず、五十肩も治療すべし!!

健康・医療トピックス
ある日、突然、肩関節に痛みが走ったり、腕が思うように動かないといった症状が起きるのが『五十肩』です。これは肩関節の炎症が原因の痛みで、正しくは肩関節周囲炎といいます。
40代・50代の人に多く発生し、「ほうっておいても半年、長くても1年もすれば治る」といわれています。確かにそうではあるものの、そのままにしておくのは決して良い方法ではありません。
自然治癒したようにみえても、実は痛くならないように肩を使うようになっただけで、炎症の痛みはとれても関節の動く範囲が制限される後遺症が残る場合もあります。これは決して歓迎すべき治り方ではないのです。
さらに、肩関節周囲の疾患には五十肩のみならず、『腱板断裂(けんばんだんれつ)』や『石灰性腱板炎』などもあるので、正しい診断と五十肩の前向きな治癒のために、早期診断・早期治療を実践すべきです。
正しい診断がつくと、五十肩の治療には、「安静」「薬物療法」「運動療法」が行われます。
痛みが強いときには肩が動かせません。このときは、まずは安静を守ります。三角巾を使って肩患部を固定し、左右の肩の高さを平行にして力を抜くことで、関節組織に加わる刺激を極力減らすのです。
さらに痛みが強く続く場合は、薬物療法を加えます。炎症を鎮めるには「消炎鎮痛薬を内服します。強力に炎症を鎮めるには「ステロイド薬」の患部への直接の注射があります。
これで痛みが軽くなったからといって、自己判断でリハビリの運動療法に入るのは大きな間違いです。炎症が治まったわけではありません。
主治医と相談し、痛みが和らいできた時点から「運動療法」に入ります。
運動療法の基本はリラクゼーションです。肩周辺の筋肉からすっかり力を抜いて、肩関節を慢性的ストレス状態から解放します。
例えば、深くお辞儀をした姿勢から腕をダラッと垂らすと腕の重みをしっかり感じます。これだけで肩関節も伸び、インナーマッスルといわれる内側の筋肉が自然と収縮します。
さらに、腱板トレーニングがあります。テーブルに肘をつける姿勢で座って、肘を支点にして腕を左右にゆっくりとテーブルの上をふくように水平移動させます。そのようなストレッチを続けることが五十肩の改善に結びつくのです。

vol.44 自然治癒にまかせず、五十肩も治療すべし!!

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執筆者プロフィール

松井 宏夫

松井 宏夫

医学ジャーナリスト
略歴
1951年生まれ。
医療最前線の社会的問題に取り組み、高い評価を受けている。
名医本のパイオニアであるとともに、分かりやすい医療解説でも定評がある。
テレビは出演すると共に、『最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学』(テレビ朝日)に協力、『ブロードキャスター』(TBS)医療企画担当・出演、『これが世界のスーパードクター』(TBS)監修など。
ラジオは『笑顔でおは天!!』のコーナー『松井宏夫の健康百科』(文化放送)に出演のほか、新聞、週刊誌など幅広く活躍し、NPO日本医学ジャーナリスト協会副理事長を務めている。
主な著書は『全国名医・病院徹底ガイド』『この病気にこの名医PART1・2・3』『ガンにならない人の法則』(主婦と生活社)、『高くても受けたい最新の検査ガイド-最先端の検査ができる病院・クリニック47』(楽書ブックス)など著書は35冊を超える。

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