vol.48 本当は怖い「ドライマウス」

健康・医療トピックス
人の心がかさついてしまい、潤いを欲している時代。 一方、からだのほうも乾燥化しているようです。

・口の乾きが3カ月以上毎日続いている。
・あごの下が繰り返し、あるいはいつも腫れている。
・乾いた食べ物を飲み込むときに、しばしば水を飲む。
・水をよく飲む。
・夜間に起きて水を飲む。
・乾いた食品がかみにくい。
・口の中がネバネバする。
・口の中が粘って話しにくい。
・口臭がする。
・義歯で口の中が傷つきやすい。

(鶴見大学歯学部附属病院ドライマウス専門外来、ドライマウス問診票より)

この項目にいくつ「イエス」がありましたか。イエスが多いほど、『ドライマウス』の可能性が高くなります。
ドライマウスとは『口腔乾燥症』。唾液量の減少と質の異常をきたす病気で、口の中が乾燥して様々な不快症状を引き起こし、QOL(生活の質)を低下させます。推定患者数はドライアイで悩む人とほぼ同じ800万人といわれています。しかし、欧米の疫学調査によると人口の25%にあたる患者がいるという報告があるので、それからすると日本には3000万人のドライマウスに悩む人々がいることになります。

「たかが口の乾燥じゃないの」と思っていると・・・・怖いことになります。「たかが」ですまない怖い病気のサインになっているケースもあるからです。
ドライマウスの検査から糖尿病やシェーグレン症候群(口腔や眼球の乾燥症状を特徴とする自己免疫性疾患)が発見されるなど、病気の症状としてのドライマウスが現れてきます。
また、高齢者の場合は、食べ物をスムーズに飲み込めなくなり、気道に誤って食べ物が入って誤嚥性(ごえんせい)肺炎を起こして亡くなることも珍しくありません。何といっても、75歳以上の高齢者の死因の第1位はこの誤嚥性肺炎です。

このように、ドライマウスの原因としては、「糖尿病」「放射線障害」「脳血管障害」「老化」「筋力の低下」「更年期障害」「薬の副作用」「シェーグレン症候群」「ストレス」などがあり、単独原因で起きることもあれば複合して起きることもあります。
最も多いのは、薬の副作用によるドライマウスです。“生活習慣病のデパート”という人々が増える中、薬を複数服用している人は当然その危険性も高くなっています。薬の副作用が明らかになった場合は、主治医と薬の変更や減量を相談すると良いでしょう。
そのほか、食生活がやわらかい食べ物中心となり、子ども時代からよくかまないためにドライマウスの低年齢化も進んでいます。唾液はあごや舌の筋肉をしっかり動かすと分泌が促進されます。ところが、あごや舌の筋肉を使わないでいると、唾液がどんどん出ない状態へと、すべてが悪循環に――。すると、免疫力が低下して風邪などの感染症にかかりやすくなったり、味覚障害を起こしたりしやすくなります。

ドライマウスは単に口の中の病気ではなく、疾患のサインとして全身疾患にも結び付くこともあるので、たかがドライマウスと思わず、しっかりと検査や治療を受けるべきです。その場合、診療科はドライマウスに力を注いでいる歯科になります。

vol.48 本当は怖い「ドライマウス」

このコラムは、掲載日現在の内容となります。掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

執筆者プロフィール

松井 宏夫

松井 宏夫

医学ジャーナリスト
略歴
1951年生まれ。
医療最前線の社会的問題に取り組み、高い評価を受けている。
名医本のパイオニアであるとともに、分かりやすい医療解説でも定評がある。
テレビは出演すると共に、『最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学』(テレビ朝日)に協力、『ブロードキャスター』(TBS)医療企画担当・出演、『これが世界のスーパードクター』(TBS)監修など。
ラジオは『笑顔でおは天!!』のコーナー『松井宏夫の健康百科』(文化放送)に出演のほか、新聞、週刊誌など幅広く活躍し、NPO日本医学ジャーナリスト協会副理事長を務めている。
主な著書は『全国名医・病院徹底ガイド』『この病気にこの名医PART1・2・3』『ガンにならない人の法則』(主婦と生活社)、『高くても受けたい最新の検査ガイド-最先端の検査ができる病院・クリニック47』(楽書ブックス)など著書は35冊を超える。

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