vol.115 がん予防の健康習慣にチャレンジ!

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ヘルシーライフ

がん発症リスクが約半分に

今年こそ何か健康的なことにチャレンジしてみたい…そう考えている方にピッタリなのが、国立がん研究センターが提唱する「がん予防のための5つの健康習慣」です(※1)。
がんは、よく知られるように死亡者数がもっとも多く、日本人の2人に1人がかかる病気です。その一方で、日常の健康習慣によって、かなり予防できることもわかってきています。
がん予防に大切な健康習慣とは、「禁煙、節酒、塩蔵品を控える、活発な身体活動、適正なBMI」の5つです。
この5つの健康習慣を実践した場合、何もしない人と比較すると、がんの発症リスクが男性では57%に、女性では63%に低下するとされています。また女性の場合、60歳以上では44%にまで低下することも判明しています(※2)。
仮に5つすべてを実践できなくても、1つ実践するごとに男性では14%、女性では9%ずつ、がんの発症リスクが低下します。健康習慣が増えるごとに、がん予防の効果は高まるのです。
一度に5つは無理でも、2つか3つずつなら実践できそうな気がしませんか。がん予防のために、今年は生活を見直し、健康習慣を1つでも増やすことにチャレンジしてみましょう。

(※1)国立がん研究センターの多目的コホート研究の1つ。日本各地の45~74歳の男女約8万人を対象に、健康習慣とすべてのがんの発症率との関連を調査し、その結果に基づき提唱されたもの。
(※2)女性の場合、60歳未満では女性ホルモン(エストロゲン)が関与する乳がんなど、5つの健康習慣とは別の要素が大きい。しかし女性ホルモンの減少にともない、60歳以上では健康習慣の効果が急速に高くなると推定されている。

vol.115 がん予防の健康習慣にチャレンジ!

禁煙はがん予防の基本

「禁煙」は、がん予防のための健康習慣のトップに挙げられています。
タバコ(喫煙)は、よく知られているように肺がんの最大の原因。タバコを喫う人は喫わない人と比較して、肺がんの発症リスクが4倍以上(男性4.5倍、女性4.2倍)になります。肺がんのなかでも、とくにタバコとの関係が大きい扁平上皮がんと小細胞がんでは、10倍以上(男性12.7倍、女性17.5倍)もの高いリスクになります。
その一方で、タバコがほかのがんにも大きな影響を及ぼすことは、意外に知られていません。タバコの影響が確実視されているのは、肺がんのほかに胃がん、食道がん、すい臓がん、子宮頸がんがあり、肝がんも関係が強いとされています。また、大腸がんや乳がんでも、関係性が指摘されています。
このようにタバコは、多くのがんの発症リスクを高める要因となっています。それだけに禁煙は、がん予防の基本なのです。いまタバコを喫っている人でも、禁煙するとがんの発症リスクは次第に低下することがわかっています。
過去に市販薬などを使って禁煙にチャレンジしたものの、挫折したという人も多いかもしれません。自分ではなかなか禁煙できない場合は、禁煙成功率が高い治療補助薬(飲み薬、保険適用)もあるので、禁煙外来などのある病院に相談してみましょう。

アルコールと塩蔵品は控えめに

食生活に関する健康習慣で重視されているのが、「節酒」と「塩蔵品を控えること」です。
がんの中でも、アルコールの影響が大きいものを「飲酒関連がん」といいます。アルコールが最初に通過する口腔や喉頭、咽頭、食道、それとアルコールを分解する役目をもつ肝臓に起こるがんのことです。
飲酒関連がんの調査では、「ときどき飲む(月に1~3回)」という人を1とした場合、「2日に1合程度」「毎日1合程度」と飲む回数と量が増えるにつれ、がんによる死亡率は急速に高まり、「毎日2合程度」という人では4~7倍(喫煙の有無などによる違い)にも達します(※3)。ちなみに日本酒の1合は、アルコール換算ではビール大瓶1本、ワイン200ml程度に相当します。
また飲酒関連がん以外でも、日本人の場合は飲酒量の増加が大腸がんや結腸・直腸がんのリスクを高めることも指摘されています。
アルコールには気分転換などの効用もありますが、がん予防のためには「ときどき飲む」程度にすることを心がけましょう。
食生活の健康習慣で、もう1つ注意したいのが塩蔵品の摂りすぎです。塩蔵品とは、塩蔵魚卵(たらこ、いくらなど)、塩蔵魚(めざし、塩鮭など)、塩辛や練りウニなどです。
こうした塩蔵品を多く食べると、胃がんの発生リスクが高まることが報告されています。たとえば塩蔵魚卵の場合、「ほとんど食べない人」の胃がんリスクを1とすると、「週に3~4日食べる人」で1.5倍~2倍、「ほとんど毎日食べる人」では2.5~3.5倍にもなります。とくに塩分濃度の高い(10%以上)塩蔵品は、影響が大きいので要注意です(※4)。
また塩蔵品だけでなく、食塩の多い食品(漬物、味噌汁)も胃がんの発症リスクを高めるので、回数を減らしたり、うす塩のものを選ぶようにしましょう。

(※3)(※4)国立がん研究センターの多目的コホート研究「飲酒とがん死亡率の関連」、「食塩・塩蔵品摂取と胃がんとの関連」による。

体をよく動かすことが大切

運動とがん予防は、あまり関係ないと思っている方は多いでしょう。ところが国立がん研究センターの調査によると、1日の身体活動量が多い人ほど、がん全体の発症リスクが低いことがわかっています(※5)。身体活動には、運動のほかに、仕事や家事などによる活動も含まれます。つまり、毎日よく体を動かすことが、がん予防につながるのです。
とくに予防効果が高いのは、男性では大腸(結腸)がん、肝がん、膵がん、女性では胃がんです。
また同センターによる別の調査では、女性の場合(40~69歳が対象)、余暇運動(仕事時間以外のスポーツや運動)への参加回数が多い人ほど、乳がんの発症リスクが低いことも報告されています。
運動については、がん予防に必要な運動量の明確な基準はまだありませんが、「1日に1時間程度のウオーキングか、同等レベルの運動」が提唱されています。ただし、過度の運動や嫌いな運動を無理にすると、逆効果になることも指摘されているので注意しましょう。
まとまった運動ができなくても、毎日の身体活動量をアップさせることががん予防になるので、社内や駅の階段を積極的に利用する、少し遠いストアやコンビニまで歩いて買い物に行く、掃除などの家事をこまめにするなどの方法で、できるだけ体を動かすことが大切です。
5つ目の健康習慣「適正なBMI」については、日本人の場合、BMI値が高すぎても、また逆に低すぎても、がんの発症リスクが高くなることが報告されています(※6)。がん予防の適正なBMI値は、男性(21~27)、女性(19~25)です。ただし、BMI値が25程度でも、糖尿病や心疾患の発症リスクは高くなるので、その点にも注意しながら、がん予防の健康習慣にチャレンジしましょう!

(※5)国立がん研究センターの多目的コホート研究「身体活動量とがん罹患との関連」による。
(※6)BMI値は、「体重を身長(m)の2乗で割った数値」。体重70kgで身長1.70mの場合、70÷(1.70×1.70)=24.22となります。

このコラムは、掲載日現在の内容となります。掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

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