2013.07.10

vol.121 運動中の脱水症を防ぐために

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水分補給の目的

Vol.121 運動中の脱水症を防ぐために 暑い時期には、運動中に脱水症を起こし、それが引き金となって熱中症や心筋梗塞などの重大な病気を発症するケースが増えてきます。
心筋梗塞による突然死の場合、発症数が多いのは中高年層に人気が高いゴルフですが、最近はジョギングやサッカーなどでも試合中や練習中に突然倒れるケースが報告されています(※1)。また、登山やトレッキング(山歩き)などの山岳スポーツでも、山中で急に胸の痛みなどを訴え、動けなくなるケースが少なくありません。
こうした運動中の急激な体調異変の原因として重視されているのが、脱水症です。運動中の水分補給の大切さは、よく知られているはずですが、なぜ脱水症、そして熱中症や心筋梗塞を起こしてしまうのでしょうか。それは「何のために水分を摂るのか」という基本を知らない人が、意外に多いためです。

運動中の水分補給には、主に次の3つの目的があります。
・脱水症を予防する
・体温(深部体温)を下げる
・栄養を補う

この3つはお互いに関係しあっていて、どの1つが欠けても体調を崩す原因になります。
とくに中高年の場合、肥満や運動不足の解消、高血圧、高血糖、高コレステロールなどの改善のために、運動をしている方が多くみられます。もともと動脈硬化や血栓のリスクが高いだけに、運動中の水分補給には十分に注意する必要があります。水分補給の意味と、上手な補給方法についてきちんと知っておきましょう。

(※1)ゴルフでは、心筋梗塞による突然死の大半は40歳以上の男性です。一方、ジョギングでは40歳以下の比較的若い世代にも心筋梗塞がみられます。

効果的な水分補給とは

水分補給の第1の目的は、脱水症の予防です。
脱水症の症状として、めまい、呼吸の乱れ、筋肉けいれん、吐き気などが知られています。しかし、これらの症状はすでに脱水症が進み、熱中症に近い段階なのです。
予防のためには、脱水症の始まりともいえるサインを見逃さず、対処する必要があります。たとえば、大量の汗をかく、ノドが渇く、尿の色が濃くなる、疲れを感じる、手足が冷える、軽い立ちくらみがするなどのサインがみられたら要注意。その段階で、すでに脱水症が始まっているので、早めに水分補給をしましょう。
ただし、一気に大量の水分を摂るのでなく、2口~3口ずつ、こまめに摂ることが大切(20分~30分に1回程度)です。また、何もしなくても汗をかくような蒸し暑い日には、運動の前にも軽く水分を摂るようにします(※2)。

水分補給の第2の目的は、体温(深部体温)の調整です。運動中には体温が上昇するので、汗をかくことで体温調整をしています。水分を補給しないと体温が下がりにくくなり、熱中症を引き起こします。体温が38℃を超えるとだるくなり、40℃近くになると強い疲労感から動けなくなります。
体温調整には、5℃~15℃の水温(ちょっと冷たいと感じる程度)がもっとも効果的です。そのためには保冷効果のある水筒やボトル、クーラーボックスを使うのが理想的ですが、市販のペットボトルなどの場合も直射をさけ、日陰に置いておくようにしましょう。
水分補給の第3の目的である栄養補給とは、汗と一緒に失われるナトリウムやカリウムなどのミネラルを補うことです。これらのミネラル類は、筋肉の動きや体内の水分量を調整する役割があるので、不足するとけいれんを起こし、重症化すると意識障害を起こすこともあります。
ミネラルを簡単に補うには、スポーツドリンクが適していますが、味などがちょっと苦手という人もいるでしょう。そうした場合は梅干や塩昆布、塩飴などを用意しておき、水と一緒に摂るのもいい方法です(※3)。

(※2)一度に大量の水を飲むと、低ナトリウム血症(水中毒)を起こし、頭痛やけいれん、意識障害などを起こす可能性があります。
(※3)軽度の脱水症を起こした場合には、薬局などで売っている経口補水液(食塩やブドウ糖などの混合液)を利用すると回復が早まります。

