vol.113 「リズム運動」でメンタル強化を
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超ストレス社会といわれるなか、メンタル強化の大切さが注目されています。その背景には、ストレスに負けないメンタリティ(心的傾向)をもつことが、心理面だけでなく、からだの健康にもプラスにはたらくことがわかってきたことがあります。
強いストレスや慢性的なストレスを受け続けると、私たちの体内では健康を害するさまざまな反応が起こります。たとえば、免疫細胞の1つNK(ナチュラルキラー)細胞の機能が低下し、反対に活性酸素が増えます。その結果、免疫力が低下してがんなどの病気が発生したり、細胞がダメージを受け、血管や皮膚の老化を促進するなどの影響がみられます(※1)。
こうしたストレスの悪影響については以前から知られていますが、では逆にメンタル面を強化し、ポジティブな考え方をすると、ほんとうに健康にいい影響を与えるのでしょうか。この点について初めて、多目的コホート研究(国立がん研究センター)として「生活意識と循環器疾患の関係」という調査をおこなわれました(※2)。
その調査によると、「生活を楽しんでいる意識」の高いグループと低いグループを比較した結果、脳卒中(脳梗塞や脳出血など)による死亡リスクは1:1.75、また、虚血性心疾患(心筋梗塞や狭心症など)による死亡リスクは1:1.91と、それぞれ2倍近い開きがみられます。つまり、生活を楽しむ意識が高く、ポジティブな気持ちの人ほど、循環器疾患による死亡リスクが低いことが裏付けられたのです(※3)。
強いストレスや慢性的なストレスを受け続けると、私たちの体内では健康を害するさまざまな反応が起こります。たとえば、免疫細胞の1つNK(ナチュラルキラー)細胞の機能が低下し、反対に活性酸素が増えます。その結果、免疫力が低下してがんなどの病気が発生したり、細胞がダメージを受け、血管や皮膚の老化を促進するなどの影響がみられます(※1)。
こうしたストレスの悪影響については以前から知られていますが、では逆にメンタル面を強化し、ポジティブな考え方をすると、ほんとうに健康にいい影響を与えるのでしょうか。この点について初めて、多目的コホート研究(国立がん研究センター)として「生活意識と循環器疾患の関係」という調査をおこなわれました(※2)。
その調査によると、「生活を楽しんでいる意識」の高いグループと低いグループを比較した結果、脳卒中(脳梗塞や脳出血など)による死亡リスクは1:1.75、また、虚血性心疾患(心筋梗塞や狭心症など)による死亡リスクは1:1.91と、それぞれ2倍近い開きがみられます。つまり、生活を楽しむ意識が高く、ポジティブな気持ちの人ほど、循環器疾患による死亡リスクが低いことが裏付けられたのです(※3)。
(※1)NK細胞は、がん細胞やウイルス感染細胞を消滅させる強力な免疫細胞ですが、ストレスに弱く、機能が急速に低下します。また、活性酸素は細胞を傷つけるため、がんの発生や血管の老化を促進することが知られています。
(※2)同調査は、日本各地の40歳以上の男女約12万人を対象に、12年間にわたり追跡調査をおこなったもの。多目的コホート研究は、生活習慣と病気との関係を大規模に調査するもので、厚生労働省の所管から現在は国立がん研究センターの所管になっています。
(※3)こうした傾向は男性ほど顕著にみられ、女性の場合は大きな差はみられないとされています。一般に女性は、男性よりもストレスへの順応力が高く、また、女性ホルモンによる循環器疾患に対する予防作用などの影響も考えられます。
セロトニンとリズム運動
メンタル強化というと、従来は「前向きに考えよう」とか「プラス思考をしよう」といった観念的な提案が大半でした。しかし最近は、脳の活動に関する研究が進み、私たちのメンタル面には脳内の神経伝達物質が大きな影響を及ぼしていることがわかってきています。
その1つであるセロトニンは、私たちの気分を大きく左右する神経伝達物質です。セロトニンの生成量が減るなどしてセロトニン神経系の機能が低下すると、不安や鬱屈した気持ちが強くなり、イライラして怒りの感情が大きくなることが知られています(女性の場合、女性ホルモンがセロトニン神経系の活性に影響するため、更年期以降に女性ホルモンの減少によってセロトニン機能が低下し、不安やイライラが高まることもあります)。
