ニュースリリース

自治医科大学とオムロン ヘルスケアの共同研究講座にて、
手首式血圧計で測定した夜間血圧と心血管予後に関する研究を開始。

~脳・心血管疾患の発症リスクが高い「夜間高血圧」の早期発見へ。~
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オムロン ヘルスケア株式会社と(本社所在地:京都府向日市、代表取締役社長:荻野 勲、以下当社)学校法人 自治医科大学(所在地:栃木県下野市、理事長:大石 利雄)は、手首式血圧計で測定した夜間血圧と心血管予後に関する研究(WISDOM-Night Registry:Wrist ICT-Based Sleep and CircaDian BlOod Pressure Monitoring Program - Night blood pressure registry)を開始しました。

自治医科大学(内科学講座循環器内科学部門 教授:苅尾 七臣)と当社は2015年に共同研究講座を開設して以来、最先端の血圧測定技術の研究開発などを共同で進めてきました。この度、手首式血圧計を用いた夜間血圧に関する臨床研究(WISDOM-Night Registry)を開始し、家庭での夜間血圧測定の普及を進め、脳・心血管疾患の発症リスクが高いといわれる「夜間高血圧」の早期発見、治療介入を目指します。

自治医科大学 内科学講座循環器内科学部門 教授 苅尾 七臣 コメント

WISDOM-Night Registryは、新規・手首型血圧計を用いて、夜間血圧と心血管疾患のリスクとの関係を明らかにする世界で初めての大規模全国研究です。我々は上腕型夜間家庭血圧計や24時間血圧計(ABPM)を用いた10年以上にわたる追跡研究を行い、夜間高血圧や夜間ライザー型・血圧日内変動異常が脳卒中や心不全のリスクになることを明らかにしています。これまで夜間血圧測定には上腕型血圧計が用いられてきましたが、睡眠中の血圧測定により睡眠が妨げられることがありました。オムロン ヘルスケアと自治医科大学では共同研究において、最新のウェアラブル血圧測定デバイスの研究開発と臨床エビデンスの構築を加速しています。本研究で用いる手首夜間血圧計は睡眠障害をほとんど引き起こすことなく、その測定精度は上腕型血圧計と比較して遜色がないことを検証しています。この度、WISDOM-Night Registryにおいて、日常診療における夜間血圧の新たなエビデンスを構築し、パーフェクト24時間血圧コントロールを目指した高血圧診療指針の策定につなげたいと願っています。

オムロン ヘルスケア(株) 執行役員専務 開発統轄本部長 田中 孝英 コメント

当社は、「地球上の一人ひとりの健康ですこやかな生活への貢献」をミッションに、家庭用の血圧計など家庭での健康管理がより身近に、簡単になるような商品やサービスを創出してきました。しかしながら、いまだ多くの人が高血圧による脳・心血管疾患で健康寿命を損なっているのが現状です。我々は家庭での血圧測定の頻度を高めることで危険な血圧変動をとらえ、さらには疾病リスクを予測し、疾病の発症を未然に防ぐ「ゼロイベント」を目指しています。卓越した研究力を持つ自治医科大学 苅尾教授と、先進的な開発を進める我々が協力し合い、新規・手首型血圧計を用いた大規模臨床研究を実施し、夜間高血圧に関する臨床エビデンスを創出・発信し続けることで、夜間高血圧の認知・手首式夜間血圧計の普及を加速させ、高血圧診療に新たな価値を創出することを目指します。この活動はゼロイベント達成を促進させるものだと確信しています。

研究の概要・目的

本研究では、夜間の血圧測定が可能な「手首式血圧計」を使用して、夜間血圧値と心血管予後との関連を明らかにします。
自治医科大学(内科学講座循環器内科学部門 教授:苅尾 七臣)主導の多施設共同研究で、心血管疾患*1の既往または、心血管リスク因子*2を1つ以上有する患者様3,500名を対象に、日常生活の中で朝晩・夜間血圧測定を7日間実施します。その後7年間にわたって患者様を追跡調査し、手首式血圧計で測定した夜間血圧値と脳・心血管疾患の発症率との関連性を明らかにします。

