vol.88 ピロリ菌除菌の対象疾患拡大

LINEで送る 一覧に戻る
Vol.88 ピロリ菌除菌の対象疾患拡大 日本人の50%が胃の中にヘリコバクター・ピロリ菌を持ち、50歳以上に限定すると、保菌率は80%にものぼります。
ピロリ菌を発見したのはオーストラリアの医師で微生物学者のバリー・マーシャル氏と、医師で病理学者のロビン・ウォレン氏で、2005年にはノーベル生理学・医学賞を受賞。受賞理由は「ヘリコバクター・ピロリ菌の発見と胃炎および消化管潰瘍におけるその役割の解明」でした。
その時点で、ピロリ菌が胃がんの主要な原因であることも裏付けられていたため、2000年11月に保険適用になったピロリ菌除菌に拍車がかかりました。
ただし、これまでの除菌適用は「胃・十二指腸潰瘍」の治療に対してのみでした。ピロリ菌の除菌はそれだけではなく、胃がんをも含めた疾患の治療・予防に役立つことは分かっています。
そこで、今年6月、ピロリ菌除菌の保険対象疾患が拡大されました。「胃・十二指腸潰瘍」に加え、「胃MALTリンパ腫」「特発性血小板減少性紫斑病」「早期胃がんに対する内視鏡治療後胃」が加わり、全部で4疾患となりました。
胃MALTリンパ腫は胃粘膜にできたリンパ組織から発生する悪性度の低いリンパ腫。ただれ、潰瘍性病変、隆起性病変などの形態をとり、多くは内視鏡検査で発見されます。この病気にピロリ菌が深くかかわっているため、最初に行う治療がピロリ菌の除菌で、改善・消失率は70~80%と報告されています。
特発性血小板減少性紫斑病は原因不明の難病で血小板数が減少し、さまざまな出血症状を引き起こす病気で、特定疾患のひとつです。治療にはステロイド薬や免疫グロブリンの大量投与、免疫抑制剤の投与などのほか、脾臓の摘出も行われていますが、患者の身体への負担が大きいのが難点です。そこに、ピロリ菌感染者の場合であれば、除菌成功で血小板の増加が約50%に認められるなどの報告が相次ぎ、ピロリ菌感染例では除菌治療が第一選択となっていました。
また、早期胃がんに対する内視鏡治療後、胃の除菌により胃がんの発生が約33%減少することが分かっています。加えて、胃がんを発症した後でもピロリ菌を除菌すると、その後の新たな胃がんの発生を抑えることができると裏付けられました。つまり、内視鏡で早期胃がんを治療し、除菌をすると新たな胃がん抑制が可能なのです。
今年6月から科学的根拠に裏付けられた3疾患の保険による除菌が適用され、現在、ピロリ菌除菌の保険適用は4疾患となりました。
このほかにも、ピロリ菌除菌を治療の第一選択とする疾患は多くあります。「萎縮性胃炎」「胃過形成性ポリープ」「機能性ディスペプシア」「逆流性食道炎」などです。将来的には、これらの疾患でのピロリ菌除菌も保険適用になる可能性は高いと思われます。
  • このコラムは、掲載日現在の内容となります。
    掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

この記事をシェアする

LINEで送る
blank 商品のご購入はこちら
このページの先頭へ戻る