vol.128 加齢黄斑変性の早期発見と予防

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加齢黄斑変性とはどんな病気?

ノーベル賞に輝いた山中伸弥教授(京都大学iPS細胞研究所)が開発したiPS細胞(人工多機能幹細胞)は、再生医療などへの応用が期待されています。そんな中、2013年に初めて臨床試験が認められた病気が加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)でした。

加齢黄斑変性は、中高年になると起こりやすい目の病気で、網膜の黄斑部(中心部)に視力障害が生じるものです。黄斑部はモノの形や大きさ、色などを識別する重要な場所なので、異常が起こると、視野の中央付近でモノがゆがんで見えたり、暗くなったりし、視力も低下します。欧米では中高年からの失明原因の第1位で、日本でも高齢社会の到来によって急速に患者数が増えています。まだ根本的な治療法がないため、iPS細胞による臨床試験の成果が待ち望まれています。

加齢黄斑変性には、大別すると滲出型(新生血管型)と萎縮型という2つのタイプがあり、日本人に多くみられるのは滲出型です。滲出型は、網膜の外側にある脈絡膜から新しい異常な血管が伸び、その血管からの出血などの影響で、網膜の中心部がダメージを受けるものです(※1)。
滲出型の場合、異常な血管の成長を抑える治療(薬やレーザー照射)はありますが、進行が早いので注意が必要です。気づかずに放置していると、両眼ともに発症する可能性もあるので、何よりも大切なことは早期発見です。

また最近は、どのような人が加齢黄斑変性になりやすいのか、発症を防ぐにはどんなことが大切なのかなど、予防の観点からの研究も注目されています。

(※1)滲出型で新しい異常な血管ができるのは、網膜付近の細胞(網膜色素上皮やブルッフ膜)に老廃物が沈着することが誘因と推定されています。もう1つの萎縮型では新しい血管はできず、加齢にともない網膜の細胞が変性し、網膜色素上皮が萎縮した結果、網膜の中心部が障害を受けるものです。

vol.128 加齢黄斑変性の早期発見と予防

加齢黄斑変性を自分でチェック

目の病気は自分では気がつきにくい、といわれます。その理由は、私たちはモノを、両方の目で見ているからです。片方の目に軽い異常があっても、もう片方の目がフォローするため、なかなか気がつかないのです。
加齢黄斑変性はその典型で、片方の目で見た場合には視野の中央付近がゆがんでいても、もう片方の目がフォローする上、周辺部はきれいに見えているので、気づかずに過ごしている方が少なくありません。
たとえば、次のような症状を感じたことがあったら、自分でチェックしてみましょう。

  1. (1)新聞や本を読んでいるとき、肝心の読みたい部分(中央付近)が見えにくかったり、ぼやけているように感じたりしたら。
    ⇒ 片方の目を手でふさいで、もう片方の目で新聞や本を読んでみましょう(左右交互に。ただし、片目を強くつぶると視力が影響を受けやすいので、軽く手で覆う)。もし、どちらかの目で中央付近の文字がゆがんで見えたり、暗くて読みにくかったりしたら要注意。
  2. (2)タワーや高いビルを眺めたとき、なんとなくゆがみを感じたり、中央付近が暗く感じたりしたら。
    ⇒ (1)と同じように、片方の目を手でふさいで、もう片方の目でタワーや高いビルを見てみましょう(左右交互に。タワーなどの高い建物はゆがみなどを感じやすい)。もし、どちらかの目で中央付近がゆがんで見えたり、暗く感じたりしたら要注意。

日常生活のなかで、(1)や(2)のようなことがあったら、もう少し詳しくチェックしてみましょう。

ミニコラム

<詳しく自己チェック>
A4程度の大きさの紙を用意し、定規を使って1センチ間隔のタテ線、ヨコ線(各10本程度)で、格子を描く。格子の真ん中に直径2ミリ程度の黒丸を1つ描く。
⇒ 格子を描いた紙(または自己チェックシート)を30センチほど離れた場所に置き、片方の目で真ん中にある黒丸を見る(左右交互に)。中央付近の格子がゆがんで見えたり、黒丸付近が暗くぼやけて見えたりしたら、加齢黄斑変性の可能性が高いので眼科を受診しましょう。

