vol.60 前立腺がんの放射線療法で注目される、IMRTの実力!
健康・医療トピックス
2008年4月、放射線療法のひとつが、保険適用となりました。IMRT(強度変調放射線治療)がそれ――。放射線療法の幅が広がるとともに、より副作用が少なくなった、と注目を集めています。とりわけ、患者さんの多い前立腺がんでは、IMRTを積極的に選択できるようになったと喜びの声は大きくなっています。
放射線療法は、「外照射療法」と「組織内照射療法(小線源療法)」の二つに大別できます。外照射療法はからだの外から放射線を照射する方法で、組織内照射療法は放射線を放出するカプセルを患部に埋め込み、体内から放射線を患部にあてる治療です。
IMRTは外照射療法のひとつで、現在の主な治療対象は前立腺がんです。注目されるのは、これまでの外照射療法より強い放射線をがんの部分に照射でき、周辺の正常組織には放射線があまりあたらないようにできるからです。つまり、がんをよりしっかりたたき、副作用を少なくするのです。 前立腺がんは直腸を囲むように腫瘍が存在します。従来の方法では同じ方向からの放射線は均一なので、正常な直腸にも同じ強さの放射線が照射されてしまっていました。
ところが、IMRTは照射領域を調節するマルチリーフコリメータという金属板が動いて放射線に強弱がつけられます。しかも、5方向から患部の形に合わせて放射線を十分に照射できるので、正常組織への照射は抑えられるのです。
しかし、IMRTは治療の準備に20日間くらいを必要とします。それは、どこにどれだけの放射線を照射するかを、CT(コンピュータ断層撮影)の画像を用い緻密な治療計画を立てるからです。
治療計画どおりに治療がスタートしてからも、週5回、7~8週間と通院期間は長くかかります。
治療に時間がかかるので、3泊4日の入院で大丈夫な放射線療法の1つ「小線源療法」のほうが良い、と思う人もいるでしょう。ただ、小線源療法には悪性度の低いことなど、いくつも適応条件があります。それがクリアできない場合でもIMRTなら放射線療法が受けられるのです。
IMRTのメリットとしては、(1)「より患部に放射線が照射され、治療効果が高い」、(2)「がんの悪性度の高いものまで対応できる」、(3)「100万円前後の治療費用が保険適用で35万円程度に」といったことがあります。
一方、デメリットは、(1)「通院回数が多い」、(2)「治療の準備に時間がかかる」、(3)「晩期障害がでる可能性がある」などです。
副作用についてはかなり抑えられ、直腸の副作用として晩期障害(数年経ってから出血がみられる)のでるケースがあるものの、レーザー治療で対応できます。
IMRTが受けられる施設は、北大病院、癌研有明病院、東京女子医大病院、慶應大学病院、東大病院、国立がんセンター東病院、千葉県がんセンター、名市大病院、愛知県がんセンター、京大病院、先端医療センターなどです。
放射線療法は、「外照射療法」と「組織内照射療法(小線源療法)」の二つに大別できます。外照射療法はからだの外から放射線を照射する方法で、組織内照射療法は放射線を放出するカプセルを患部に埋め込み、体内から放射線を患部にあてる治療です。
IMRTは外照射療法のひとつで、現在の主な治療対象は前立腺がんです。注目されるのは、これまでの外照射療法より強い放射線をがんの部分に照射でき、周辺の正常組織には放射線があまりあたらないようにできるからです。つまり、がんをよりしっかりたたき、副作用を少なくするのです。 前立腺がんは直腸を囲むように腫瘍が存在します。従来の方法では同じ方向からの放射線は均一なので、正常な直腸にも同じ強さの放射線が照射されてしまっていました。
ところが、IMRTは照射領域を調節するマルチリーフコリメータという金属板が動いて放射線に強弱がつけられます。しかも、5方向から患部の形に合わせて放射線を十分に照射できるので、正常組織への照射は抑えられるのです。
しかし、IMRTは治療の準備に20日間くらいを必要とします。それは、どこにどれだけの放射線を照射するかを、CT(コンピュータ断層撮影)の画像を用い緻密な治療計画を立てるからです。
治療計画どおりに治療がスタートしてからも、週5回、7~8週間と通院期間は長くかかります。
治療に時間がかかるので、3泊4日の入院で大丈夫な放射線療法の1つ「小線源療法」のほうが良い、と思う人もいるでしょう。ただ、小線源療法には悪性度の低いことなど、いくつも適応条件があります。それがクリアできない場合でもIMRTなら放射線療法が受けられるのです。
IMRTのメリットとしては、(1)「より患部に放射線が照射され、治療効果が高い」、(2)「がんの悪性度の高いものまで対応できる」、(3)「100万円前後の治療費用が保険適用で35万円程度に」といったことがあります。
一方、デメリットは、(1)「通院回数が多い」、(2)「治療の準備に時間がかかる」、(3)「晩期障害がでる可能性がある」などです。
副作用についてはかなり抑えられ、直腸の副作用として晩期障害(数年経ってから出血がみられる)のでるケースがあるものの、レーザー治療で対応できます。
IMRTが受けられる施設は、北大病院、癌研有明病院、東京女子医大病院、慶應大学病院、東大病院、国立がんセンター東病院、千葉県がんセンター、名市大病院、愛知県がんセンター、京大病院、先端医療センターなどです。

※このコラムは、掲載日現在の内容となります。掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。
執筆者プロフィール

松井 宏夫
医学ジャーナリスト
- 略歴
- 1951年生まれ。
医療最前線の社会的問題に取り組み、高い評価を受けている。
名医本のパイオニアであるとともに、分かりやすい医療解説でも定評がある。
テレビは出演すると共に、『最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学』(テレビ朝日)に協力、『ブロードキャスター』(TBS)医療企画担当・出演、『これが世界のスーパードクター』(TBS)監修など。
ラジオは『笑顔でおは天!!』のコーナー『松井宏夫の健康百科』(文化放送)に出演のほか、新聞、週刊誌など幅広く活躍し、NPO日本医学ジャーナリスト協会副理事長を務めている。
主な著書は『全国名医・病院徹底ガイド』『この病気にこの名医PART1・2・3』『ガンにならない人の法則』(主婦と生活社)、『高くても受けたい最新の検査ガイド-最先端の検査ができる病院・クリニック47』(楽書ブックス)など著書は35冊を超える。