vol.51 パーキンソン病と間違えられやすい『本態性振戦』

健康・医療トピックス
手の震えがあるので受診し、難病のパーキンソン病と診断されて治療を受けていたら、実は『本態性振戦』だった、というケースがあります。両疾患とも震えが症状に出るので間違えられやすいのです。 事実、神経内科の専門医の間からもパーキンソン病と間違えられているケースがかなりあるのではと指摘されています。正しく診断されて治療が行われないと、良くなるものも良くなりません。 本態性振戦とは、病名に「本態性」とあるように、原因がわかっていない病気で、ある種の体質なのでは・・・・と考えられています。 症状は患者さんによって違いはありますが、最も多い症状は「両手を伸ばしたときに手が細かく震える」「首が細かく震える」「声が震える」の3つの症状です。 『パーキンソン病』は、中脳の黒質というところにある神経細胞の変性によって起こる病気です。進行すると「振戦」「固縮」「動作緩慢」「姿勢保持障害」という特徴的な4大症状がそろってきます。この振戦という症状が本態性振戦と間違えられる原因なのです。

正確に両疾患を診断するポイントは6点あげられます。

vol.51 パーキンソン病と間違えられやすい『本態性振戦』

ポイント (1)

パーキンソン病の震えはからだの左右差があるのに対し、本態性振戦は比較的左右対称に出てきます。

ポイント (2)

パーキンソン病ははしを持っても震えることなくゆっくりではありますが食事ができます。一方、本態性振戦ははしを持つと手が震えて食事が難しい状態になります。

ポイント (3)

パーキンソン病は安静時に手が震えます。一方、本態性振戦は動作をしたときに手が震えます。

ポイント (4)

パーキンソン病には首の震えはありませんが、本態性振戦にはあります。

ポイント (5)

「歩行障害」「動作緩慢」はパーキンソン病にはありますが、本態性振戦にはありません。

ポイント (6)

家族歴はパーキンソン病にはありませんが、本態性振戦にはあります。

本態性振戦は症状が軽く生活に支障がなければ治療の必要はありませんが、生活に支障が出るほど症状の強くでる人は治療が必要です。
以上のような点を十分にチェックし、疑問があれば主治医に聞き、納得いかない場合は、セカンドオピニオン(主治医以外の専門医の意見を聞く)をとるとよいでしょう。

このコラムは、掲載日現在の内容となります。掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

執筆者プロフィール

松井 宏夫

松井 宏夫

医学ジャーナリスト
略歴
1951年生まれ。
医療最前線の社会的問題に取り組み、高い評価を受けている。
名医本のパイオニアであるとともに、分かりやすい医療解説でも定評がある。
テレビは出演すると共に、『最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学』(テレビ朝日)に協力、『ブロードキャスター』(TBS)医療企画担当・出演、『これが世界のスーパードクター』(TBS)監修など。
ラジオは『笑顔でおは天!!』のコーナー『松井宏夫の健康百科』(文化放送)に出演のほか、新聞、週刊誌など幅広く活躍し、NPO日本医学ジャーナリスト協会副理事長を務めている。
主な著書は『全国名医・病院徹底ガイド』『この病気にこの名医PART1・2・3』『ガンにならない人の法則』(主婦と生活社)、『高くても受けたい最新の検査ガイド-最先端の検査ができる病院・クリニック47』(楽書ブックス)など著書は35冊を超える。

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