vol.75 変形性膝関節症は年のせいばかりではない!

健康・医療トピックス
膝の痛みを引き起こす病気はいろいろあるものの、最も多いのが『変形性膝関節症』。60歳以上の高齢者に患者さんが多いとあって、「加齢」に伴って起きる、つまり、原因は「年のせい」として片付けられています。たしかにその点は大いにあるものの、40代から症状が始まっているケースもあります。
変形性膝関節症を正しく理解すれば、生活習慣を改善することで、症状に苦しんだり車椅子生活になったりすることも避けられます。
要介護、寝たきりにも結びつく変形性膝関節症のメカニズムを説明します。
膝関節は大腿骨と脛骨を結ぶ関節で、この二つの骨が直接ぶつからないように、各先端部分は弾力性のある関節軟骨でできています。さらに、二つの関節軟骨にクッションの役割をはたすのが半月板です。
軟骨が擦り減ると人間の体が反応して余分な骨、骨棘(こつきょく)ができ、ツルツルだった関節面がデコボコになり動くと痛みを起こすようになります。また、炎症を起こし、膝に水がたまるケースもあります。
症状は、「目覚めて動き始めに膝が痛む」、「立ちあがろうとすると膝が痛む」というものから、進行するとともに「ジッとしていても膝が痛む」というさらに辛い状態になっていきます。

この変形性膝関節症は、加齢以外にもなりやすい人が分かっています。

vol.75 変形性膝関節症は年のせいばかりではない!

肥満傾向にある人……

膝にかかる体の圧力は体重の3~5倍。体重70kgの人であれば、膝に210~350kgの圧力がかかります。肥満気味、肥満の人はそれだけ膝への負担が大きいのです。

運動不足の人……

脚の筋力が衰えていると膝にかかる負担が強くなります。

O脚……

日本人は90数%がO脚。O脚の人は脚の内側に負担がかかりやすいのです。

女性……

男性に比べて筋力が弱いことのほか、女性ホルモンの影響も指摘されています。

両親のどちらか、もしくは2人とも変形性膝関節症……

遺伝的要素が影響していることも分かってきました。

重い荷物を扱うことが多い……

腰のみならず膝にもより大きな圧力が加わります。

激しいスポーツで膝を損傷した……

激しいスポーツで半月板や靭帯を損傷してしまうと、30代でも変形性膝関節症になります。

変形性膝関節症は徐々に進行するので、早期に治療を行えば、軟骨の変形を遅らせることもできます。
変形性膝関節症の予防・改善は「肥満解消」「適度な運動」が、まず大事なこととなります。予防であればすぐに行動に移せますが、すでに膝の痛みがある場合、整形外科で正しい診断を受け、変形性膝関節症であれば、そこで指導を受けるのが基本です。
筋力トレーニングとしての運動は、プールでのウォーキングがおすすめです。浮力があって膝にはやさしいので推奨されています。あとは、大腿四頭筋を強化するストレッチ法を症状に応じて行うとよいでしょう(※)。軽症の場合は、大腿四頭筋に筋力がつくだけで膝の痛みが解消します。
痛みを抑えるには、「非ステロイド性抗炎症薬」の外用薬、内服薬などや「ヒアルロン酸の関節内注射」が行われます。それと同時に、O脚の矯正に作用する「足底板(靴の中敷タイプと足に装着するタイプがある)」や「サポーター(膝関節の負担を少なくする)」を使ったりします。ただし、サポーターを常に装着しているとサポーターに頼ってしまい、筋力が低下してしまうので、専門医の指導をしっかり受ける必要があります。

(※)大腿四頭筋を強化するストレッチ法

『太ももを上げる方法』
1. あおむけに寝る
2. 片方の脚を30度くらい上げる
3. そのまま10秒ほど止める
4. 元に戻す(左右とも各4~5回行う。ただし、症状に応じて増減し、ひざを痛めないように注意してください)

『ひざを伸ばす方法』
1. あおむけに寝る
1. いすに座る
2. 片方の脚を水平に伸ばす
3. そのまま10秒ほど止める
4. 元に戻す(左右とも各4~5回行う。テレビを見ながらでもOK。ただし、ひざを痛めないように症状に応じて適宜増減してください)

このコラムは、掲載日現在の内容となります。掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

執筆者プロフィール

松井 宏夫

松井 宏夫

医学ジャーナリスト
略歴
1951年生まれ。
医療最前線の社会的問題に取り組み、高い評価を受けている。
名医本のパイオニアであるとともに、分かりやすい医療解説でも定評がある。
テレビは出演すると共に、『最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学』(テレビ朝日)に協力、『ブロードキャスター』(TBS)医療企画担当・出演、『これが世界のスーパードクター』(TBS)監修など。
ラジオは『笑顔でおは天!!』のコーナー『松井宏夫の健康百科』(文化放送)に出演のほか、新聞、週刊誌など幅広く活躍し、NPO日本医学ジャーナリスト協会副理事長を務めている。
主な著書は『全国名医・病院徹底ガイド』『この病気にこの名医PART1・2・3』『ガンにならない人の法則』(主婦と生活社)、『高くても受けたい最新の検査ガイド-最先端の検査ができる病院・クリニック47』(楽書ブックス)など著書は35冊を超える。

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