セロトニンは、一般に10歳代をピークにして加齢により少しずつ減少し、機能も低下するので、それだけストレスの影響を受けやすくなってきます。したがって、セロトニンを活性化して機能を高めることが、ストレスに負けないメンタリティの強化につながるといえます。
そのための効果的な方法の1つが、リズム運動です。
リズム運動とは、簡単にいえば一定のリズムを重視した運動のこと。たとえば、東京の江戸川区ではダンス(マンボ、ルンバ、ブルースなど)をアレンジしたリズム運動に早くから取り組み、参加者(1万人以上の中高年)の体力年齢が平均で10~15歳も若くなったことが報告されています。
一方、リズム運動のメンタル面の効果については、東邦大学医学部の有田秀穂教授が検証しています。同教授の著書などによれば、セロトニン神経系の活性化には、呼吸・歩行・咀嚼(そしゃく)などのリズム運動が効果的とのこと(※4)。
では、セロトニンの活性を高め、メンタル強化に効果的なリズム運動とは、具体的にどういうものなのでしょうか。
その1つであるセロトニンは、私たちの気分を大きく左右する神経伝達物質です。セロトニンの生成量が減るなどしてセロトニン神経系の機能が低下すると、不安や鬱屈した気持ちが強くなり、イライラして怒りの感情が大きくなることが知られています(女性の場合、女性ホルモンがセロトニン神経系の活性に影響するため、更年期以降に女性ホルモンの減少によってセロトニン機能が低下し、不安やイライラが高まることもあります)。
セロトニンは、一般に10歳代をピークにして加齢により少しずつ減少し、機能も低下するので、それだけストレスの影響を受けやすくなってきます。したがって、セロトニンを活性化して機能を高めることが、ストレスに負けないメンタリティの強化につながるといえます。
そのための効果的な方法の1つが、リズム運動です。
リズム運動とは、簡単にいえば一定のリズムを重視した運動のこと。たとえば、東京の江戸川区ではダンス(マンボ、ルンバ、ブルースなど)をアレンジしたリズム運動に早くから取り組み、参加者(1万人以上の中高年)の体力年齢が平均で10~15歳も若くなったことが報告されています。
一方、リズム運動のメンタル面の効果については、東邦大学医学部の有田秀穂教授が検証しています。同教授の著書などによれば、セロトニン神経系の活性化には、呼吸・歩行・咀嚼(そしゃく)などのリズム運動が効果的とのこと(※4)。
では、セロトニンの活性を高め、メンタル強化に効果的なリズム運動とは、具体的にどういうものなのでしょうか。
(※4)有田秀穂著『セロトニン脳』、『脳ストレスが消える生き方』などより。
効果的なリズム運動とは
リズム運動でもっとも手軽なのは、咀嚼、つまり噛むこと。たとえば、ガムを噛むという簡単な行為でも、20分程度続けていると、脳内セロトニン濃度が高くなるのです。
また呼吸では、坐禅の呼吸法(丹田呼吸法)をおこなうことで、同様の効果がみられます(※5)。
咀嚼や呼吸は簡便な方法ですが、運動不足解消のためには、もう少しからだを動かす運動がしたいという方も多いでしょう。その場合には、ウォーキングや軽いジョギング、自転車こぎ、太極拳などにも、セロトニン神経系の活性化作用があるので、次のことを守って実践してください。
リズム運動には、効果的な運動継続時間があります。どの運動の場合も、運動を始めて5分後くらいからセロトニン濃度が高まり、20~30分でピークに達します。それ以上運動を続けて、疲れたと感じるレベルになると、かえってセロトニンの機能は低下します。また、自分にとってきついと感じる激しい運動や、苦手な運動の場合も効果は期待できません。
運動を始めるとつい頑張って、やりすぎになりがちですが、メンタル強化の運動は楽しみながら、できれば毎日20~30分間おこなうこと。この程度の時間なら、仕事のある方でも早朝や昼休みを利用して継続しやすいでしょう。夜間でも、運動をしないよりはいいのですが、セロトニンは太陽の光で活性化されやすいので、朝や日中のほうが効果的だといえます。
リズム運動のメリットは、セロトニン濃度が高まることで不安や抑うつ感などが改善されるだけでなく、元気がでてポジティブな気分になる人が多いという点です(有田教授の調査による)。まさにメンタル強化にピッタリなのが、リズム運動だといえるでしょう。
また呼吸では、坐禅の呼吸法(丹田呼吸法)をおこなうことで、同様の効果がみられます(※5)。
咀嚼や呼吸は簡便な方法ですが、運動不足解消のためには、もう少しからだを動かす運動がしたいという方も多いでしょう。その場合には、ウォーキングや軽いジョギング、自転車こぎ、太極拳などにも、セロトニン神経系の活性化作用があるので、次のことを守って実践してください。