正常な場合の見え方中央付近の格子がゆがんで見える、黒丸付近が暗くぼやけて見える

どんな人がなりやすいのか

加齢黄斑変性については、テレビなどで取り上げられることもあり、認識度はかなり高いように思われるかもしれません。
ところが、ある調査によると、加齢黄斑変性が目の病気であることを認識している方は28%程度に過ぎず、白内障や緑内障(いずれも認識率は99%前後)と比較してかなり低いという結果もみられます(※2)。失明につながる病気だけに、まず、どんな人がなりやすいのかをきちんと知っておくことが大切です。

加齢黄斑変性の3大原因とされているのが、「加齢、喫煙、遺伝」です。

<加齢>
加齢黄斑変性は、40歳以上になったらだれにでも起こりうる病気です。とくに、高齢になるほど両眼ともに発症するリスクが高くなるので、要注意。また、男性が全体の約70%を占めています。

<喫煙>
喫煙は、もっとも重要なリスク因子です。喫煙歴が長く、喫煙本数が多く、煙を深く吸い込む人ほどリスクが高いとされ、発症率はタバコを吸わない人の4~5倍にもなります。

<遺伝>
近年の研究で、滲出型の加齢黄斑変性の発症に関わる遺伝子が発見され、遺伝要因(体質)が注目されています。この遺伝子をもつ人は、発症率が1.4倍になるとの報告もみられます。家族(両親や兄弟)に加齢黄斑変性の方がいる場合、影響の程度はまだ明確になっていませんが、早くから注意することが大切です。

そのほかのリスク因子として、仕事などで長時間太陽を浴びることが多いケースや、肥満(高脂肪食、運動不足、動脈硬化)も指摘されています。

(※2)「加齢黄斑変性」を中心とした眼疾患に関する意識調査。50歳代~70歳代の男女3300人を対象(2011年、ノバルティス ファーマ)。

加齢黄斑変性の予防のために

加齢黄斑変性は、気づいたときにはかなり進行していることが少なくありません。予防のためには、前の章で紹介した3大リスク要因(加齢、喫煙、遺伝)に該当する場合は、目に異常を感じていなくても、一度は眼科を受診するようにしましょう。

眼底検査をおこなうと、網膜への老廃物の蓄積や網膜細胞の色素異常が発見されることがあります。これらは加齢黄斑変性の前兆の1つなので(かならず発症するわけではありません)、その後、定期的に検査を受けることが予防につながります。網膜への老廃物の蓄積や網膜細胞の色素異常は、加齢も原因の1つですが、喫煙による酸化ストレスが促進要因となります。それだけに老廃物の蓄積などがみられたら、早めに禁煙を心がける必要があります。
また、太陽光の中でも波長の長い青色光も、加齢黄斑変性を促進する要因とされています。仕事や運動などで太陽光を浴びることが多い方は、帽子やサングラス、日傘などで青色光をブロックすることが大切です。ただし、濃い色のサングラスは逆効果になることもあるので、サングラスを着ける場合は、眼科医などの専門家に相談してください。

さらに、加齢黄斑変性の患者さんが多い欧米では、肥満との関連も重視されています。肥満になると動脈硬化を起こしやすく、網膜への血流が悪化することが引き金になると推測されています。定期検査などで「肥満気味」と指摘された方は、食事の内容を見直し、週に3回は運動を心がけ、肥満解消に取り組みましょう。

一方、加齢黄斑変性の予防に効果があるとされるのが、抗酸化ビタミン(ビタミンA、C、E)や抗酸化ミネラル(亜鉛)などのサプリメントです(日本眼科学会)。また、ルテインやゼアキサンチン(カロチロイドの一種)、オメガ3脂肪酸(DHAなどに含まれる脂肪酸の一種)などの栄養素にも、予防効果があるとされています(※3)。
ただし、どれか1つを大量に摂取するのでなく、バランスよく長期間にわたり摂取することが大切です。サプリメントだけに頼らず、これらを多く含む緑黄色野菜(ブロッコリー、ほうれん草、ニンジン、パプリカ、ケールなど)や果物(イチゴ、マンゴー、パパイヤ)、卵黄、青魚などを、毎日の食事に積極的に取り入れるようにしましょう。

(※3)サプリメントの効果に関する研究の多くはアメリカのデータで、日本では本格的な研究がまだ進んでいません。特定のサプリメントだけを大量に摂取すると副作用が出ることもあるので、医師に相談してから服用するか、もしくはできるだけ食品から摂取することが望まれます。

このコラムは、掲載日現在の内容となります。掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

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