ゴルフに心筋梗塞が多い理由

運動の中でも、心筋梗塞を起こす人がもっとも多いのがゴルフですが、その背景にも脱水症が関係していることが少なくありません。
ゴルフは、一般的には運動強度はさほど強くないとされています。しかし、18ホールを回ると、会社員がふだん歩く距離の2倍~3倍にもなります。コースによってはアップダウンがかなりあり、またトラブル時や混雑時には小走りになることもあります。
つまり、運動不足気味の中高年の方には、想像以上に運動量が多く、それだけ発汗量も多いのです。ところがコース上では爽やかな風に吹かれて汗が蒸発し、汗をかいている実感があまりありません。また、数人でプレーすることが多いため、自分のペースで水分補給ができず、ちょっと体調がおかしいと感じても無理をしてしまうこともあります。
さらに、昼食時にはエアコンのきいたクラブハウスなどで、アルコールを摂る人も多くみられます。からだが冷えると発汗機能が乱れ、体温調整機能も低下します。アルコールには利尿作用もあるため、体内の水分が減少し、脱水症を起こしやすい状態がつくられます。
そのうえ、ショット時には息を止めてフルスイングをくり返し(50回程度)、プレー中にタバコを吸う人もよくみられます。
このようにゴルフでは、脱水症を起こしやすい条件に加え、ストレスなどによる血管の収縮や血圧の変動が重なる結果、心筋梗塞を起こすリスクが高くなるのです。
では、ゴルフ以外の運動では、どうなのでしょうか。
たとえば、近年、競技人口が増えているマラソンの場合、市民ランナーは5時間以上も走り続ける人が多く、想像以上に運動量も発汗量も多くなり、脱水症を起こしやすい状態が長時間続きます。

また、距離ごとに制限時間の関門があると、それに間に合うように急にスピードを上げるなどの無理をすることもあります。実際に過去の市民マラソン大会でも、制限時間をクリアした後で心筋梗塞を起こすケースが報告されています。
同様のことが、登山やトレッキングにもいえます。山歩きは、長時間にわたり汗をかき、しかも荒い呼吸が続くため呼気からも大量の水分が消失し、脱水症を起こしやすいのです。ところがペースの維持を優先したり、予定地への到達時間を気にしたりして、きちんと水分補給をせずに歩くことが少なくありません。そこに天候や気温の急変などが重なると、さらに無理をしかねません。
山で脱水症が起こると、急激に倦怠感や疲労感が増して、水を飲むのも面倒に感じ、ますます脱水症が悪化し、ついには動けなくなってしまうのです。
どのような運動であっても、暑い時期には予想以上の発汗があることを考え、こまめに水分補給をおこなうことが大切です。また、運動中にはアルコールや喫煙を控えることはもちろんですが、強いストレスがかかるような無理もしないようにしましょう。

前日の体調管理をしっかりと

脱水症の予防で、意外に知られていないのは前日の体調管理の重要性です。運動中に脱水症を起こすかどうかは、前日の過ごし方で決まるといわれるほど大切なことなのです。
たとえばゴルフを例にすると、レクリエーションや接待などの側面もあるため、前夜から現地のホテルなどでアルコールをたくさん飲み、つい夜ふかしをして睡眠不足になりがちです。あるいは前夜遅くまで仕事をし、睡眠不足のまま早朝に出かけてプレーする人も多いでしょう。
アルコールは前章でも紹介したように利尿作用があり、また睡眠不足は体力の低下をまねき、脱水症による体調不良が起こりやすくなる一因となります。
一方、遠方での市民マラソン大会に参加したり、登山に出かける場合などにも、前夜から車で出かけ、車内で仮眠をとってから参加する人が増えています。狭い車内での仮眠は、睡眠不足だけでなく、冷房で発汗機能が乱れ、さらに同じ姿勢を続けることで血流が停滞し、血栓ができる原因にもなります。

暑い時期の運動では、ちょっとした油断や判断ミスから脱水症を起こしやすく、しかも疲労によって急速に悪化しやすい傾向がみられます。ふだんは平気だったとしても、気温や湿度、風などの条件が異なると、からだへの負担も大きく変わってきます。
それだけに、前日から天気予報などを参考にしながら水分補給の計画をしっかり立て、食事の内容や睡眠時間にも気をつける習慣をつけるようにしましょう。とくに、血圧や血糖値などが高めの方は、脱水症を起こしたときに心筋梗塞などのリスクも高くなるので、ミネラル類の補給も含めて、早めにこまめな水分補給ができるように準備をしておくことが大切です。
  • このコラムは、掲載日現在の内容となります。
    掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

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