  • *1脳血管障害(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)・心筋梗塞・狭心症・大動脈解離・末梢動脈疾患・心不全
  • *2糖尿病・高脂血症・高血圧(治療中高血圧または診察室血圧130/80mmHg以上)・慢性腎臓病(CKD)・心房細動・睡眠時無呼吸症候群・慢性閉塞性肺疾患・高尿酸血症・現在の喫煙

研究内容

開始時期 : 2021年3月~
実施機関 : 自治医科大学主導の多施設共同研究
試験の種類: 観察研究
対象者  : 心血管疾患*1の既往または、心血管リスク因子*2を1つ以上有する患者
対象人数 : 3,500名

夜間高血圧について

血圧は通常、日中よりも夜間の方が10~20%下がるといわれています。しかし、夜になっても下がらない場合や、昼間より夜間の方が高くなる場合があります。日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン」によると、夜間(睡眠時)の血圧の平均値が収縮期血圧120mmHg以上、拡張期血圧70mmHgを超える場合を「夜間高血圧」といいます。

自治医科大学 苅尾教授らの研究によると、夜間血圧値の収縮期血圧が10mmHg上昇することは、診察室血圧や朝の家庭血圧とは独立して、心血管疾患発症のリスクが20%上昇することが分かりました。また、夜間血圧値の平均値が高いグループ(132.3㎜Hg以上)は、正常なグループ(108.7-116.3mmHg)と比較して、調査開始から約7年後で、脳卒中の発生率に約5.4倍の差が生じることがわかりました*3

  • *3Kario K et al.,Hypertension. 2019 Jun;73(6):1240-1248.より引用

また、朝の血圧値が135/85mmHg未満にコントロールできていても、約4人に1人が夜間の収縮期血圧値(SBP)が120mmHg以上だったという研究結果も報告されています*4

  • *4Kario K et al., The Journal Of Clinical Hypertension 2015 May;17(5):340-348より引用改変


朝の血圧値がコントロールできている人の中で、夜間収縮期血圧値が高い人の割合

従来の夜間血圧測定方法

夜間の血圧値を確認する手段は主に2つあります。医療機関から貸し出される「自由行動下血圧測定装置(ABPM)」を24時間身体に装着し、15分~1時間おきに自動的に測定する方法と、夜間測定ができる家庭用の上腕式血圧計で自動的に測定する方法です。夜間の血圧測定では、普段の睡眠にできるだけ近い状態で測ることが望ましいことから、睡眠の質に影響が出ない測定方法が求められます。


自由行動下血圧測定装置(ABPM)

オムロン手首式血圧計 HEM-9601T

これまでの夜間血圧測定の課題であった腕の圧迫感やチューブといった睡眠への阻害要素を、手首で測定することによって解決しました。測定加圧時の動作音が小さい静音ポンプを使用し、睡眠への影響を極力抑えつつ自動的に3回測定できます。Bluetooth通信によるスマートフォンアプリへのデータ転送も可能です。(一般販売は未定)
本血圧計は血圧計の精度を評価するANSI/AAMI/ISO81060-2:2013規格の精度基準を満たすことが確認されています*5。また、自治医科大学と共同で実施した、実際の睡眠状況下における上腕式血圧計との比較研究において、手首式血圧計で測定した値と上腕式血圧計で測定した値が同等であることを確認しました*6,7

  • *5Kuwabara M, Kario K et al., J Clin Hypertens. 2020 Jun;22(6):970-978.より引用
  • *6Kario K et al., J Clin Hypertens. 2021 Apr;23(4):793-801.より引用
  • *7Tomitani N, Kario K et al., J Clin Hypertens. 2021 Mar 16. doi: 10.1111/jch.14237.より引用


オムロン手首式血圧計 HEM-9601T