vol.104 大人の「虫歯」に気をつけよう

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虫歯は歯を失う原因

虫歯は子どもに多いもの…なんとなく、そう思っていませんか。ところが実際には、成人の9割以上に虫歯があり、しかも40歳以上では以前よりも虫歯の数が増えているほどです(※1)。
虫歯を放置していると歯痛や噛み合わせの悪化により、食欲不振や消化不良、早食いの習慣、肩こりなど、日常生活にさまざまな支障が出てきます。
さらに虫歯は、歯を失う大きな原因ともなっています。厚生労働省では「8020運動」といって、80歳で自分の歯を20本残すことを目標に歯科保健対策を推進しています。しかし、実態調査によると40歳代半ばから歯を失う人が増えはじめ、55~64歳では自分の歯の平均数は22.4本、65~74歳では16.8本、75歳以上だとわずか8.5本という状態です。
歯の喪失原因として、従来は歯周病が重視されてきましたが、最近の国内外の調査では虫歯も同様に重大な原因であることがわかっています。とりわけ40歳以上の中高年層では、約4割の人が虫歯によって歯を失っています。
大人の虫歯には、「進行が早い、気がつきにくい」などの特徴があります。そのため歯痛などで歯科を訪れたときには、かなり悪化しているケースが少なくありません。
大人の虫歯とはどういうものなのか、またその予防方法についてきちんと知っておきましょう。

(※1)厚生労働省「歯科疾患実態調査(平成17年)」より。

vol.104 大人の「虫歯」に気をつけよう

大人の虫歯の特徴

虫歯は、口のなかの細菌が糖質(とくに砂糖分)をエサにして酸をつくり、歯のエナメル質を溶かすことから発生します(※2)。そのため細菌の集まりである歯垢(プラーク)ができやすい場所や、歯ブラシが届きにくい場所…つまり奥歯や歯と歯の隙間などに、虫歯ができやすくなります。
こうした点は子どもと大人に共通していますが、そのほかに大人の虫歯には2つの大きな特徴があります。
その1つは、中高年になると加齢や歯周病によって歯茎が後退し、露出した歯根部分(歯の下の部分)に細菌が付着しやすくなることです。歯根はエナメル質より柔らかい象牙質でできているため、虫歯が発生しやすく、進行も早いという傾向がみられます。また、奥歯の歯根は見えにくいため、虫歯に気づかず、発見の遅れにつながっています。

もう1つの特徴は、大人の場合、過去の歯科治療で詰め物やかぶせ物をしている歯が多く、そこに虫歯が発生しやすいことです。とくに詰め物の内部(歯のなか)に虫歯ができると、気がつかないうちに患部が奥深くにまで達してしまいます。神経を抜いた歯の場合は、痛みを感じにくいので、発見がさらに遅れがちです。
虫歯は、初期の段階なら穴も小さく、簡単な治療で済みます。市販のデンタルミラー(口内鏡)を使って、虫歯ができやすい奥歯や歯根部、詰め物の周辺などを自分でチェックしてみましょう。
また、歯垢の除去を兼ねて、2~3カ月に一回は歯科を受診し、虫歯のチェックをしてもらうことも大切です。

(※2)虫歯をつくる代表的な細菌には、ミュータンス連鎖球菌や乳酸桿菌などがあり、総称して「虫歯菌」と呼ばれることもあります。

虫歯予防のための歯磨き

虫歯予防の基本は、毎日の生活でおこなうセルフケアです。セルフケアには「正しい歯磨き・歯質の強化・砂糖分の制限」という3つのポイントがあります。
まず、虫歯予防と歯の強化のための、正しい歯磨きの方法について知っておきましょう。

