vol.77 若い人も安心できない帯状疱疹

健康・医療トピックス

帯状疱疹は、子どもの頃に水疱瘡(みずぼうそう)にかかった際に、神経節に棲みついた水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)が再活性化することによって起こる病気です。VZVの再活性化は免疫力の低下したときに起きるため、多くの人々は60代、70代といった高齢者の病気と思っているようです。ところが、高齢者の病気とばかりはいっていられない調査結果が、このほど宮崎県皮膚科医会から発表されました。

1997年から2006年にかけて行われた「帯状疱疹に関する大規模疫学調査(宮崎スタディ)」では、10年間にわたって県内の患者、48388人のデータを解析しました。その調査結果によると、10年間の発症率の平均は人口1000人あたり4.15人。1997年と2006年では、3.60と4.55で、この10年で発症率は大変増加しているのです。

年齢別の発症率は、0-9歳2.45、10-19歳2.86、20-29歳2.27、30-39歳1.96、40-49歳2.53、50-59歳 5.23、60-69歳6.95、70-79歳7.84、80-89歳6.93、90歳以上5.37。ピークとなるのは50-70代ですが、山は二つあり、もう一つは10代の2.86です。10代という若い年代に多いことについては分析はなされていませんが、ストレスによる免疫力の低下が原因になっていると思われます。また、ストレスが多いと思われる30代が少ないのは、30代の人々は水疱瘡の子どもと接する機会が多く、それがブースター効果(追加免疫効果)となっているのではないかと考えられています。

今、発症する人が増えている帯状疱疹の治療は、VZVの増殖を抑える抗ウイルス薬の投与が中心。帯状疱疹は免疫力の低下が大きく関係しているので、抗ウイルス薬投与中は安静にするのが基本です。状態によっては入院も必要です。激しい痛みを伴う場合は我慢せず、鎮痛剤を的確に使って緩和させることがポイントになります。

若くても油断は禁物。ピリピリ、チクチクした痛みが起こり、その4、5日後に身体の左右どちらかの神経にそって帯状に赤い斑点と水疱ができたら、帯状疱疹を疑ってすぐに皮膚科へ行きましょう。治療が遅れると後遺症が生じる場合があるので、赤い斑点が現れて72時間以内に治療を行うのが鉄則です。

後遺症の一つが、皮膚の症状が消えても激しい痛みが残る「帯状疱疹後神経痛」です。ほとんどの場合は3ヶ月以内に治まりますが、人によっては10年以上も苦しめられるケースもあります。そのほかにも、髄膜炎、角膜炎、耳鳴り、めまい、顔面神経まひ、排泄障害、排尿障害などが生じることもあります。

日本では80歳までに3人に1人が帯状疱疹にかかるといわれています。同じく帯状疱疹の発生率が高いアメリカでは60歳以上に対して帯状疱疹ワクチンが認可され、接種が推奨されています。ワクチン予防接種試験では、帯状疱疹の発症率が約51%、帯状疱疹後神経痛が約66%減少したと報告されています。

日本でも2016年から50歳以上の人を対象に帯状疱疹ワクチンを接種できるようになりました。帯状疱疹ワクチンとは、昔からあった水痘ワクチンのことです。1回の接種で、10年ほど効果が持続します。帯状疱疹を完全に防ぐものではありませんが、発症したとしても軽症で済み、後遺症予防にも役立つといわれています。ワクチン接種を検討される方は、帯状疱疹に詳しい医師にご相談ください。

vol.77 若い人も安心できない帯状疱疹

(参考)
『帯状疱疹発症予防のためにワクチンの接種ができるようになりました』高知医療センター
『帯状疱疹の治療』帯状疱疹.jp
https://taijouhoushin.jp/treatment/

更新日:2021.07.16

このコラムは、掲載日現在の内容となります。掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

商品を見る