vol.8 ピロリ菌除菌で胃がんのリスクを減らそう!!

健康・医療トピックス
2003年9月26日に名古屋市で開かれた日本癌学会総会で、ピロリ菌を除菌すると胃がんの発生が43%以下に抑えられることが、北海道大学大学院医学研究科の浅香正博教授らが行った全国調査で明らかになりました。
ピロリ菌は、正式にはヘリコバクター・ピロリという細菌で、胃の強い酸の中でも生きられます。このピロリ菌が胃に住みつくと、慢性胃炎を引き起こし、さらにストレスが強くかかると胃・十二指腸潰瘍に。そして慢性胃炎が続くと、多くの人は萎縮性胃炎になり、胃がんが発生しやすくなります。
浅香教授らは全国26施設で、2,825人の早期胃がんで内視鏡手術を受けた患者さんの協力を得て、ピロリ菌除菌の有無と術後3年目の身体状況を調査しました。その結果、除菌をしなかった人2,469人のうち5.2%にあたる129人が胃がんを再発していました。 一方、除菌を行った人は356人。このうち2.2%にあたる8人が胃がんを再発。除菌した人の胃がん発生率は除菌しなかった人の42.3%に抑えられることがわかりました。つまり、ピロリ菌の除菌は胃・十二指腸潰瘍だけではなく、胃がんの予防にも大いに効果があることが裏付けられたのです。

ところが、ピロリ菌の除菌は、胃・十二指腸潰瘍の治療手段としての除菌には保険が認められているものの、胃がん予防を目的とした除菌では認められていません。
それは、日本人のピロリ菌感染者があまりにも多いからです。50歳以上の人々では80%、10代・20代では10%程度、平均すると50%の人が感染しているといわれています。ピロリ菌は経口感染し、衛生状態の悪い時代に育った50代以上の人に感染率が高くなっているのです。
vol.8 ピロリ菌除菌で胃がんのリスクを減らそう!!

除菌方法の流れ

※保険が適用されなくても胃がん予防で除菌しようという人のために、除菌方法の流れを紹介しましょう。(除菌費用は3万円程度ですが医療機関により異なります)

以上の流れです。除菌成功率は80~90%になります。ピロリ菌の除菌が成功すると、胃粘膜が健康になるため、逆流性食道炎が10人に1人程度の割合でみられるようになります。また、食欲が増すので糖尿病、高脂血症といった生活習慣病に気をつけていただきたいものです。

このコラムは、掲載日現在の内容となります。掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

執筆者プロフィール

松井 宏夫

松井 宏夫

医学ジャーナリスト
略歴
1951年生まれ。
医療最前線の社会的問題に取り組み、高い評価を受けている。
名医本のパイオニアであるとともに、分かりやすい医療解説でも定評がある。
テレビは出演すると共に、『最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学』(テレビ朝日)に協力、『ブロードキャスター』(TBS)医療企画担当・出演、『これが世界のスーパードクター』(TBS)監修など。
ラジオは『笑顔でおは天!!』のコーナー『松井宏夫の健康百科』(文化放送)に出演のほか、新聞、週刊誌など幅広く活躍し、NPO日本医学ジャーナリスト協会副理事長を務めている。
主な著書は『全国名医・病院徹底ガイド』『この病気にこの名医PART1・2・3』『ガンにならない人の法則』(主婦と生活社)、『高くても受けたい最新の検査ガイド-最先端の検査ができる病院・クリニック47』(楽書ブックス)など著書は35冊を超える。

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