リズム運動には、効果的な運動継続時間があります。どの運動の場合も、運動を始めて5分後くらいからセロトニン濃度が高まり、20~30分でピークに達します。それ以上運動を続けて、疲れたと感じるレベルになると、かえってセロトニンの機能は低下します。また、自分にとってきついと感じる激しい運動や、苦手な運動の場合も効果は期待できません。
運動を始めるとつい頑張って、やりすぎになりがちですが、メンタル強化の運動は楽しみながら、できれば毎日20~30分間おこなうこと。この程度の時間なら、仕事のある方でも早朝や昼休みを利用して継続しやすいでしょう。夜間でも、運動をしないよりはいいのですが、セロトニンは太陽の光で活性化されやすいので、朝や日中のほうが効果的だといえます。
リズム運動のメリットは、セロトニン濃度が高まることで不安や抑うつ感などが改善されるだけでなく、元気がでてポジティブな気分になる人が多いという点です(有田教授の調査による)。まさにメンタル強化にピッタリなのが、リズム運動だといえるでしょう。
(※5)丹田(たんでん)呼吸法とは、へそと恥骨上部の中間にある丹田に手を添え、意識もそこに集中しておこなう静かな呼吸で、坐禅のときにも活用されます。なお丹田の場所は、寝た姿勢で上体を少し起こしたとき、腹筋のいちばん固くなるところ。
運動のコツと食事の注意
リズム運動は、1人でやるよりも大勢で楽しくやると、セロトニン効果がより高まるとされています。江戸川区のリズム運動の場合は、区内にたくさんの同好グループができています。
しかし、それほど大勢でなくても家族や友人を誘って一緒にウォーキングなどを楽しむのが、セロトニンの機能を向上させ、メンタル面を強化するコツの1つです。ただし、リズム運動はだらだらとやっても効果が出ないので、仲間同士であっても運動に集中することを忘れずに。
一方、メンタル強化には、食事面にも注意が必要です。
セロトニンの材料となるのが、トリプトファンという必須アミノ酸です。トリプトファンは、動物性タンパク質(肉類、魚、乳製品など)に多く含まれています。そのため最近、「セロトニンを増やすために肉をしっかり摂る必要がある」という説をよくみかけます。
ところが実際には、動物性タンパク質だけを多く摂取しても、ほかの必須アミノ酸の影響で、脳内のトリプトファンは増えないことがわかっています(※6)。また、トリプトファンが脳内でセロトニンに変化するには、ビタミンB6などのビタミン類も必要です。
動物性タンパク質には、筋肉をつくる必須アミノ酸が多く含まれているので、運動機能を向上させるためには欠かせない栄養素ですが、それだけを多く摂ってもセロトニンの活性効果はないので、ビタミンB6などの多い魚や豆類、ナッツ類、バナナ、のりなどを一緒に、バランス良く食べることを心がけましょう。
しかし、それほど大勢でなくても家族や友人を誘って一緒にウォーキングなどを楽しむのが、セロトニンの機能を向上させ、メンタル面を強化するコツの1つです。ただし、リズム運動はだらだらとやっても効果が出ないので、仲間同士であっても運動に集中することを忘れずに。
一方、メンタル強化には、食事面にも注意が必要です。
セロトニンの材料となるのが、トリプトファンという必須アミノ酸です。トリプトファンは、動物性タンパク質(肉類、魚、乳製品など)に多く含まれています。そのため最近、「セロトニンを増やすために肉をしっかり摂る必要がある」という説をよくみかけます。
ところが実際には、動物性タンパク質だけを多く摂取しても、ほかの必須アミノ酸の影響で、脳内のトリプトファンは増えないことがわかっています(※6)。また、トリプトファンが脳内でセロトニンに変化するには、ビタミンB6などのビタミン類も必要です。
動物性タンパク質には、筋肉をつくる必須アミノ酸が多く含まれているので、運動機能を向上させるためには欠かせない栄養素ですが、それだけを多く摂ってもセロトニンの活性効果はないので、ビタミンB6などの多い魚や豆類、ナッツ類、バナナ、のりなどを一緒に、バランス良く食べることを心がけましょう。
(※6)アメリカの研究では、糖質(ご飯やパン、甘味類など)を摂ると、インスリンの作用で血中のトリプトファンが脳内へ吸収されやすいとする報告がみられますが、日本ではまだ検証されていません。
※このコラムは、掲載日現在の内容となります。掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。