vol.79 子宮頸がんは予防時代に!

健康・医療トピックス
日本人の死因第1位はがん。2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで命を落とす時代です。このような状況で唯一、予防できるようになったがんがあります。子宮頸がんです。予防ワクチンの導入により、約70%の割合で予防が可能になりました。
子宮がんには子宮の奥にできる「子宮体がん」と、子宮の入口部にできる「子宮頸がん」があります。子宮体がんは女性ホルモンが大きく関係し、子宮頸がんは発がん性のヒトパピローマウイルス(HPV)の持続的感染が原因となって発症します。
HPVは皮膚や粘膜に存在し、イボをつくるごくありふれたウイルスで、100種類以上の違ったタイプがあります。しかし、それらがすべて子宮頸がんの原因になるのではなく、原因となるのは16型、18型を中心に15種類ほどです。HPVは性行為を介して子宮頸部に感染するものの、それ自体はけっして特別なことではなく、性交経験のある女性であれば80%の人が、生涯に一度は感染している、といわれています。だからこそ、日本でも年間約1万5000人が子宮頸がんを発症し、約3500人が死亡しているのです。とりわけ、20代、30代の女性での発症率は最も高くなっています。
子宮頸がんの原因となる、HPVの感染を予防するワクチンができ、日本では2009年10月に承認され、12月22日に発売が開始されました。
この子宮頸がん予防のワクチンはHPV16型と18型に限って予防するワクチンなので、子宮頸がん予防率は100%とならず、約70%なのです。
接種は3回で1セットです。初回接種、それから1カ月後に2回目の接種、初回から6カ月後に3回目の接種。腕の筋肉内に注射します。予防効果を得るにはきちっと3回接種するのが重要です。予防ワクチンなので保険の対象外で、1回1万2000円、3回で3万6000円。これに診療費、接種手技、手数料が別途かかるので、1セット4万円はするようです。
子宮頸がん予防ワクチンは、日本では「11歳から14歳の女児に接種すると効果的」「成人女性にも有効」「安全性が高い(副作用は少ない)」とされています。
子宮頸がんを予防するとあって、イギリス、オーストラリアなど世界の26カ国では公費負担、補助が行われています。日本でも当然同じような負担が行われるべきでしょう。
日本で公費負担をまっ先に決定したのは新潟魚沼市。2010年4月から行うことを発表しました。この動きが国主導で一日も早く広がることを、多くの人々が期待し、待っていると思います。
vol.79 子宮頸がんは予防時代に!

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執筆者プロフィール

松井 宏夫

松井 宏夫

医学ジャーナリスト
略歴
1951年生まれ。
医療最前線の社会的問題に取り組み、高い評価を受けている。
名医本のパイオニアであるとともに、分かりやすい医療解説でも定評がある。
テレビは出演すると共に、『最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学』(テレビ朝日)に協力、『ブロードキャスター』(TBS)医療企画担当・出演、『これが世界のスーパードクター』(TBS)監修など。
ラジオは『笑顔でおは天!!』のコーナー『松井宏夫の健康百科』(文化放送)に出演のほか、新聞、週刊誌など幅広く活躍し、NPO日本医学ジャーナリスト協会副理事長を務めている。
主な著書は『全国名医・病院徹底ガイド』『この病気にこの名医PART1・2・3』『ガンにならない人の法則』(主婦と生活社)、『高くても受けたい最新の検査ガイド-最先端の検査ができる病院・クリニック47』(楽書ブックス)など著書は35冊を超える。

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