女性に多い「めまい」の原因と改善・予防方法。三半規管の問題を解説

脳卒中・脳梗塞 自覚症状・予兆

めまいが生じる原因となる病気や障害 - メニエール病、加齢性平衡障害

めまいは女性に多く、一生のうちに経験しない人はいないといわれているほど。梅雨時は気圧の影響で起こりやすく、気をつけたい病気です。めまいの大半は、耳に原因があります。突然、耳が聞こえなくなる突発性難聴やメニエール病などでもめまいは起きるのですが、最近は、原因となる耳の病気が変わってきています。
横浜市立みなと赤十字病院 めまい平衡神経科外来で、数多くの患者を診療してきた新井基洋部長は、「20年前はメニエール病が多かったのですが、今は5%ほどで、良性発作性頭位めまい症が最も多いです。寿命が延びたことで、加齢によるふらつき(加齢性平衡障害)も増えています」と話します。

vol.180 女性に多い「めまい」の原因と改善・予防方法。三半規管の問題を解説

三半規管が問題のめまいの特徴 - 下を向くとめまいが起こるなど

耳の奥にある内耳には、体の傾きや重力など感受して、体のバランスをつかさどる三半規管、耳石器という部位があり、ここに問題があるとめまいが起こります。良性発作性頭位めまい症は、「朝、目覚めて起きたら目がまわる」「寝返りするとめまいがする」「洗顔やお辞儀で下を向いたとき」や「目薬をさそうと上を向いたとき」などにめまいを感じるのが特徴です。内耳の耳石器の耳石が剥がれて生じるもので、60歳以上の女性のめまいは、この病気が疑われます。「耳石は直径0.01mmで1万粒あります。それが多数剥がれて横の三半規管に入り、耳石の塊になると、頭を動かすことで動いてめまいを感じるのです」(新井部長)。

加齢による平衡機能の障害 - 加齢性平衡障害

加齢によるふらつき(加齢性平衡障害)は、年齢を重ねたことで全身の平衡機能に関係するすべての箇所が衰え、ふらつきによってめまいを起こします。人間は、30歳を過ぎた頃から毎年0.7%ずつ筋肉が減り、なにもしないと脚は細くなります。「建物に例えるなら、柱が細くなるようなものですから、筋肉の減少によるふらつきもめまいに関係します」。

めまいの治療方法と改善のための三半規管トレーニング - 平衡訓練

めまいの治療薬は、1974年にジフェニドール塩酸塩(商品名セファドール)が登場して以降は、薬が出ていません。新薬が登場しないこのような背景から、新井部長の外来では、平衡訓練を中心にめまいの治療を行っています。
ふらつきや体の揺れは、重心動揺検査で調べます。開眼時と閉眼時の揺れを比較し、平衡障害の有無やタイプを判別します。平衡訓練とは、めまいやふらつきを改善する体操のことです。人間には、体のバランスに左右差があるとき、直そうとする仕組みがあり、それを訓練で機能アップさせます。良性発作性頭位めまい症では、さらに三半規管に耳石が入っても出やすくすることが大切です。対策としては、寝る姿勢が左右どちらかに偏らないようにすることや、耳石を元に戻すトレーニングが有効で、これらも平衡訓練に取り入れています。

めまいの予防と改善に有効な平衡訓練

新井部長からめまいの改善に役立つ平衡訓練(トレーニング)を教えていただいたので、ご紹介しましょう。これはバランスの司令塔である小脳を鍛えるもので、目と耳と足の裏を有効に刺激します。慣れないうちは1~10まで数えながら、できるようになったら20まで増やして、2つのトレーニングを1セットにして朝と夜に行います。続けていると再発予防やふらつきの予防にも効果があり、セルフケアにおすすめです。

小脳のトレーニング

右利きの人は右手を前にしっかり伸ばし、親指を立てます。左手の人差し指は顎に当て、頭を動かさないようにします。その状態で伸ばした右手を左右に30度づつ動かして、目は右手親指の爪を追いかけます。目を動かすことで小脳を鍛える方法です。目で追いにくい場合は動体視力が低下しており、小脳の機能の衰えが考えられます。

三半規管(耳)のトレーニング

右利きの人は右手を前に伸ばし、親指を立てます。首を左右に30度ずつ振りながら、右手の親指の爪から目を離さないようにします。このトレーニングで目が外れやすい場合は、その方の三半規管の機能が低下している可能性があります。

頭の病気が原因のめまい - 脳梗塞、脳腫瘍

めまいの原因は耳だけとは限らず、正しく診断されていないこともあり、注意が必要です。「前庭性片頭痛(片頭痛が起こすめまい)は、めまいが関連しますが、メニエール病と誤診されていることがあります。近年、知られるようになった病気で、診察したことがない医師もいます。こんな病気があることを知ってほしいと思います」と新井部長は、強調します。
また、めまいは、命にかかわる脳梗塞や脳腫瘍など頭の病気の症状として現れることがあり、脳の検査を受けることも大切です。脳に問題がないめまいは耳鼻科を受診し、それでも改善しない場合は、『日本めまい平衡医学会』のホームページからめまいの専門医を検索してみましょう。「めまいやふらつきで長い間悩んでいる方は、ものすごく多いのです。中高年になると家族の介護や死を経験し、それらも原因となる甚大なストレスの代表です。めまいを感じたら疲れかなと都合よく解釈しないで、是非、耳鼻科を受診してください」。

監修 横浜市立みなと赤十字病院 耳鼻咽喉科・めまい平衡神経科部長 新井 基洋先生
取材・文 阿部 あつか

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