①歯磨きは食後30分以内が効果的
細菌に栄養分を与えず、酸をつくらせないためには、食事をしたら30分以内に歯を磨くことが大切です。細菌が繁殖しやすい奥歯や、歯と歯の隙間は、意識的にきちんと磨くようにします。
歯茎が後退している場合は、歯と歯茎の境目(歯周ポケット)も磨きましょう。ただし、歯茎を強くこすると歯肉炎を起こしたり、歯周病を悪化させやすいので、境目には毛先の細い歯ブラシを軽くあて、小きざみに動かすようにします。
②就寝前の歯磨きはていねいに
細菌がもっとも繁殖しやすい時間帯は睡眠中です。歯磨きをしないで寝ると、起床時には細菌が数十倍にも増えます。朝や日中の歯磨きは、仕事や家事で忙しいこともあって短時間で済ませがちですが、就寝前の歯磨きは少し時間をかけ、電動歯ブラシや歯間ブラシなどでていねいに磨くことを心がけましょう。
③フッ化物配合の歯磨き剤で
虫歯予防には、フッ化物(フッ化ナトリウム、フッ化スズ、モノフルオロリン酸ナトリウム)配合の歯磨き剤が適しています。予防効果には個人差があり、平均すると20~30%程度ですが、歯根の虫歯には高い予防効果(60%程度)があるとの研究もみられ、注目されています(※3)。
フッ化物には、歯質そのものを強くする効果もあるので、歯質が弱く虫歯になりやすい方にも適しています。ただし、即効性があるわけではないので、歯の強化のためには継続して使用する必要があります。
また、歯磨き後に口を何度もすすぐと、歯に付着したフッ化物が洗い流されてしまうので、歯磨き剤の不快感が残らない程度に軽くすすぐようにします。さらに歯磨き後、すぐに食べたり飲んだりしないことも大切です。

適切な歯磨きの仕方がわからない場合は、歯科医に相談して指導してもらいましょう。

(※3)フッ化物には、初期虫歯(細菌がエナメル質を溶かし始めた段階)を健康な状態に再生する効果(再石灰化)や、細菌が酸をつくるのを抑制する効果もあります。

食生活にも気をつけたい

虫歯予防には、食生活を見直すことも大切です。
その1つは、細菌の栄養となる糖質、とくに砂糖分をとり過ぎないこと。中高年層の場合、デザートや間食で甘いものを食べることが習慣になっているケースが少なくありません。ノドの渇きをおさえるため、アメをよくなめる方もいます。
こうした食習慣は、口のなかに細菌が活動しやすい環境をつくることにもなります。予防策として、「甘いものを控えめにする、代替甘味料を使ったものにする、こまめに歯磨きをする」などの方法を心がけましょう。
また、糖尿病があると、虫歯になりやすくなります。糖尿病になると唾液が減少したり、歯周病の発生から歯茎の後退が起こることが、虫歯が増える原因と考えられています。糖尿病を改善し、虫歯を予防するためにも、砂糖分の制限など食生活の見直しが欠かせません。
食生活で重視したいもう1点は、よく噛んで食べること。
食べ物をよく噛むと、唾液の分泌量が増えます。唾液にふくまれる成分には、細菌によって溶かされた歯のエナメル質を再生(再石灰化)する働きがあります。ごく初期の虫歯なら、唾液の作用によって自然治癒するほどです。
よく噛んでゆっくり食事することは、肥満を防ぎ、糖尿病の改善にもつながるので、毎日の食事でかならず心がけるようにしましょう。

ミニコラム

■歯科でのケア
歯垢(プラーク)は細菌の集まりです。それが固まって歯石になると、家庭での歯磨きではなかなか除去できません。歯石がある場合には歯科を受診し、除去してもらうのも虫歯予防には効果があります。そのあと、歯にフッ化物塗布(高濃度のフッ化物を歯の表面に塗る)をおこなってもらうと、予防効果がより高くなります。また、奥歯については、溝をプラスチック材などうめて虫歯を予防する方法(シーラント)もあります。
もともと歯質が良くなく、虫歯になりやすい方は、フッ化物塗布やシーラントなどの予防法について、歯科医から話(条件、期間、費用など)を聞いてみるのもいいでしょう。

このコラムは、掲載日現在の内容となります。掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

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