vol.64 目で確認できる早期発見したい舌がん

健康・医療トピックス
がんは全身のいたるところにできますが、その2~4%を占めているのが口の中にできる「口腔(こうくう)がん」です。年間約6000人が口腔がんにかかり、約3000人が生命を失っています。
口腔がんには「舌がん」「歯肉がん」「口腔底がん」「頬(ほお)粘膜がん」など、いくつかの種類があります。その中で、患者数の50~60%を占め、最も患者の多いのが舌がんです。
「口の中だから鏡で見れば気付くし、違和感があるので分かる」と、思われがちです。しかし実際には、口内炎だと思って放置してしまい、がんが進行してから受診するケースが多いのです。

舌がんは、ほかのがんと同じで、治療法は「手術」「放射線療法」「化学療法」の3本柱です。初期や早期がんの段階では、手術をしてもからだへの負担は少ないですが、早期がんで部分切除をすると術後に多少のしゃべりにくさがでてきます。
手術と同等に、大きな役割を担っているのが放射線療法、特に小線源療法が効果的です。これは舌に放射線を出す針を刺したり、放射線を出す金粒子を患部に埋め込んだりする治療法で、成果は手術と同等で80~90%の治癒率です。
しかし、がんが進んでしまうと大手術になり、QOL(生活の質)は下がってしまいます。味覚のみならず、言葉も失ってしまいます。

では、早期発見のためには、どんな症状に気付いたら受診すべきなのでしょうか。
vol.64 目で確認できる早期発見したい舌がん

(1) 口内炎が2週間たっても治らないとき!

口内炎は1週間から、長くても10日程度で治ります。2週間以上治らないことは、まずありません。2週間以上治らないときは口内炎ではない、と思って耳鼻咽喉科か口腔外科を受診してください。

(2) 舌、歯肉、ほおの粘膜などに白斑がある!

口腔がんになる一歩手前の状態に「白板症(はくばんしょう)」があり、白斑のようになります。この段階は問題ないですが、そこに赤色が混ざってくるとがんが疑われます。すぐに受診しましょう。

(3) 舌、歯肉、顎の粘膜などに赤斑がある!

赤斑ができる「紅板症(こうばんしょう)」は、前がん状態ですが、その50%ががん化する恐れがあります。主治医にしっかりチェックを受けましょう。

このほか(4)「舌から出血がある」、(5)「しこりや潰瘍ができた」、(6)「顎が腫れて入れ歯が合わなくなった」、(7)「舌などにしびれやまひ感がある」、(8)「物がかみづらい」、(9)「舌が動かしにくい」などの症状に気付いたら迷わず専門医を受診しましょう。

このコラムは、掲載日現在の内容となります。掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

執筆者プロフィール

松井 宏夫

松井 宏夫

医学ジャーナリスト
略歴
1951年生まれ。
医療最前線の社会的問題に取り組み、高い評価を受けている。
名医本のパイオニアであるとともに、分かりやすい医療解説でも定評がある。
テレビは出演すると共に、『最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学』(テレビ朝日)に協力、『ブロードキャスター』(TBS)医療企画担当・出演、『これが世界のスーパードクター』(TBS)監修など。
ラジオは『笑顔でおは天!!』のコーナー『松井宏夫の健康百科』(文化放送)に出演のほか、新聞、週刊誌など幅広く活躍し、NPO日本医学ジャーナリスト協会副理事長を務めている。
主な著書は『全国名医・病院徹底ガイド』『この病気にこの名医PART1・2・3』『ガンにならない人の法則』(主婦と生活社)、『高くても受けたい最新の検査ガイド-最先端の検査ができる病院・クリニック47』(楽書ブックス)など著書は35冊を超える。

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